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特別展「草原の王朝 契丹」が催されます

 来る平成24(2012)4月10日から6月10日まで大阪市立美術館で、特別展「草原の王朝 契丹」が催されます。

 契丹(きったん)は、かつて東アジア北方の広大な地域に居た、牧畜や農業、狩猟を生業にしていた民族です。耶律阿保機(やりつ・あぼき)が可汗(かかん)の時に統一され、後に遼(りょう)という国になりました。

 その後、遼は長く漢人の王朝、宋を脅かす存在だったのですが、契丹のさらに北方に興った女真(じょしん)族の国、金によって滅ぼされました。しかしながら、契丹人は金国において重く用いられる事も多く、民族としての命脈は保たれていました。

 やがて金国はチンギス・ハーン率いるモンゴルの侵攻を受け、官吏として働いていた契丹人には、虜としてモンゴルに連れて行かれる者もありました。その中には、後にチンギス・ハーンと次のオゴデイの時代にモンゴルの宰相を務めた耶律楚材(やりつ・そざい)がいました。

 金国の都(今の北京)からチンギス・ハーンの許に連れて来られた耶律楚材に対して、チンギス・ハーンは、「汝の祖国は金国によって滅ぼされた。予はそのかたきを討ってやった。汝は予に感謝すべきである」と声をかけたそうです。それに対する答えは「自分は祖父の代から金国に仕えてきました。金国の不幸を喜ぶ事はありません」でした。耶律楚材はチンギス・ハーンから絶大な信頼を受け、常に傍らに控える存在になりました。

 この場面は、井上靖「蒼き狼」(新潮文庫)や陳舜臣さんの「耶律楚材」(集英社文庫)等、これらの人物が登場する小説等で必ず名場面として描かれています。小学6年生の頃、私は井上靖の西域小説や「新十八史略」(河出文庫)の「契丹禍」の章等で、契丹に関する事柄を知りました(アルバム「絲綢之路」参照)。

 特別展「草原の王朝 契丹」は、主に耶律阿保機の時代から遼末の品々が展示されるようです。

 十三湊の勃興と衰亡でも触れたのですが、契丹や女真、はては契丹の遠い先祖ともいわれるスキタイは、黄金製品を盛んに作りました。NHK特集「シルクロード」第2部のオープニング映像や、昭和63(1988)年のなら・シルクロード博で、ソ連領中央アジアから出土した黄金の甲冑「黄金人間」をご覧になった人も多いと思います。

 あくまで私見ですが、遊牧民族が黄金を硬貨やインゴットの形で資産とするのではなく、あくまで製品の部材として重用したのは、前者だと重すぎて(金は比重が大きい)、常に水草を逐(お)って移動する遊牧民には、持ち運びが不便だからではないでしょうか。シルクロードで通貨として機能したのは、金ではなく銀でした。彼等が遊牧民であるが故に、黄金製品の製造に秀でる事ができたのではないかと、私は考えています。

 今回の展示でもまばゆい黄金製品が多く、デコラティブジャパン(絢爛なる日本)を美意識の一つに据えている者としては、ぜひ観ておきたい特別展です。

 特別展「草原の王朝 契丹」を観てきましたに続きます。


「草原の王朝 契丹」
http://kittan.jp/

特別展「草原の王朝 契丹」(大阪私立博物館)
http://www.osaka-art-museum.jp/special/kittan.htm
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by manewyemong | 2012-03-28 14:50 | | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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