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「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」を観ました

 平成25(2013)年4月13日から公開されている「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」を観てきました。まだ公開中なので、枝葉末節の部分に関する雑感を記したいと思います。

 第五章はテレビシリーズの第15話「帰還限界点」、16話「未来への選択」、17話「記憶の森から」、18話「昏き光を超えて」にあたります。

 この「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」で、いわゆる序破急の破の景までが終わったと思います。これまで張られてきたいくつかの伏線が、この章で回収されています。

 かつて第1作冒頭のあらすじの場面のBGMは、「無限に広がる大宇宙」「元祖ヤマトのテーマ」以外に「美しい大海を渡る」が使われたのですが、「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」本編開始前の、これまでのあらすじの場面も「美しい大海を渡る」でした。

 出だしのハープのグリッサンドが若干違う事とオリジナルよりクリアに録られているからか、最初何の曲か分からなかったのですが、あの優しく雄大な旋律が流れ出して「美しい大海を渡る」と気付きました。編曲演奏も少し違っていて、ピッコロの後ろで鳴るハモンドオルガンは無かったような気がします。

 冒頭、ガミラスが植民地経営に失敗した星を滅ぼす場面があります。植民地にしそこなった事実はもちろん、そもそもそんな星が元々無かった事にしたいかのような、徹底した剿滅(そうめつ)ぶりです。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第四章 銀河辺境の攻防」を観ましたで、

繰り返されているらしい彗星帝国の侵入や、総統府が掲げる理想について来ない人々の存在は、盤石と思われたガミラスの統治が、実は外からも内からもほころびが出て来ている事を、それとなくうかがわせる要素のような気がしました。

としたのですが、この場面もそれを表すエピソードの一つなのかもしれません。

そんな星が元々無かったかのような徹底した剿滅(そうめつ)ぶり

は、同胞にも向けられ、宇宙へ逃れてきた総督らしい文官は、結果責任に忠誠心の欠如を添えられて粛清され、ガミラス人の移民は救助される事無く、かつて自分達が征服した星と運命をともにさせられます。

 その星にガミラスが築いたと思われる都市の、スタジアムのような所に集まっている先住民達及び彼等が掲げている旗に書かれた文字、宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」原作漫画に出てくる土鬼(ドルク)人とその文字に似ています。土鬼文字同様、西夏文字を丸く崩した様な文字、という表現もできるかもしれません。

 ヤマトのワープを干渉する、カレル163という中性子星が登場します。シンセ趣味人として中性子星(パルサー)で思い出すのは、冨田勲さんがアルバム「ドーンコーラス」で、エイトル・ヴィラ=ロボス作曲のブラジル風バッハ第4番「コラール」を編曲演奏した、「パルサーからの呼びかけ」です。システムシンセサイザーmoog III p、system 55、Roland SYSTEM-100Mのモジュレーションのソースとして、帆座にある中性子星からの1秒11回のパルスが使われています。

 昭和57(1982)年夏に公開された「The IDEON(イデオン)<発動編>」に、主人公達の乗る宇宙船ソロシップ1隻の前に、敵対するバッフクラン星の半端ではない数の重機動メカや艦艇が、宙域を埋め尽くすかのように立ちはだかる場面がありました。

 それはセル画時代、思わずため息が出そうなカットだったのですが、「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」にはそんな場面が2回登場します。

 そしてヤマトは基本的に同じ戦術でそれを切り抜け、ガミラス側は政権内部で起きた一つの事件故に、これら二つの作戦に失敗します。

 ドメルは中性子星にワープを干渉されたヤマトが現れると予想されるポイントを五つに絞り、大艦隊をそれらに割り振って網を張ります。ヤマトは予想通りガミラス艦隊のただ中に現れ、敵中突破を敢行し、ドメルの座乗する旗艦に零距離射撃を浴びせて切り抜けるのですが、他のポイントから集まって来た新手の援軍に囲まれます。

 しかしながら、ここでヤマトは、第1作から「復活編」までシリーズを通して繰り返し起こる、敵側のあるアクシデントに救われます。「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章 遥かなる旅立ち」で書いた、

敵側の職務怠慢や関係者の不和

です。ドメルはある嫌疑をかけられ、作戦を中止して全艦隊を連れてガミラスへの出頭命令に服します。

 第1作のビーメラ星で、囚人(政治犯か)と思われるビーメラ星人達が、巨大な臼(うす)の様な構造物に落とし込まれ、人足達が臼を回し始めると、内部からの断末魔の叫び声と蛇口から液体(劇中、ローヤルゼリーと呼ばれた)がにじみ出てくるという描写が、彼等の民族音楽(「ドン、ドドンドンドドドン、ドン、ドドンドンドンドン…」の繰り返し)を伴って、子供心に刻み込まれました。長く、トーストに蜂蜜を塗る事ができませんでした。

 「第五章 望郷の銀河間空間」には、第1作のビーメラ星に相当する星が、ビーメラ恒星系第4惑星として登場します。巨大なキャベツやレタス、小松菜が覆い被さるような大自然があり、文明は滅び去っていました。それゆえ、臼もローヤルゼリーもありませんでした。

 ヤマトがこの星へ進路を取る理由は、ヤマト抜錨以前から企図されていた一部乗組員のある思惑が絡んでいるのですが、最終的にそれは決着がつき、また、この星でのある発見が、ヤマトの旅に大きな収穫をもたらします。

 昭和56(1981)年正月に公開された石森章太郎さんのアニメーション映画「サイボーグ009 超銀河伝説」で、主人公達の乗る宇宙船イシュメールが、スターゲート(出入り口が一つずつ)、スターメイズ(出入り口が複数ある)という宇宙のバイパストンネルのような空間を通って、数十万光年を一気に長駆する場面があります。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第五章 望郷の銀河間空間」には、それに似た亜空間ゲートなるものが登場します。スターゲートと違い、あくまで人工的な存在なのですが、それを作ったのはガミラスとは別の、既に滅び去った文明で、ガミラスがそれを受け継ぎ運用しています。

 かつて第1作で、ヤマトがバラン星を過ぎたあたりを航行している間に、バラン星基地からガミラスへ召還されたドメルが軍法会議にかけられ、デスラーの判決拒否による復職、ドリルミサイルや瞬間物質移送機を製造して新たに空母艦隊を編成し、ヤマトに挑戦状を送りつけ、七色星団に現れるという時間を、一体どうやって作ったのか子供心に疑問だったのですが、亜空間ゲートはその時間的余裕の疑問を解決できる設定です。

 銀河系側からバラン星へ通ずる亜空間ゲートをヤマトが通る為に、真田志郎、古代進、森雪が、放棄されたシステムを再起動させる作戦を遂行する場面があります。「宇宙戦艦ヤマト2199」「真田志郎」「中原中也」関連の検索語彙での「宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 太陽圏の死闘」へのアクセスが多いのですが、この場面で、なぜ真田が中原中也の詩集なのかが明かされます。

 かつて第1作18話「浮かぶ要塞!!二人の決死隊!!」がそうであったように、一見冷めた感のある真田志郎という人物の、情緒的な部分が垣間見える場面だと思います。

 ちなみにこの場面に出てくるガミラスのロボット、第1作でのデザインが踏襲されています。

 亜空間ゲートを通ってバラン星に到達したヤマトの前に、観艦式の為に集結していたガミラスの大艦隊が立ちはだかります。その中に、第1作の設定資料で多層式宇宙空母、バンダイのプラモデルで三段空母となっていたあの艦の影もありました。

 ヤマトは再び敵中突破を敢行するのですが、ガミラス艦隊側は観艦式のフォーメーション故か、文字通り大小1万の艦艇が有視界域に収まる範囲に集まっていて、ヤマトに効果的な攻撃を加える事ができず、さらに観艦式の最高責任者が、実はドメルがかけられた嫌疑の真犯人である事が判明し、混乱に拍車がかかります。敵側関係者の不和による一つの事件が、2度ヤマトを助けたわけです。

 ヤマトはバラン星から大マゼラン小宇宙への亜空間ゲート航行の推進力と、バラン星側のゲートの入り口の封鎖の為に、重力アンカーを解除した形で波動砲を放ちます。こういうのを行きがけの駄賃と表現するのは、品が無いでしょうか。

 結果、ヤマトの前には視界いっぱいに大マゼラン小宇宙が広がり、ガミラスの大艦隊は亜空間ゲートが消えたバラン星宙域に取り残されます。

 波動砲の反動を推進力に使い、重力アンカーを解除して難を逃れるという戦術は、「宇宙戦艦ヤマト2」でガミラスが仕掛けた磁力線封鎖装置によって、ちくわ型空洞惑星に釘付けにされたヤマトが使いました。

 これまで同様、テレビシリーズの4話分を、単につなげて映画館にかけただけの作品なのですが、1本の作品として、物語的にも視聴覚的にも本当に堪能できました。

 物語は決して行き当たりばったりではなく、深い思慮をもって構築されていると思います。そしてアクションシーンや宇宙空間、諸惑星の大自然、都市の景観等の描写は、やはり映画館のスクリーンで観たいものです。

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 あの艦隊が登場する「宇宙戦艦ヤマト2199 第六章 到達!大マゼラン」は来る平成25(2013)年6月15日から、そして第七章(タイトル未定)が8月24日より公開されます。上映間隔がこれまでの3ヶ月から2ヶ月に狭められています。最終回までの制作の目処が、既についているのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 第六章 到達!大マゼラン」「第七章 そして艦は行く」へ続きます。


「宇宙戦艦ヤマト2199」
http://yamato2199.net/

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by manewyemong | 2013-04-15 18:06 | アニメーション映画 | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


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