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Roland SH-32試奏記

 implant4さんで、シンセサイザーモジュールRoland SH-32を試奏させていただきました。

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 Roland SH-32は、ローランドが楽器店等で配布しているアーカイブパンフによると、平成13(2001)年のモデルとなっているのですが、私の記憶に間違いが無ければ、実際に店頭に並び始めたのはKORG TRITON STUDIOと同じ、翌平成14年2月頃でした。

 新発売時の店頭価格を失念したのですがとにかく安く、また小型軽量であるにも関わらず、価格差のあるアナログモデリングシンセRoland JP-8000/8080を仕様で凌駕する部分があり、発売当時から興味を持っていました。

 また、製造終了直後の一時期、中古の値段が新品の最終店頭価格よりも上がった事がありました。ローランドの製品では、例えばリズムマシンTR-808(ヤオヤ)やベースマシンTB-303等、時々起こる事であり、私自身は平成5(1993)年初、Roland SH-101で体験しました。

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 SH-32はラックマウントではなく、卓上に設置して使うタイプのシンセサイザーであり、リアルタイム演奏には、MIDIを介して他機の鍵盤やコントローラーの情報を受信する方法が一般的だと思われます。しかしながら、プレビューモードでは鍵盤の配置を思わせるボタンを13個使う事ができ、発声させる事ができます。

 シンセサイザーエンジンはウェイブアクセラレーションという、後にも先にもSH-32でしか聞かない音源部4パート、ないしウェイブアクセラレーション3パートとリズムセット1パートという構成。

 リズムセットとはおそらくPCM音源で、2曲収められたデモンストレーション演奏を聴くと、リズムマシンRoland TR-808やTR-909等の音が採られています。このデモ演奏時、フロントパネルの自照型ボタンが光るのですが、それがまことに楽しい。

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 パッチの選択は、バンクボタンを押し、その下のA〜Dからバンクを選び、次に1〜8ボタンでパッチナンバーの10の位、1の位と選びます。画面がパッチナンバーを指している時、INC/DECボタンでパッチを1づつ送る事ができます。

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 1パッチあたり二つあるオシレータ。

 波形は鋸歯状波、矩形波、パルス波、PWM(パルスウィズモジュレ−ション)、三角波、スペクトラム、ノイズの系統があります。系統、と記した理由は、各々の波形にはさらに複数のバリエーションがあるからです。波形を選び、バリエーションのボタンを押すと、今設定されているバリエーションの数値がLEDに表示され、バリエーションボタンを押す毎に次のバリエーションに変わります。

 SH-32のオシレータには、JP-8000やKORG MS2000シリーズ等のオシレータにある、コントロール1/2に相当するパラメーターが無く、専用のパラメーターがあるPWMを除いて、波形そのものを変調する事が出来ません。

 鋸歯状波のバリエーション12番は、ローランドのアナログモデリング機でいうSUPER SAWなのですが、コントロール1が無いので、特徴である鋸歯状波群のディチューンの設定は不可能です。鋸歯状波の中には、ローランドVCOアナログシンセの低コストモデル(SH-09、SH-2)のそれに似た雰囲気のものがあり、たしかその事を意識したのではないかと思えるプリセット音もありました。

 パルス波の幅もマニュアル設定できません。パルス波のバリエーションは、5%刻みで5〜45%まで九つあり、この中から選ぶ形です。mini KORG 700Sによる喜多郎リードのシミュレーションで使う、3、6、9倍音が抜けたパルス波、つまり33%のパルス波はありません。三角波の中に、SuperNATURALシンセトーンの三角波Bのような、mini KORG 700、700Sの三角波を模したものがあるか否かの調査を忘れました。

 スペクトラムのバリエーションは、かつてのKORG WAVESTATIONのオシレータにあったような、倍音構成が変わった波形群です。また、ノイズはホワイト、ピンクに加え、KORG MS2000シリーズのノイズのような音程感のあるものまで10種があります。

 各オシレータに1オクターブ下の音を加える、サブオシレータがあります。PWMやリングモジュレータ使用時には使えません。

 これまでのローランドのアナログモデリング機同様、二つのオシレータのレベルを独立して設定するのではなくバランスを取るタイプであり、オシレータを使わないようにする事はできません。

 ピッチENVは、他のローランドのアナログモデリング機同様、アタックタイム、ディケイタイムだけの簡便なもの。ENVデプスは文字通りこのかかり具合に関するパラメーターなのですが、実質的にワークステーション機のENVでいうアタックレベルに相当します。ニュートラル位置が0で、それより上が正、下は逆方向へレベルを設定します。

 PWMの場合、コントロール2に相当する独立したパラメーターがあり、LFO2を変調のソースにする形でパルスウィズを設定する事が出来ます。ENVでの変調はできません。

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 フィルター。

 レゾナンスを上げ切る事による自己発振はしませんでした。

 カットオフフリケンシーとレゾナンスは、Roland VP-9000あたりから使われ始めた、この頃のローランド製品に多用されたタイプのつまみ、ENVデプスやキーボードフォロー、そしてENVの各要素はスライダーです。

 システムシンセRoland SYSTEM-100Mのものをさらに小さくした感のある、一見頼り無さそうなこのスライダー、試奏してみると意外に操作性が良く、適度な剛性があるので、Roland SH-201のように爪の先でコツコツ突くようにしなくとも、自分の目的とするポイントへ持って行き易いものでした。

 ただ巷間言われているように、このスライダーのキャップ部分にひびが入り易く、今回試奏したこの個体にもそれが出ています。加えて、既にローランドにも在庫が無くなっていて、交換という形での修理は不可能です。

 ENVデプスやキーボードフォローのスライダーは、ニュートラル位置で止まるようになっています。疲労していると止まりが緩いのですが、この個体はカクッと止まってくれます。

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 1パッチあたり二つあるLFO。

 JP-8000のようにオシレータやフィルターにデプスのパラメーターがあるのではなく、SH-201同様LFO側でディスティネーションを一つ選択します。

 他のローランドのアナログモデリング機同様ディレイタイムはありません。フェイドインタイムのボタンを押し、LEDを見ながらバリューボタンを押して設定します。

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 内蔵エフェクト及びMIDI設定の選択操作子。

 SH-32は、それまでのRoland JP-8000やKORG MS2000シリーズと違い、本格的なマルチエフェクターを内蔵していて、各々細かい設定ができます。

 またMIDIの受信は、例えばベロシティの場合、カットオフの開きや音量だけではなく、フィルター/アンプENVのアタックタイムをコントロールする事が出来ます。これも当時、他のアナログモデリング機ではありませんでした。SH-32で私が気に入っている要素の一つです。

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 アナログフィールやポルタメント、音色の書き込み関連の操作子、LED、INC/DECボタン。 

 アナログフィールは、VCOのような不安定感をだします。特にアナログポリフォニックシンセで和音を押さえた時のあの音程感を、簡単に再現できます。この機能、Roland V-Synthシリーズのアナログモデリング音源部に継承されています。またKORG R3等のアナログチューンも同じ機能です。

 JP-8000のテンポラリースコープに当たる機能は無く、またコルグのアナログモデリング機やDJツールのようなオリジナルバリューランプも無いので、SH-32のLEDは、一部を除いてパラメーターの状態を視認する事はできません。

 アルペジエータは、JP-8000に搭載されているものよりかなり進んでいて、ユーザーパターンも打ち込めます。今回、音色を作ってパターンを打ち込む所まではできませんでしたが、例えばRoland JUPITER-4フライングジュピターは、再現できると思います。

 かつてKORG PolysixMonoPoly、POLY-61、POLY-800に搭載されたにも関わらず、かなり後に出たRoland αJUNO新発売時の広告で、

シンセサイザー初のコードメモリー

等とアナウンスされたコードメモリーが、久方ぶりに搭載されました。その後コードメモリーは、アナログモデリング機ではなく、Roland Fantom XFantom G等に形を変えて継承されています。

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 リアパネル。

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 「SYNTHESIZER SH32」のロゴ。いくつかのローランドのアナログシンセで使われた字体なのですが、それ以外に1980年代初頭のフジテレビ系「オレたちひょうきん族」に登場したYMOの偽物(本物も何度か出演されました)が弾いていた、たしか「Poland」なるメーカーのシンセサイザー?のリアパネルのロゴが、この字体でした。

 平成23(2011)年12月22日夕刻の時点でimplant4さんには、Roland SH-32の在庫が1台ありました。implant4さんのサイトの在庫リストに、スタッフコメントや画像、価格の表示があります。


Roland SH-32
http://www.roland.co.jp/products/mi/SH-32.html


おまけ。

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 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8。商品ではないようでした。木製鍵盤の感触の素晴らしさやデザインの合理性、そしてアナログシンセとは思えないほど出音が洗練されていました。1980年代半ば、ハワード・ジョーンズさんが「笑っていいとも!」に出演したおり、このprophet-T8を弾いていました。私はprophet-5よりも、はるかにこちらが気に入りました。

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by manewyemong | 2011-12-23 16:54 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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