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ZIPANGU(ジパング)の背景

 「東方見聞録」においてマルコ・ポーロが述べた日本は、屋根、柱、テーブル等あらゆるものが黄金でできている、取り尽くせないほど金が出る、としています。そしてこのイメージは、平泉の中尊寺金色堂から来たとする説を、幾人かの知識人や姫神・星吉昭さんが採っていらっしゃいます。しかしながら、私は疑問を持っています。

 アルバム「ZIPANGU姫神」に関する記述の前に、少々長いのですが私が聞きかじった説(かなり古い話です)、および私が考えた説を紹介させていただきたいと思います。私はこのアルバム「ZIPANGU姫神」を、以下の事柄と併せる形で聴いているからです。

 ベネチアの商人マルコ・ポーロが、フビライ・ハーン施政下のモンゴル帝国に来た頃、南宋と日本の貿易は未だ行われていました。十三湊(とさみなと)や博多には、宋国人が来ていました。恐らく彼等は日本の金銀の産出量を、ある程度掴んでいたのではないでしょうか。我々が考える以上に日本についての情報を持っていたのではないでしょうか。

 確かに当時の日本の金銀の産出量は、世界的に見ても大なるものがあります。しかし「東方見聞録」の記述は大仰です。十三湊に来た南宋の商人は、既に滅亡した平泉の故地に足をのばして中尊寺の金色堂を見ても、そこここでつかみ取りできるほど日本列島に黄金があるとは考えなかったと思います。

 しかしながら、つかみ取りできるほどの黄金が出るという大仰な噂の出所は、宋国人だと考えられるそうです。マルコ・ポーロは、日本を“ジパング”と呼んだからです。“日本国”は宋代の読みだと“ジィベングゥ”だそうです。

 当時、南宋はモンゴル帝国と戦っていました。南宋としてはモンゴルの鉾先をそらす意味で、「東の海の彼方におびただしい量の黄金を産する島がある」という噂を流し、これをフビライが信じて日本への野心を抱いた、という見方があるそうです。

 フビライの称臣朝貢の要求は、時の鎌倉幕府執権北条時宗(ほうじょう・ときむね)によって拒絶され、2度の元冦(文永、弘安の役)に至りました。

 そして噂が波及した効果は、やがて宋国人自身に大きな災厄となって降りかかって来ました。元冦の第2次、弘安の役には、滅ぼされた南宋の敗兵が徴せられました。因果応報です。支那の歴史にはままあることです。

 また、南宋の流したこの噂は、「東方見聞録」によってヨーロッパにもたらされました。たしかコロンブスが携えていた「東方見聞録」のジパングに関する記述の個所には、たしか指差しマークやコメントが書き込まれていたといいます。

 そのころヨーロッパでは、地球は球の形をしている、という仮説が挙がっていました。その仮説が事実なら、シルクロードを東へ旅するより、船で海路を西へ進む方が、ジパングへ速く着く…。アメリカ大陸と太平洋の存在を知らなかったヨーロッパ人はそう考えました。大航海時代は、華々しいジパング黄金伝説に誘われて、幕が開きました。

 先に挙げた説とは別に、私はフビライサイドからこの噂が流された場合について、考えてみました。元冦においてモンゴル本国が出した兵力は、そのほとんどがモンゴルに国を滅ぼされた女真(ジュルチン/じょしん)人、そして、かつてその女真に国を滅ぼされた契丹(キタイ/きったん)人(特別展「草原の王朝 契丹」が催されます特別展「草原の王朝 契丹」を観てきました参照)でした。生粋のモンゴル兵は150人程だったそうです。

 女真、契丹とも、かつては狩猟や遊牧をしていた民族です。彼等はいずれも黄金に格別の思いがあったようです。モンゴルが滅ぼした女真人の国の名は“金”でした。

 また、私は昭和63(1988)年のなら・シルクロード博で、旧ソ連が出展したスキタイ・サカ人の黄金の甲冑(黄金人間)のレプリカや、ヘラジカやライオンなどを象った黄金の馬具を見ました。精緻を極めた見事なものでした。スキタイ・サカの後裔が契丹だそうです。

 黄金に格別の思いのある、故国を滅ぼされた民族に、風濤の彼方の島国に関心を持たせ士気を高めるために、黄金郷をでっち上げたというわけです。もちろん、これはアカデミズムとは無縁の、私の珍説にすぎません。

 いずれにしても、日本がエルドラドであるかのごとき風評は、多分に思惑が絡んで意図的に流布されたというのが私の見方です。中尊寺金色堂のイメージの拡大解釈ではない、と私は考えています。

 アルバム「ZIPANGU姫神」に続きます。
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by manewyemong | 2010-09-28 08:08 | 音楽 | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


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