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「喜多郎 マインドミュージックの世界」

 昭和56(1981)年6月に講談社から刊行された「喜多郎 マインドミュージックの世界」を紹介いたします。当時中学2年生だった私は発売と同時に手にしました。

 喜多郎さんが高校生の頃にバンドを始めてから、上京、ファーイーストファミリーバンド、第何サティアンとかいう建物が無かった頃の富士山2合目でのデビューアルバム「天界」の制作、NHK特集「シルクロード」の音楽担当、同番組の敦煌編の取材の為の河西回廊旅行までを辿る形で、喜多郎さんご自身の文と、編集者による取材文とで構成されています。

 バンドを組むにあたって鍵盤を選ぶ事になったあまりにもあっけない理由(なぜ喜多郎さんがマルチプレイヤーなのかという事情とも後々関わってくる)、活動を重ねていく中で次は何を為すべきかと自問する向上心、ファーイーストファミリーバンドのアルバム制作に参加したタンジェリンドリームのクラウス・シュルツさんの言葉、作風の変化、「シルクロード」…、乱読派でありながらエッセイの類いを読まなかった中学生の私にとって、その頃関心の大半を占めていた演奏家が主人公の青春記との出会いでした。

 向上心を持ち努力家ながらも、どこか気負った感が濃厚とは言い難い若き喜多郎さんが、「絲綢之路(しちゅうのみち)」に達して私の前に現れるまでを、この本で知りました。

 次のステップへと進むにあたってその方向/方法が分からない時に、不意に向こうから人が現れて導いてくれるという事が、誰の人生にもあると思うのですが、喜多郎さんの場合も文中で自ら
めぐりあわせの妙
と表現する邂逅が、本当にしばしば登場します。

 それは時にクラウス・シュルツさんだったり、タイの警察の偉いさんだったり、アルバム「大地」からアルバム「絲綢之路」制作期まで住んだ鎌倉市腰越の大家さんやそこを紹介した不動産屋さん等々…。「喜多郎 マインドミュージックの世界」は、それら“めぐりあわせの妙”によって引き合わされた人々に対するオマージュなのかもしれません。

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 表紙。アルバム「OASIS」のジャケットの流用。

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 著者近影。インドの撥弦楽器サントゥールを弾く喜多郎さん。

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 背表紙。

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 既に改革開放路線が始まっていたとはいえ、昭和56(1981)年の天安門広場でこんな事をして怒られなかったのでしょうか。

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 長野県北安曇郡八坂村(現、大町市)の自宅兼プライベートスタジオの縁側でアコースティックギターを弾く喜多郎さん。

 「空の雲」(アルバム「氣」より)は、ギターのコードワークから生まれた曲だそうですが、こんな風に縁側で曲想が固まっていったのかもしれません。

 ちなみにこの家のご先祖には、“喜太郎”さんという方がいらっしゃいます。

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 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5を弾く。このprophet-5は「prophet-5」のロゴが大きく、ヒートシンクが無いリビジョンです(シンセサイザーフェスタ’09見聞記の矢野顕子さんのブースの画像参照)。

 prophet-5の台になっているのはメロトロン(「遥かなる大河」参照)。その奥にあるのはminimoog、KORG 800DV。喜多郎さんの背面にあるのはmini KORG 700S、Roland SH-3。ローランドかボスのグラフィックイコライザーも見えます。

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 昭和56(1981)年元旦、NHK「ゆく年くる年」でのテーマ曲演奏。

 「喜多郎 マインドミュージックの世界」には、前年の同じ時間に伊豆大島三原山で、自身の為に開いた公演について触れています。その文中、
私はなぜか正月を同じ場所で迎えた事がない。毎年、迎える場所も違うし、一緒に迎える人も違っている。
という意味の記述があります。


平成27(2015)年6月27日追記。

 喜多郎さんの「OASIS」「絲綢之路」「敦煌」「氣」のジャケット画、そしてこの「喜多郎 マインドミュージックの世界」に「荒野の声」を寄稿したイラストレーターの長岡秀星さんが、平成27(2015)年6月23日、この世を去りました。

 喜多郎さん関連だとジャケット画以外に、「OASIS」のライナーノーツ寄稿、そして、昭和56(1981)年に放映されたNHK特集「喜多郎&秀星 砂漠幻視行」で、喜多郎さんとアメリカのモハベ砂漠を旅し、「砂漠」をテーマに共作しました。

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by manewyemong | 2011-10-15 16:23 | 音楽 | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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