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「蘇る光芒 市浦村、浪漫街道 平成六年・市浦村勢要覧」

 「蘇る光芒 市浦村、浪漫街道 平成六年・市浦村勢要覧」をご紹介します。

 青森県津軽半島の北に、点のような狭い河口で日本海に接する、十三湖(じゅうさんこ)という汽水湖があります。青森県北津軽郡市浦村(しうらむら)は、その畔にあった村です。

 あった、というのは、平成17(2005)年、五所川原市(ごしょがわらし)及び金木町(かなぎまち)とともに、五所川原市となったからです。五所川原市の飛び地という、いびつな姿での合併です。

 この十三湖の畔には、かつて十三湊(とさみなと)という国際貿易港がありました。前九年の役で滅ぼされた安倍貞任(あべのさだとう)の遺児、高星丸(たかあきまる)を始祖とする安東一族が仕切ったとされています。中世に至るまで殷賑を極めたのですが、伝説では室町時代初頭、興国元(1340)年、津波よって滅び去ったといわれています。

 このブログでは以前、十三湊の勃興と衰亡と題して、ここに湊が作られた理由から滅亡に至る顛末まで、アカデミズムとは無縁の私の珍説を交えて書いた事があります。

 十三(とさ)の語源は、アイヌ語の“トーサム(湖畔)”から来たという話を、地元で聞きました。そういえば、安倍家が先祖としたアビヒコ/ナガスネヒコ兄弟が居た生駒山(いこまやま)の麓、東大阪市の石切神社(石切神社参道で見たおめでたいもの等…参照)のいしきりとは、アイヌ語のイシ・キリ(長い足)に由来するともいわれています。

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 市浦村は、その十三湊の故地にありました。「蘇る光芒 市浦村、浪漫街道 平成六年・市浦村勢要覧」は、市浦村が観光立村を標榜して10年になる平成6(1994)年に発行されました。

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 日本海へ没する夕陽。

 平成6年夏、この海岸で見る夜中の海は、大都市の夜景が無い故に墨汁のように真っ暗なのかと思いきや、実際はイカ釣り漁船のライトが煌煌と照らされていました。それでも都市生活者の私には、棹を差せば本当にいくつか落ちてきそうに思える星空でした。

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 観光立村のキーワードの一つを「歴史」に据えている為か、特産物の紹介よりも歴史的な事柄や遺構等に関する記述に重きを置いている感があり、それが地方自治体の刊行物にありがちな官製広告臭の無い、観る、あるいは読み物としての面白味を持った冊子になっています。

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 民謡「十三(とさ)の砂山」と十三湖畔の空撮画像。

 歌詞の「西の弁財衆」とは、京、大坂(大阪)あたりから来た船頭を指すそうです。哀調を帯びた、しかし、かつて日本海側が表日本だった時代の、十三湊の殷賑と交わりの広大さを今に伝える、唄と踊り。

 ちなみに姫神せんせいしょんには「十三の砂山」、後の姫神にはその変奏曲「十三の砂山-雁供養-」という同名異曲があります。

 この十三湖畔の画像は上が南、下が北です。十三湊の勃興と衰亡で触れた、十三湖の環境がよく分かります。アカデミズムとは無縁の珍説ながら、私は十三湊滅亡の原因を上流からの土砂の流入としたのですが、画像にあるとおり、十三湊が栄えた中世にあった湖からの日本海への通路は完全に塞がって、砂浜となっています。

 湖から日本海への出口近くに立派な橋がかかっていて、そのたもとに“和歌山”さんという屋号の宿泊施設兼飲食店があったのですが、そこでいただいた名物しじみラーメン、まことに美味でした。

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 モデルさん達の衣装は、大河ドラマ「炎(ほむら)立つ」の撮影で、実際に使用された物だそうです。

 「炎立つ」の舞台、前九年の役は平安時代なのですが、奥羽の人々のまとっているものは、貴婦人であれ、武人であれ、なぜか遅れた奈良時代風でした。当ブログはデコラティブジャパン感の淵源を東北地方としているのですが、実際の彼の地の装束は、京に負けないトップモード、甲冑もデザイン、色彩とも目に眩いゴージャスな物ではなかったでしょうか。

 私が最後に市浦村・十三湖畔に立った平成12(2000)年夏から、既に11年が経っています。未だ彼の地の人と年始の挨拶状を交わすのですが、それでも、五所川原市との合併、そして直接的な被災は無かったのかもしれませんが、3月11日の大震災以後の彼の地がどうなっているのかを知りません。

 今、こうして「蘇る光芒 市浦村、浪漫街道 平成六年・市浦村勢要覧」を読み返すに及んで、無性に津軽を旅したくなってきました。五所川原市、というより彼の地の人々の本籍地である青森県北津軽郡市浦村を…。

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by manewyemong | 2011-11-23 18:15 | | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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