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D-50、DW-8000、FZ-1のソノシートもつぶやく

 1980年代半ばから後半にかけて登場した、ハイブリッドシンセサイザーKORG DW-8000、デジタルシンセサイザーRoland D-50、サンプラーCASIO FZ-1に関する雑誌の付録ソノシートについて、YAMAHA DX7ソノシートに続いて、平成23(2011)年4月29日のつぶやきです。


ブログに載せる画像を撮る為にソノシート「DX7 SOUND SENSATION 脅威の“音”の世界」を探したら、他の付録ソノシートを発掘いたしました。やはりYAMAHA Xシリーズが一番多かった。

井上鑑さんがQX1、TX816、RX11、DX7で作った「DIGITAL MAGIC ADVANCED 'X' MUSIC」。

TOTO + 1人の「DX MEETS DAVID PAICH,STEVE PORCARO & JAMES NEWTON HOWARD」。写真では3人が各々2台のYAMAHA DX7を弾いている。

「D-50 SPECIAL」。D-50以外にS-50、MKS-80、TR-707、TR-727、MC-500、SBX-80等を使用。作編曲演奏は戸塚修さん。語りは「うる星やつら」の諸星あたる役の声優さんです。

「D-50 SPECIAL」には、後に世界中のD-50ユーザーが皆で仲良く使う音が数多鳴っています。ドラマ「Xファイル」のオープニングテーマのあの口笛も入っています。

KBマガジン’85年10月号「KORG DW-8000サウンドデビュー」。いくつかのプリセット音の紹介と岩崎工(いわさき・たくみ)さんによるデモ曲「Under your some…」収録。

「KORG DW-8000サウンドデビュー」で紹介された音の中に、たしか翌年リリースのエマーソン、レイク&パウエルの「ザ・スコア」のブラストーンがありました。

「Welcome To The FZ-1 & FL New Series」サンプラーCASIO FZ-1と新サンプルの紹介。曲中で新サンプルをメドレー形式で紹介していました。A面及びB面2曲目作編曲演奏亀山兎ノ助、語りキャロル久末さん。

「Welcome To The FZ-1 & FL New Series」B面2曲目の「Wet Dream」作編曲演奏は都留教博(つる・のりひろ)さん。当時喜多郎さんのバンドでカーツウェル250等のシンセやバイオリンを担当。

喜多郎さんのアルバム「古事記」で聴こえる和楽器のサンプルの全てが「Welcome To The FZ-1 & FL New Series」の「Wet Dream」曲中で鳴っています。

映画「戦場にかける橋2」で喜多郎さんが担当した「ジャパニーズテーマ」のバイオリンのサンプルも、たしか「Welcome To The FZ-1 & FL New Series」で鳴っていました。


追記。

 YAMAHA DX7が登場して以来数年間、ロゴのレタリングが統一されたXシリーズが、まるで古代・平安末期の平家みたいにシンセサイザーとその周辺機器の世界を席巻していました。

 この頃ヤマハは「X-day」と銘打った新製品のPRイベントを派手に打っていました。また、昭和60(1985)年10月6日両国国技館での喜多郎さんの「YAMAHA SPECIAL '85」では、各奏者にこんなに要るのかと思うほどヤマハ製の楽器を用意して他社機を覆い隠すようにして配置し、「絲綢之路」に至っては56台のDX7を同じ人数の子供達が演奏するという一幕までありました。

 ちなみに翌年2月14日、大阪厚生年金会館大ホールで行われた「偏西風」公演は、ほぼ同じレパートリー、機材だったのですが、喜多郎さんがよく弾いたのはいつもと同じminiKORG 700S800DVSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5Roland VP-330でした。

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 「DIGITAL MAGIC ADVANCED 'X' MUSIC」「DX MEETS DAVID PAICH,STEVE PORCARO & JAMES NEWTON HOWARD」は、そんなYAMAHA Xシリーズ全盛時代の付録ソノシートです。

 デビッド・ペイチさん、スティーブ・ポーカロさん、ジェームズ・ニュートン・ハワードさんは、私の記憶に間違いがなければ、「X-day」出演の為の来日であり、「DX MEETS DAVID PAICH,STEVE PORCARO & JAMES NEWTON HOWARD」がおそらくそれに合わせての制作とはいえ、このメンバーの演奏が付録で聴ける事に当時驚きました。

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 「YAMAHA SPECIAL '85」から1年余後、Xシリーズの新製品、DX7 II・D、DX7 II・FDが登場します。このモデルからそれまでのXシリーズとは異なるロゴになるのですが、この頃からXシリーズの寡占状態に陰りが見え始めます。ロゴデザインの変更がシリーズの運気に関係したか否かはともかく、ほぼ同じ時期にYAMAHA DX/TXシリーズとは違う流れのデジタルシンセサイザーが登場します。Roland D-50です。Xシリーズの寡占状態に風穴を開けたモデルではないでしょうか。

 私は初めてのD-50の音を、付録ソノシート「D-50 SPECIAL」で聴きました。オシレータ/フィルター/アンプというモーグ以来のアナログシンセの考え方を踏襲しているにも関わらず、音がクリアで驚きました。アナログシンセのVCFに対して大なり小なり感じて来た臭みが存在しませんでした。私にはVCOの波形やVCFの風合いが、いずれも汚れて黄ばんだ感じがするのです。

 しかしながら、アナログシンセの音作りのノウハウが活かせるシンセが登場したにもかかわらず、もう自前の音を求める人はDX7登場以前のようにはいなくなっていました。固有の音を持たないというシンセサイザーの特徴の第一義は、それまでの数年で滅び去っていました。「D-50 SPECIAL」で聴く事ができるプリセット音の多くは、その後、所謂“D-50の音”として世界中のD-50ユーザーが皆で仲良く使っています。

 アメリカのテレビドラマ「Xファイル」のオープニングテーマの口笛の音は、D-50のプリセット音がそのまま使われています。日本のテレビ朝日系で放映された「Xファイル」第3シーズンでは、本編の後に「Xファイルズファン」という、制作の裏側を伝える短編映像が流れたのですが、一度BGMの回があって、スタジオに古今東西の高級機に混じってRoland D-50があり、音楽のマーク・スノウさんが口笛のプリセット音でテーマ曲を弾きました。

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 「YAMAHA SPECIAL '85」と同じ頃、ハイブリッドシンセサイザーKORG DW-8000とそのモジュールEX-8000が登場します。「KORG DW-8000サウンドデビュー」のA面はプリセット音の紹介の簡単なデモ演奏(多重録音無し)、B面はDW-8000とリズムマシンKORG DDM-110(ドラムセット)/220(ラテンパーカッション)を交えた多重録音作品「Under your some…」。当時キーボードマガジンによく登場されていた岩崎工(いわさき・たくみ)さんの手によるものです。

 DWシリーズ、オシレータはデジタルのDWGSなのですが、フィルター/アンプはVCF/VCAのアナログでした。DW-8000/EX-8000の1年前に、既にDW-6000というモデルが出ていたのですが、開発は8000の方が先にスタートしていたそうです。

 DWGSは今日のコルグのワークステーション機のオシレータ波形のカテゴリーSingle Waveに継承されています。このカテゴリーはPCMではなくDWGSです。シンセサイザーからのサンプル波形は、Synth Waveという別のカテゴリーがあります。私がKORG TRINITY plusTRITON STUDIO 61でのminiKORG 700Sリードに使うPulse 33%もDWGSです。

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 国産初のウソ偽りなしの16ビットサンプラーCASIO FZ-1とサンプルライブラリーFL NewシリーズのPR用付録ソノシート「Welcome To The FZ-1 & FL New Series」は、B面1曲目が変わっていて、音楽ではなく時代劇なのですが、劇中登場する和楽器(三味線等)や効果音(鹿威し:ししおどし等)が、いずれも実際にその場にある物ではなく、FZ-1によるものであることを明かしていくという、他の付録ソノシートとは違う趣向のものです。

 その次の曲「Wet Dream」の作/編曲、演奏は、喜多郎さんの「YAMAHA SPECIAL '85」や「偏西風」ツアーで、KURZWEIL 250やDX7、Roland SH-3、そしてバイオリンを担当していた都留教博(つる・のりひろ)さんです。

 「Wet Dream」には、喜多郎さんがアルバム「古事記」で多用した音が使われています。喜多郎さんがその後長く使う事になる尺八や鼓(つづみ)の音が使われていて、後年聴きなおした時は「古事記」のスピンオフナンバー?みたいな印象を受けました。

 他の曲中でバイオリンのサンプルが鳴っていて、これが映画「戦場にかける橋2 クワイ河からの生還」で、喜多郎さんが作った「ジャパニーズテーマ」のメロディに使われていました。「ジャパニーズテーマ」は、仲代達矢さん扮する帝国海軍将校と日本人の子供の会話の場面や、連合国軍捕虜になぜ輸送隊勤務に志願したのか問われて答える場面に流れた記憶があります。

 「ジャパニーズテーマ」からはこの後、アルバム「古事記」の「創造」「黎明」という変奏曲ができました。

 国産のウソ偽りのある16ビットサンプラーについては、まあ、触れないでおきます。

by manewyemong | 2011-05-04 15:32 | シンセワールド | Comments(0)