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「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」を観ました

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」を観てきました。

 第二章はテレビシリーズの第3話「木星圏脱出」、第4話「氷原の墓標」、第5話「死角無き罠」、第6話「冥王の落日」にあたります。

 これまでの記事同様、系統だったものではなく断片的な形で、思いつく、あるいは思い出すままに雑感を記したいと思います。例によって追記を重ねていく可能性があります。

 たしか私が小学校高学年から中学生だった1970年代末~1980年代初頭、淀川長治さんが解説を担当したテレビの映画番組で、米・旧西ドイツの合作映画「眼下の敵」という作品が何度か放映されました。

 「眼下の敵」は、第2次大戦中の1隻のアメリカの駆逐艦と、同じく1隻のドイツの潜水艦の戦いを描いた作品です。「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「機動戦士ガンダム」等のような、戦争そのものの終わりまでではなく、あくまで世界規模で展開されていた戦争の、一つの局地戦を材に採った映画でした。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」は、本来週1回放映各話約30分のテレビアニメとして制作されている「宇宙戦艦ヤマト2199」の、地球を発ったヤマトがワープテストを行う所からガミラスの冥王星基地を落城させるまでの4話分を、単にくっつけた形で映画館にかけた作品です。しかしながら、まるで「眼下の敵」のような独立した1本の作品として観る事が出来ました。

 謎の敵であったガミラス側の様子が描かれ始めています。 「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章 遥かなる旅立ち」 で、

宇宙戦艦ヤマト」第1作から復活篇に至るまで、敵側の職務怠慢や関係者の不和は、しばしばヤマトを勝利に導いて来た

と書いたのですが、その片鱗が既に登場しています。

 ヤマトがワープした事を冥王星のシュルツが上司であるバラン星のゲールに報告すると、事の詳細を詮索する事無く、良い報告だけをせよと命じて通信を終えます。後にヤマトを反射衛星砲で撃沈したと早合点したシュルツが、ゲールを外して直接デスラーに戦捷の報告をした場面で、地球艦がワープしたという話を知っているかと、デスラーが秘書官らしい女性や副総統に質すと、いずれも「否」と答えるくだりがそれです。

 ただ、一見功名心にはやって戦捷報告をしたように見えるシュルツ、というよりシュルツ達には、実はある悲痛な現実が存在する事が描かれています。旧作とさほど出番に差があるとは思えない冥王星基地の関係者に、「宇宙戦艦ヤマト2199」はより深い役割を持たせて描いています。

 シュルツの愛娘が、どう見ても日本橋(にっぽんばし)の電気店街の看板に描かれている女の子のようなデザインなのは、悪乗り気味だと思いましたが…。

  「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章 遥かなる旅立ち」 で、

地球の武器が自分たちには通用しないとたかをくくっていて回避行動すらとらず

と書いたのですが、浮遊大陸のガミラスの施設の責任者らしい人物が、そのものズバリの台詞を口にしました。

 結果、ヤマト攻撃に投入されたガミラス艦はショックカノンによって、ヤマトと直角の位置関係にあった艦はあの秀麗な顔面(艦首)を激しく殴打されたような姿で、そして平行位置関係にあった艦は胴体をまっ二つにされて浮遊大陸の森へ沈んでいきました。

 老若男女どんな立派な人にも一つや二つは変わった所があるものですが、ヤマトの乗組員達に関するそういう面も描かれ始めています。「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」は、物語の本筋がめまぐるしく展開していく中に、そういったエピソードを上手く添えていたように思えました。

 ヤマトの艦内食堂で技師長の真田志郎が固形食品を食しながら、電子書籍ではなく、カバーを外しているが故にどうみても岩波文庫さんの「中原中也詩集」を読んでいる場面がありました。西暦2199年の戦時下の地球に文庫本が残っている事が嬉しい。

 話がそれるのですが、私が好きな喫茶店“月と六ペンス”さん(京都市中京区)の備品の数多の文庫本群も全てカバーが外されていて、その事がお店の落ち着いたたたずまいに興趣を添えています。

 またこの場面で、自動的に艦内食を作る装置OMCS(オムシス)がどういう食材を使っているのかを問われた真田が、「知らない方がいいと思うよ」と回答を避けたのですが、気になる伏線です。旧日本軍は尿から飲料水を作る装置を研究していたそうですが…。

 宮崎駿さんの「未来少年コナン」に、太陽エネルギーが復活したインダストリアで、たしか“プラスチップ”なるものからパン等を機械が大量生産する場面がありました。

 それと、真田が他の乗組員のような一般的な食べ物を口にしていないのは、彼が旧作同様サイボーグである事の伏線かもしれません。

 ヤマトシリーズのBGMの怪作中の怪作ともいうべきあの2曲、「ワープ」「デスラー登場」が登場します。「ワープ」は本当に旧作の音源をDAWを駆使してステレオ化したのかと思えるほど、ニュアンスが忠実に再現されていました。「デスラー登場」は、あの水晶のようなピアノや鳥の羽のスティックで叩いたスネア、電気ギター等で構成されている事は同じなのですが、電気ギターは流石に今を感じました。

 また艦載機の発進場面は、コスモゼロが第1作の「ブラックタイガー」、コスモファルコンが「新たなる旅立ち」の「新コスモタイガー」でした。後者には私が子供の頃に本放映を観た「帰ってきたウルトラマン」のMAT(マット)が出動するシーンで耳にしたコーラス、所謂「ワンダバ」が入っています。これが入っている事の意義を、はたして我々の世代以外の人達が理解できるでしょうか。

 第1作から復活篇に至るまで物語や設定の齟齬が目立つが故に、「宇宙戦艦ヤマト」は見るもの聴くものと割り切っていたのですが、それらを基本的には変えず、しかし様々にブラッシュアップした感のある「宇宙戦艦ヤマト2199」は、真に作品として面白いものになっていると思います。

 第1作放映と同時期に流行ったヒューストンから来た凧ゲイラカイトを、今も時折、誰かが思い出したように空に揚げる事になぞらえて、これまで「宇宙戦艦ヤマト復活篇」「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」「宇宙戦艦ヤマト2199」について書いて来ました。

 しかしながら、私の中で「宇宙戦艦ヤマト2199」は、もはやゲイラカイトではなくなりました。

 「第三章 果てしなき航海」「第四章 銀河辺境の攻防」「第五章 望郷の銀河間空間」「第六章 到達!大マゼラン」「第七章 そして艦は行く」に続きます。


「宇宙戦艦ヤマト2199」
http://yamato2199.net/

「中原中也詩集」(大岡昇平編、岩波文庫刊)
http://www.iwanami.co.jp/
cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-310971-6

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by manewyemong | 2012-07-02 15:44 | アニメーション映画 | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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