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YAMAHA MOTIF XS6試奏記

 implant4さんで、KORG Z1に続き、ワークステーション機YAMAHA MOTIF XS6を試奏させていただきました。

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 MOTIF XS(エクセス)は、KORG M3Roland V-Synth GTと同じ、平成19(2007)年に発売されました。MOTIFシリーズの3世代目です。

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 筐体の形状やカラーリング等、ルックスに関して、歴代MOTIFシリーズで最も気に入っています。

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 サイドは初代MOTIF 6/7の><のへこみが格好いいという向きもあるそうですが、私はこちらの方がサイドを持つ形で手を置き易そうなので好きです。

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 ヤマハさんらしい、操作子の脆弱感がどうこうといった事を考える必要が無い、丁寧な物作りをされているという事を、このMOTIF XS6でも実感させられました。

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 ヤマハの定番、二つのホイールと、アナログモデリングシンセYAMAHA AN1x、ワークステーション機YAMAHA EX5から搭載され、初代MOTIFでは無かったものの、MOTIF ESで復活したリボンコントローラー。形状や感触はMOTIF ESのものを継承しています。

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 新開発されたFSX鍵盤。

 MOTIF XS新発売期に試奏したおりは、感触に関してFS鍵盤との違和感をさほどには感じなかったのですが、今回FS鍵盤のKORG Z1と併せて弾き比べてみると、やはり若干緩い感じがしました。ただ静粛性に関しては遥かに優れています。

 複数筋の情報を総合すると、FS鍵盤でバネが担っていた役目を、FSX鍵盤ではゴムで行っているのではないかとの事でした。

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 裏におもりがついています。中央にFS鍵盤のようなしきりは走っていません。

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 FS鍵盤(KORG TRITON STUDIO 61)や、

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 Roland Fantom X6の鍵盤裏の画像と見比べると分かるのですが、FSX鍵盤はFS鍵盤よりも、むしろローランドに近いのかもしれません。

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 つまみ/スライダー等の演奏操作子類。

 1ボイス当たりのエレメントが八つになった事とも関係あると思うのですが、各々8個/8本に増えています。形状はMOTIF ESのものを継承しています。スライダーに関して、フロントパネルに埋まる形だった初代MOTIFのものが好きです。演奏中、スライダーをつまむよりは指を乗せる形の方が、操作しやすいように思えます。

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 アルペジエータやシーケンサー等の操作子。

 シーケンサーの操作子の形状は、かつてのYAMAHA QX1、QX3、QY300、QY700といった、ヤマハが誇るMIDIシーケンサー単体機群のものを踏襲していて使いやすいと思うのですが、このXSも含めて中古のMOTIFシリーズは、黄ばんでいるものを見かける事があります。次のMOTIF XFでは、筐体同様BKカラーになっています。

 MOTIF/MOTIF ESではホイール近くにあったオクターブアップ/ダウンボタンが、ここへ移って来ています。

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 MOTIFシリーズ初のカラー液晶画面。

 発売当初に試奏したおりは、見えにくいと感じたのですが、今回、演奏に相応しいきちんとした姿勢をとって眺めると、むしろ視認しやすいくらいでした。画面の配色に加え、MOTIF ESからついた傾斜も良いと思います。

 かつてヤマハの液晶画面は、はっきり言って暗く見づらいものも多かったのですが、ワークステーションの廉価機MO6/MO8(シンセサイザーフェスタ2005見聞記参照)からは見やすくなりました。

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 音色設定操作子類。

 このモデルからダイヤルの縁(へり)の部分にギザギザが入っています。丸い穴に指を入れる以外に縁に触れて回しやすくなりました。

 かつてimplant4さんで、開腹調整中のYAMAHA VL1のダイヤルを見た事があるのですが、動作部分にベアリングが使われていて、好感触でした。それに比してMOTIF XSのダイヤルは形状はともかく、流石に感触は劣っています。

 MOTIFシリーズのダイヤル、DEC/INCボタン、上下左右のカーソルボタンは、場所が集約されていて使いやすい。タッチビューのコルグも、DEC/INCボタンをダイヤルの近くに持って来てほしいのですが…。

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 各モードや音色、八つのエレメント等の選択操作子類。

 音色のカテゴリーは、例えばサックス/木管系の場合、さらにフルートやサックス、リコーダー/パイプ、木管と別れています。カテゴリーサーチボタンを押すと画面上では、左端に最初のカテゴリー(メイン)、右にその下(サブ)、さらに右にボイスとなっていて、カーソルボタンで移動して選択していきます。

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 リアパネル側。

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 フットスイッチ端子はサスティンペダル用とアサイナブルの二つ。エクスプレッションペダル用も二つ。

 残念ながら、このMOTIF XSからブレスコントローラー端子が無くなりました。また、フィジカルモデリング、アナログモデリング、FM音源等のオプションボードも使えません。

 今回、音色エディットをほとんどしなかったのですが、いくつかプリセット音を開けて(エディットモードに入る)みて、色々分った事があります。

 例えばバイオリンのボイスは、「ズー」「ジー」といった音の要素だけでなく、「スーッ」という弓が弦を滑るノイズも収録されています。Roland JUPITER-80試奏記で触れた、
バイオリンの擦弦という発声のメカニズムは、松やにが塗られた弓に弦が引っかかり「く」の字型に引っ張られ、ある所まで行くとそれに耐えきれなくなって弦が元の位置に戻り、また引っ張られる…、という動きの繰り返しで、あの持続音が形成されています。
の音を余す所無くサンプリングした感があります。加えて、八つのエレメントがフルに使われています。

 また、アコースティックピアノの音色も、「ポーン」だけでなく、「ゴンーグッ」(私にはこう聴こえる)という、ハンマーやピアノ線の動作がらみと思われる音まで織り込まれています。

 コンピュータグラフィックスが無かった頃から、イラストの世界でスーパーリアルという分野があるように、シンセサイザーの音色にもそういう世界があってもいいとは思うのですが、どうも精度にのみこだわったサンプリングの成果物に、シンセサイザーのオシレータの1波形としてのフレキシビリティは期待できないような気がします。音の素片に過ぎないはずのPCM音源シンセのオシレータ波形が、キャラクターとして出来上がり過ぎるからです。

 ふと思ったのですが、ある部位そのものがキャラクターとして出来上がり過ぎている事に魅力を感じる感性は、金科玉条のごとくアナログシンセ、それも簡便なコンボタイプを信奉していて、

これでしか出ない音がある、このシンセ独特の妙味

等と礼賛する向きに似ているのではないでしょうか。皆で仲良くそのモデルを使って、同じ“これでしか出ない音”とやらを鳴らしたら、その音はもはや凡俗な音でしかない。

 YAMAHA MOTIFシリーズのワークステーション機としての可能性は、とてつもなく広いと思います。しかし今回、KORG Z1と、ちょうどその10年後に登場したMOTIF XS6とを併せて試奏してみて、このままPCM波形の高精度化へ向かうよりも、フィジカルモデリングシンセサイザーの復活を望みたいと思いました。

 決して何かに瓜二つというわけではない、しかし、生々しく、そして存在感のある音を生み出す音源システム。そして、多岐に渡る演奏操作子によって、フィジカル(physical:物理的)のもう一つの意味である、“肉体的”要素を受けとめてくれる音源システムの方が、自分の脳裏で音色を発想して実体化するという、私のシンセサイザー使用の動機に合っている気がします。

 かつて、YAMAHA VL1、VP1(「東日流笛」の東日流笛参照)という、素晴らしいフィジカルモデリングシンセサイザーが存在しました。願わくば、ヤマハ製のフィジカルモデリング機の再登板を願いたいものです。ヤマハが生んだ素晴らしい演奏操作子である、ブレスコントローラーをも含めた形で…。

 平成23(2011)年11月17日夕刻の時点で、impant4さんにYAMAHA MOTIF XS6の在庫が1台、ありました。


YAMAHA MOTIF XS
http://jp.yamaha.com/product_archive/music-production/motif_xs6/?mode=model

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by manewyemong | 2011-11-19 16:23 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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