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「宇宙戦艦ヤマト2199 第三章 果てしなき航海」を観ました

 昨日平成24(2012)年10月13日から公開されている「宇宙戦艦ヤマト2199 第三章 果てしなき航海」を観てきました。

 第三章はテレビシリーズの第7話「太陽圏に別れを告げて」、第8話「星に願いを」、第9話「時計仕掛けの虜囚」、第10話「大宇宙の墓標」にあたります。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章 遥かなる旅立ち」「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」に比してアクションシーンは少なめだったのですが、「宇宙戦艦ヤマト2199」独自の設定が数多織り込まれています。それ故、物語の部分を書きづらいので、この記事の最後の方に差し障りの無さそうな事柄に関して触れたいと思います。

 いずれにしても、観るもの聴くものと割り切ってきた「宇宙戦艦ヤマト」が、「2199」では真に面白いものになっていると思います。

 BGMに関して、第1作では佐渡先生が宇宙遊泳しながら日本酒を呑むシーン等を飾った「ロマンス」が使われました。はじめて聴くステレオ音場の「ロマンス」。

 また、ヤマト艦内のラジオ放送での小説朗読の場面で、旧作には無い、クラシック以前のヨーロッパの古楽のような編成の曲が鳴りました。

 次元断層から脱出したヤマトを攻撃する為に、ゲール自ら艦隊を率いてバラン星基地から現れるのですが、そこで使われた「艦隊集結」は、原曲とは趣が違い、単なる軍楽風というより、緊迫感が加味されている感じがしました。

 BGMとは違うのかもしれませんが、展望室に一人たたずむ古代進がブルースハープで、「真っ赤なスカーフ」を吹きました。ふと、「さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-」冒頭の激戦の後、たき火を囲むパルチザンの一人がブルースハープを吹く場面を思い出しました。

 ささきいさおさんの唄う「真っ赤なスカーフ」は、エンディングタイトルロールだけではなく、劇中、ヤマトの艦内放送で流れるのですが、20世紀の近世歌謡?としてではなく、単にちょっと懐かしい曲として紹介されます。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第三章 果てしなき航海」のパンフレットに、第1作から効果音を担当されている柏原満さんのインタビューが載っています。1970年代末から1980年代初頭のアニメブームの頃、作画監督だとか声優とかのインタビューはその筋の本に数多載っていたのですが、効果音に関するものを、少なくとも私が見る事はありませんでした。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音等、柏原さんの効果音について何度か書いてきました。私が子供心に音を面白いと思ったのは、まぎれもなく「宇宙戦艦ヤマト」がきっかけであり、それがやがてシンセサイザーに対する関心へとつながりました。

 柏原さんのインタビューには、お作りになった音に関するいくつかちょっとした種明かしがあるのですが、お使いになっていたシンセは、やはりminimoog(ミニモーグ)でした。今回登場したデスラー魚雷に仕込まれたガス生命体や、ガミラス星近くでヤマトを拿捕する強磁性フェライトの雲の音は、割と簡単にできます。minimoogによる喜多郎効果音をつぶやくの設定で、モジュレーションミックスをノイズ方向へ振り切ってしまうだけです。minimoog単体ではなく、料理に使う銀紙で出した音を混ぜるともっと似ます。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」は、地球の事を「テロン」と呼んだり、ワープの事を「ゲシュタムジャンプ」としたりと、名詞に関して地球(日本)とガミラスで違う語彙を作り込んでいるのですが、その割には今回の総統府の大広間の場面で、「ネズミ」「ネコ」という言葉が出て来ます。もちろん物語とは関係が無い至極些末な事だとは思うのですが、架空の動物とその名を設定し、しかし地球人たる我々観客には、登場人物達の会話の中でそれらがネズミとネコのような関係の生き物である事を理解させるような工夫が欲しかったなと思いました。

 第1作放映以来、今日まで語り継がれて来たあの場面が登場します。総統府の広間に文武百官が居並ぶ中、酔っぱらった、いかにもニューマ(空気)に疎いと思われる人物が、あの歴史的な台詞
「総統も相当、冗談がお好きで」
を発し、その事に不快感を憶えたデスラーが玉座の操作子に触れると、発言者の足下に穴が開いて落ちて消える、というシーンです。

 ちなみにこの「総統も相当~」のドーテム・ゲルヒンなるとても下品な人物、出番はここだけで物語の本筋とは関係が無いにも関わらず、映画パンフレットではタラン(今作では二人兄弟として登場)やゲールよりも大きく扱われています。

 かなり以前、何かのテレビCMで原ひさ子さん扮するおばあちゃんが、質問に答えられないと足下に穴が開いて消えるというものがありました。初めて観た時、大変不愉快な気持ちになったのですが、最後に原さんが商品を手にして微笑むカットがあるというオチ。私はこのCMは、この「総統も相当〜」の場面に影響されたのではないかと思っているのですが…。真相は判りません。

 ガミラス星には当然ながらそれを支える数多の国民が居るわけですが、今作ではそれがはっきりと画面に登場します。ということは、旧作では描かれる事が無かった、ガミラス星に拿捕されたヤマトからの反撃の無差別攻撃を受ける市民達を、「宇宙戦艦ヤマト2199」の制作者は無視せず描くという事だと、私は解釈しました。

 赤色矮星に追い込まれたヤマトが、巨大なプロミネンスに波動砲を放って血路を開くという場面で、勢子(せこ)のような役割を負っていたシュルツ艦が、プロミネンスに包まれて死を決するくだり、それが一軍の将たるシュルツやその副官のガンツの個人的な考えではなく、乗組員の総意である事が描かれています。似た場面が「第一章 遥かなる旅立ち」にもありました。

 ビートたけしさんの「だから私は<戦争>が好き」(新潮文庫「落選確実選挙演説」収録)に、
戦地で死ぬ大抵の人間は(中略)意外にマニュアル通りやってしまうもので、死ぬ瞬間までそうなんだ
とありました。

 プロミネンスに包まれたシュルツ艦の人々が唱えたのは「総統万歳」の類いではなく、自分達の故郷の星の名でした。

 一敗地に塗(まみ)れ、最後は赤色矮星に玉砕したシュルツ麾下の冥王星基地の敗兵と遺族に対して、デスラーが意外な温情ある配慮を見せます。それが真に情緒的な理由なのか、それとも版図に組み入れた異民族政策、言い換えれば、人はこうやって使うのだ、というそろばんづくの手段なのかは、私には分かりませんでした。

 いすれにしても一連の敗報に対するデスラーの不快感は、テロン艦ヤマトでも冥王星基地関係者でもなく別の所へ向けられ、それは人事に反映され、次の「第四章 銀河辺境の攻防」での、あの人物の登板へとつながります。

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by manewyemong | 2012-10-14 14:31 | アニメーション映画 | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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