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KORG KRONOS 88試奏記

 implant4さんで、ワークステーション機KORG KRONOSの88鍵機を試奏させていただきました。まだ発売から1年を経ていないモデルという事もあってか、大変状態の良い個体でした。早晩implant4さんのサイトの在庫リストに登場する事になると思います。

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 既に発売時にKORG KRONOS 73試奏記を書いているのですが、通常の楽器店の店頭展示機とは違い、implant4さんは試奏に際して、その都度通常の演奏姿勢に近い形に楽器を設置してくださるので、もう少し踏み込んだ操作感を試す事ができました。本当にありがたい事です。

 今回、KORG KRONOS 73試奏記の時とは違い、KRONOSの九つのシンセサイザーエンジンのうち、HD-1、AL-1、MS-20EX、PolysixEXを、ほんの少しですが試しました。

 KORG KRONOS 73試奏記と重複する部分もあるかもしれませんが、あらためてKORG KRONOS 88試奏記を書きたいと思います。コルグのトップページに“KRONOS”なる告知が…KORG KRONOS (THE NAMM SHOW 2011)第1報KORG KRONOS(1)KORG KRONOS(2)KORG KRONOSの発売日及び価格、KORG KRONOS 73試奏記とを併せてお読みいただければと思います。

 デタッチャブル構造やロゴデザイン等、奇をてらった風なKORG M3とは違い、筐体の形状やカラーリング、質感、仕様等々、発想力先行の感のあるコルグさんにしては、何度も書きますが実に堅実な設計をされたという印象を受けます。

 同時期に発表されたRoland JUPITER-80は、何だかテーマが散漫な感じがするのですが、KRONOSはあくまで次世代の1ワークステーション、1楽器たらんと生まれたように思えます。

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 RH3鍵盤。茅葺き屋根の家が並ぶ京都府美山町で作られています。

 ここ数ヶ月、私が弾いたのは手許のシンセのヤマハ製FS鍵盤ばかりで、ピアノタイプの鍵盤は久方ぶりだったのですが、押鍵した力を緩めた時の鍵盤がニュートラル位置へ帰って来る強さ(速さ)が素晴らしく、レガートしたつもりがスタッカートになったりしました。もちろんこれは、馴れで簡単に克服できる事です。

 また、これはかつてKORG M3-88試奏機でも書いたのですが、鍵盤が定位置に戻るのが速い故に、通常のシンセ鍵盤で考えた設定だとリリースタイムが短くなり、私の管楽器やシンセリードの設定だと鳴りの終端にタッチノイズが混じってしまいます。これはシンセ鍵盤だと逆にスタッカートしにくいが故に、極力短めの設定をする事から来る事であり、一考すれば済む事です。

 かつて私が使っていたKORG T1や01/W pro Xの鍵盤は、押鍵にそれなりの力が要りましたが、RH(リアルハンマーアクション)2及び3はそのような事が無く、しかもニュートラル位置への還りは速いので、本当に弾き易い鍵盤です。

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 KORG TRINITY以来のコルグのワークステーション機の伝統ともいうべき、二つのアサイナブルボタンとリボンコントローラー、ジョイスティック。いずれも形状、感触ともに良いと思いました。

 アサイナブルボタンはKORG TRITON以降のこれまでのモデル同様、トグル(効果のオン/オフ)にもモーメンタリー(押さえている間だけ効果がかかる)にも対応しています。

 ジョイスティック、というよりシンセサイザーエンジンのピッチの設定に関する事柄と言った方が良いのですが、ベンドの設定に関してTRINITYのACCESS音源やProphecy及びZ1のMOSS音源と違い、コンティニュー固定です。TRITON、OASYS、M3いずれもコンティニュー固定なのですが、私はさほど頻繁ではないものの、金管や象の鳴き声等でコンティニュー以外の要素を使います。既にTRINITY plusとZ1があるので、困る事は無いのですが…。

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 つまみやスライダーのまわりから、目盛が消えています。

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 タッチビューの左側にあるINC/DECボタンとバリュースライダー。

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 タッチビュー。今回の試奏でのKRONOSの設置の仕方が良かったからか、KORG KRONOS 73試奏記の時ほどには、パラメーターの指定のしにくさを感じませんでした。

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 タッチビューの右側にあるダイヤル及びテンキー。

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 ダイヤルは縁の部分にギザギザがあり、筐体から出っ張っていて指を置く形でもつまむ形でも使えます。そして、速く回してもゆっくり回しても、その動きにきちんと追従してくれます。数値入力の行き過ぎや手前で止まるといった事は、今回の試奏ではありませんでした。バリューを1ずつ増減させる細かい入力にも使えるので、TRINITYやTRITONのようなINC/DECボタンがタッチビューを挟んで左側にある事の不自由さを、さほど感じませんでした。

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 リアパネル側。

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 「KRONOS」のロゴ。このロゴにも堅実さを感じました。「M3」「M50」のレタリングが好きになれませんでした。

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 USB A端子二つ。B端子が一つ。

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 入出力端子群。

 KRONOSの九つあるシンセサイザーエンジンの一つ、HD-1はワークステーション機のスタンダードなシンセサイザーエンジンなのですが、これまでのモデルチェンジ同様、オシレータ波形の数や精度が上がっている事はいうまでもありません。

 ただ、YAMAHA MOTIF XS6試奏機でも書いた事なのですが、なまじオシレータ波形の精度が上がるという事は、シンセサイザーのオシレータの1波形としてのフレキシビリティを逆に喪失してしまう事にもつながります。例えば私はバイオリンのソロや金管を、未だに鋸歯状波で作る事が多いのですが、それはバイオリンやブラスの音素片の完成度が高すぎるという事に起因しています。私のバイオリンや金管になってはくれない。多分KRONOSを手にしても鋸歯状波で作る事になると思います。

 私の手持ちのシンセに無い、HD-1のパラメーターで気に入った事は、EGの各タイム毎に独立して変化のカーブを設定できる事です。0でリニア変化、1〜5は上に盛り上がる、6以上は逆に下に反り返るようなイメージです。

 要するにアナログシンセのEGの癖のような元からあるものにただ乗っかるのではなく、自分でその癖のありようを発想し作り出す事ができます。前者は誰がやっても同じ事ですが、後者には奏者やマニピュレータの創造性を活かす事ができます。

 私はフィルターやアンプの設定に関して、今まで同様今後も全てリニア変化を採りますが、ピッチEGはポルタメントやEG/ENVのカーブをつぶやく喜多郎KORG 800DVブラストーンリード等で触れたように、カーブを設定する事になると思います。

 残念ながらポルタメントのカーブは、タイムであれレイトであれリニアのみでした。これこそ自分で癖を発想し設定したいのですが…。

 AL-1は、ProphecyやZ1のシンセサイザーエンジンのスタンダードオシレータにあたる音源部です。HD-1同様、EGのカーブを設定できたり、アナログシーケンサーKORG SQ-10やアナログモデリングシンセKORG MS2000シリーズRADIASR3のモッドシーケンスのように、様々な変調のソースに使えるステップシーケンサーを備えています。

 さらにこのステップシーケンサーは各ステップにおいて、オルタネートモジュレーションを介してEGやLFO等をソースとして使う事ができます。可能性があまりにも広大過ぎて、流石の私も今のところ、モッドシーケンス程度の事しか思い浮かびません。

 ProphecyやZ1のスタンダード音源部のLFOには、フェイドタイムはあってもRoland JP-8000SH-32SH-201GAIA SH-01同様ディレイタイムが見当たらないのですが、AL-1には存在します。

 それにしても、なぜローランドのアナログモデリング機やSuper NATURAL音源機のLFOにディレイタイムが無いのでしょうね。コルグのアナログモデリング機にしてもLFOにディレイタイムやフェイドインタイムは欲しいところなのですが…。

 お話をKORG KRONOS 88に戻します。おそらく私がKRONOSを手にして最も多用するシンセサイザーエンジンは、このAL-1だと思います。

 MS-20EX、PolysixEXに関して、古山俊一さんの「シンセサイザーここがポイント」(音楽之友社刊)に載っていたKORG MS-20の音色設定図や、KORG OASYS EXi LAC-1 PolysixEX試奏機で触れた、「KORG SOUND MAKE UP」昭和58(1983)年2月号「ワンページデスマッチ」の姫神せんせいしょんの星吉昭さん自身による音色設定を入力してみました。

 「シンセサイザーここがポイント」のMS-20の音色設定は、昭和57(1982)年末から翌年春にかけて実機で試した事があり、姫神せんせいしょんの音色も実機及びOASYS EXi LAC-1 PolysixEXで試した事があります。MS-20の方は最近じっくり実機を触る機会が無いので分からないのですが、Polysixの方はOASYS EXi LAC-1 PolysixEX同様、実機よりも姫神せんせいしょんのレコードの音に近かった。

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 なぜ実機よりもクローンの方が、結果的に1980年代初頭のレコードに入っている音に忠実なのかの理由を、これ以上信頼できるお立場に無い方をも含めた複数筋にお尋ねしたところ、その全てのお答えが、コンデンサによるところであるとの事でした。「コンデンサはナマものである」という表現を、教えてくださった全ての方が使われました。

 MS-20EX、PolysixEXともパラメーターをタッチビューで指定しただけだと、バリュースライダーとテンキー(2桁や4桁ではなく1から10までの数字)による可変しかできないのですが、バリューの部分を指定するとテンキー(00.00〜10.00)やINC/DECボタン、ダイヤルによる微細なバリューの調整や入力ができます。またオルタネートモジュレーションを介する形で、ワークスステーション機のシンセサイザーエンジンのようなEGやLFO等のパラメーターを、ソースとして使う事ができます。

 MS-20やPolysixの実機は各パラメーターの変化のきめが粗く、ムラがあり、私にはとても使えた代物ではないのですが、ありがたい事にMS-20EX、PolysixEXは、その部分を継承していないと感じました。

 私にとって本物のMS-20やPolysixとは、実機ではなく、MS-20EX、PolysixEXの方です。

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 TRITONにTRITON LeやTR、そしてM3にM50があるように、いずれKRONOSにもリミテッドエディションモデルが出て来るのだろうと思うのですが、案外そのモデルで、私がコルグのトップページに“KRONOS”なる告知が…等で夢想した、フロントパネルそのものがタッチビュー化されたワークステーション機が実現するかもしれません。

 しかしながら、私はむしろタッチビューではなく、TRITON Le/TRのマン/マシンインターフェイスに戻ってほしいのですけどね。


平成29(2017)年1月12日追記。

 平成29(2017)年1月12日、KORG KRONOS 88の数量限定カラーバリエーション機、KRONOS GD(ゴールド)が発表されました。


KORG KRONOS
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/kronos/

RH3鍵盤
(京都美山町で作られた高いクオリティの日本製鍵盤)
http://www.korg.co.jp/Product/DigitalPiano/RH3/

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by manewyemong | 2012-01-13 17:04 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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