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喜多郎KORG 800DVブラストーンリード

 KORG 800DVは、国産アナログシンセサイザー黎明期のモデルです。mini KORG 700S、Roland SH-3と同じく、昭和49(1974)年の発売です。この年、冨田勲さんのアルバム「月の光」が、日本より先にアメリカで「SNOWFLAKES ARE DANCING(雪は踊っている)」としてリリースされました。

 mini KORG 700が2台搭載された形になっていて、システムシンセであれコンボタイプであれシンセサイザーのことごとくがモノフォニックだった時代に、画期的なデュオフォニック(2声)でした。

 キーアサイナーが無かった時代にどうやって2台のシンセサイザーエンジンを割り振ったかというと、1台は低音優先、もう1台は高音優先で、仮にドレミファと鍵盤を押すと、ドとファが発声しました。また、完全2系統のモノフォニックシンセにもなりました。

 mini KORG 700には無かったホワイト/ピンクのノイズジェネレーターがあります(ノイズの効用参照)。平成14(2002)年2月7日のNHK総合「人間ドキュメント・喜多郎~長良川を奏でる」で、喜多郎さんの「水に祈りて」という新曲とその制作風景が紹介されたのですが、その終盤、喜多郎さんが800DVのトラベラー(VCF)のスライダーを動かして、風の音を鳴らしている映像がありました。この時使ったのはホワイトノイズです。

 後で触れるのですが、ディレイタイムのかかるオートベンドがあります。長く演奏しているうちに800DVの温度が上がって来ると、ベンドのレンジが狭くなって来ます。電源を入れなおす事で改善する事もあるそうですが、アナログシンセの特性と一体化したアクシデントだと思います。

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 喜多郎さんのライブではmini KORG 700Sと並んで最も多く使われ、客席側から向かって正面の位置にセットされていました。

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 1980年代初頭の公演では予備機や「砂の神」(アルバム「敦煌」より)専用の1台がステージ上に直接置かれ、インドの撥弦楽器シタールの演奏後、胡座をかいた状態で弾かれていました。

 その「砂の神」をはじめ喜多郎さんのライブのほとんどの曲、また「永遠の路」(アルバム「絲綢之路」)「巡礼の旅」(アルバム「敦煌」)「まぼろし」「未来への讃歌」(「1000年女王」オリジナルサントラ盤)「ミステリアストライアングル」(アルバム「ANCIENT」)等で、「パァァァアー」というブラスなのかリード音なのか判然としない、しかし他のどのパートよりも威勢のいい音色が鳴っています。それが今回デジタルシンセで真似する喜多郎KORG 800DVブラストーンリードです。店頭で喜多郎mini KORG 700Sリードを作る方法(KORG M3の場合)を軸にして書いていきます。あくまでヒントにすぎません。

 まず店頭で喜多郎mini KORG 700Sリードを作る方法(KORG M3の場合)で、モノになっているボイスアサインモードをポリにし、オシレータモードをダブルにします。そしてオシレータコピーモードを使って、OSC1→OSC2を実行します。

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 オシレータ波形は二つとも鋸歯状波にします。そしてチューンを片方は+2か3、もう片方を-2か3当たりにします。二つのオシレータ間にディチューンをかけたわけです。

「パァァァアー」の「アー」の部分は、押鍵から時間が経ってからピッチが1オクターブ上へ上がる変化を表現しました。この800DVのディレイタイムがかかったオートベンドに関して結論から記すと、私が使っている1990年代のコルグのワークステーション機のピッチEGではだめです。ポルタメントやEG/ENVのカーブをつぶやくで触れたのですが、800DVのオートベンドには変化にムラというかクセがあって、EGが正確なリニア変化だと雰囲気が出ません。

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 したがってアナログシンセたるKORG 800DVがオートマチックで行っている事を、デジタルシンセでは手操作でやるのですが、ピッチベンドのアップ側、つまり右へ倒す側のレンジを+12、つまり1オクターブにしてください。演奏中、自分がかけたいと思う所でジョイスティックを右へ倒します。この倒し方に芸が必要です。漫然と倒すのではなく、奏者自身の趣向と800DVのクセを併せて表現してください。

 オートマチックと違い、奏者の任意の所でのみかかるというのは、ある意味強味ではないでしょうか。喜多郎さんのライブでは、時に800DVのオートベンドがかかりっぱなしになっていて、しつこく感じられる事がありました。またmini KORG 700/700S、800DVには、そもそも手操作でベンドやモジュレーションをかける為の、ジョイスティックやホイールといったコントローラーそのものがありません。

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 参考までに、800DVのこのディレイタイムのかかったオートベンドに関するピッチEGの考え方を書いておくと、スタートレベル及びアタックレベルを同じ値、0固定であるサスティンレベルの1オクターブ下に設定します。アタックタイムはオートベンドのディレイタイム、そしてディケイタイムは、ピッチが上がり始めてから1オクターブ上、つまりサスティンレベル(繰り返しますが0固定です)へ到達するまでの時間です。これらの実行過程が、リニア変化故に雰囲気が出ないわけです。

 フィルターは元ネタの店頭で喜多郎mini KORG 700Sリードを作る方法(KORG M3の場合)よりも開いて気に入ったポイントを見つけてください。

 意外な事に他機種のアナログシンセよりもデジタルシンセの方が、mini KORG 700や700S、800DVのトラベラーの雰囲気が出ます。アナログシンセしか持っていなかった頃、KORG Mono/PolyRoland SH-101では全くだめでしたが、後に買ってすぐのKORG M1で試した時、結構良くて本当に驚きました。

 ただ先日、KORG POLY-800を試奏したのですが、意外にいい線行っていました。しかしながら、その記事に書いたとおり、ジョイスティックのピッチベンドレンジが狭く、800DVのオートベンドのマニュアル操作は不可能でした。

 フィルターのEGは店頭で喜多郎mini KORG 700Sリードを作る方法(KORG M3の場合)から、減退音的に変える必要があります。またアタックタイムやアタックレベル、及びそれらとその後のパラメーター群との関係性に気を使って設定してください。今回この音色を“ブラストーンリード”とした理由は、この辺の喜多郎さんの800DVの音色の特徴に依ります。

 店頭の試奏では無理だと思うのですが、やはりフットボリュームの必要性を強く感じます。本チャンの音色設定のおりは、音量変化をアンプEGに丸投げするのではなく、フットボリューム使用を前提に考えていただきたいと思います。

 以上、本当に最低限のポイントのみ記しました。径時/周期変化、ベロシティ、コントローラー、内蔵エフェクト…デジタルシンセ故により作り込めるポイントは数多あります。これらを駆使して、最終的に自分の音色にしていただきたいと思います。

 最後に一つ私のこぼれ話を。昭和63(1988)年春にKORG M1を導入して以来、コルグのワークスステーション機のジョイスティックを使って、この喜多郎KORG 800DVブラストーンリードのディレイオートベンドをマニュアル操作で行っているのですが、M1使用当時から今日に至るまで、ジョイスティックを右へゆっくりと倒す操作をする時、なぜか上半身全体を右へ倒す癖が抜けません。

 平成12(2000)年夏、東京を引き払う際に全てのシンセサイザーを手放し、4年余を経て平成16年暮れ、KORG TRITON Le 61を購入してシンセサイザー趣味を再開しました。TRITON Le 61が届いた日、mini KORG 700Sリードや笛、さまざま(1)笛、さまざま(2)prophet-5ホルン等とともに、このKORG 800DVブラストーンリードを作ったのですが、4年半のブランクが空いていたにもかかわらず、音色を完成させてディレイオートベンドの混じったフレーズを弾いた時、体を右に傾けていました。


平成25(2013)年10月1日追記。

 KORG 800DVに関して、KORG 800DV試奏記をアップいたしました。


KORG 800DV
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/800DV/

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by manewyemong | 2011-11-26 16:52 | シンセサウンドメイクアップ | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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