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「宇宙戦艦ヤマト2199 第七章 そして艦は行く」を観ました

 平成25(2013年)8月24日から公開されている「宇宙戦艦ヤマト2199 第七章 そして艦は行く」を観てきました。

 第七章は平成24年4月に始まった先行上映版「宇宙戦艦ヤマト2199」の最終章であり、テレビシリーズの第23話「たった1人の戦争」、24話「遥かなる約束の地」、25話「終わり無き戦い」、最終回26話「青い星の記憶」に当たります。

 冒頭に、25話「終わり無き戦い」の一部が欠けた形での上映である事を陳謝するコメントが掲げられたのですが、「第七章 そして艦は行く」の流れに全く影響を与えていない様に思われました。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の着地点は、第1作と同じく、艦長室の窓外に広がっていく赤い地球を見ながら、沖田艦長があの歴史的な台詞を遺してこの世を去り、地球は元の青さを取り戻す、という事なのですが、そこへ至る物語が、旧作が比較にならないほど劇的なものになっていて、上映中の現在、何に触れても所謂ネタバレになってしまいます。

 「第七章 そして艦は行く」公開前日まで視聴する事ができた冒頭10分間と、「宇宙戦艦ヤマト2199」全体に対する雑感を中心に書きたいと思います。既に巷間明かされている様なエピソードが、取り様によってはネタバレの範疇に入ると思うので、そういう事を忌避したい方は読むのを遠慮してください。

 「第六章 到達!大マゼラン」で沖田艦長達は、大マゼランから天の川銀河に至る、いわば宇宙の地政学を知る事になるのですが、「第七章 そして艦は行く」では、第1作の、ガミラスを滅ぼす、とは違う形で、これを塗り替える事になります。

 私は第1作の、

音も無く、動くものも無い

ガミラスの都市を眼下に見ながら、甲板上で古代進と森雪が口にする悔悟の言葉を、自らの星を九分通り滅ぼされかけた人間の肉声として聞く事は、本放映を観ていた小学1年生の時も、そして40年近くを経た今も全くできないのですが、その点「宇宙戦艦ヤマト2199」の制作者達は、物語として上手く逃げ道を作ったものだな、と思いました。これ、本当に他意の無い、純粋な賞賛です。

 ただ、現実の人類史に於いて、こうも都合良く話が転ぶ事は、おそらく無いでしょう。

 古代守やシュルツ、ドメルが死地に赴く決定を、道連れにされる者達が、皆、都合良く賛成してくれる事と併せて、お見事、です。

 デスラー総統のモデルは古代ローマ皇帝であると、かつてヤマト製作者の偉いさんがいわれたそうですが、「第七章 そして艦は行く」であらわになるデスラーの狂気は、たしかにそんな感じがする描き方でした。

 昭和58(1983)年秋公開、ジョン・バダム監督、ロイ・シャイダー主演の映画「ブルーサンダー」の終盤、主人公の駆るブルーサンダーというヘリコプターが、ロスの市街地で空陸の敵と西部劇のガンマンまがいの撃ち合いを展開するのですが、「第七章 そして艦は行く」のバレラス市の摩天楼を縫う様にしての追撃戦の場面、ヤマトと追っ手のガミラス艦の間で、そういう戦いが見れるかもと思いました。

 しかしながら、いずれもヤマトにあっけなく撃沈され、総統府へ先行して左舷を向けて立ちふさがった艦に至っては、ヤマトから舷側に衝突されて火が燃え移った焼き魚の様になってへし折れていきました。ただ、もう出番が無いと思われたガミラス艦の疾駆する様を、最終章でもスクリーンで見る事が出来たのは良かった。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」に対する数少ない不満なのですが、柏原満さんの手によるガミラス艦艇や航宙機の音の全てのバリエーションを出し尽くしたとはいいがたい事と、ガミラス艦艇の航行音をもっとでかい音で鳴らしてほしかった。

 「宇宙戦艦ヤマト2」の白色彗星を発してテレザート星宙域に向かうデスラー艦に、ガミラス残存艦隊が続々と合流してくる場面は、戦国時代の馬揃えを彷彿とさせられたのですが、それ故にガミラス艦艇とその航行音のカタログの様に捉える事もできました。「第五章 望郷の銀河間空間」の観艦式の場面辺りに、プラモデルの販促がてらそういうくだりを差し挟んでいただけたらと思いました。

 「第六章 到達!大マゼラン」のドメルの国葬の鐘が鳴り響く場面で、一瞬、総統府内の、聖堂ともサイロともとれる広大な吹き抜けの空間に、縦長の巨大な構造物がそそり立っているのが映るのですが、それが「宇宙戦艦ヤマト2199」仕様のデスラー艦でした。

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 身近な所に、少し似たものを見つけました。牽強付会かな…。

 第1作のデスラー艦のフォルムを継承しているのですが、この艦は「マジンガーZ」でいうホバーパイルダーの様なもので、後に合体して大変身を遂げます。

 バレラス市内での追撃を返り討ちにしたヤマトは、ガレー船の様に艦首を総統府へ突き刺し、庁舎内で、恐らくガミラスのエスタブリッシュメント達を狙った白兵戦を決行しようとするのですが、デスラー艦はそれをかわすかの様にある場所へ向かって飛び立ちます。地表と直角の位置関係の、打ち上げという表現が相応しい発進。

 そういえば、「宇宙戦艦ヤマトIII」に出て来たソ連(23世紀の地球には、ソビエト社会主義共和国連邦が復活している)の宇宙戦艦ノーウィックも、垂直に飛び立っていくタイプでした。

 「第七章 そして艦は行く」は最終章なのですが、観終わって後、以下の疑問が残りました。

 ヤマトがイスカンダルのマザータウンの海を飛び立って帰途に着く場面、スターシャがある人物の墓前でヤマトを見送るのですが、そのおり彼女が見せた、ある仕草の意味。

 第17収容所惑星レプタポーダで起きた反乱事件で、容姿がザルツ人に似ている事と手錠をはめられていたが故に、蜂起した囚人達から仲間と間違われ、行きがかり上、彼等と行動を供にすることになった薮助治機関士は、阿倍仲麻呂や山田長政の様にそのまま異境で生涯を閉じるのか、あるいは大黒屋光太夫やジョン万次郎のように、数奇な運命を辿って帰って来るのか。

 艦内食堂に設置されたOMCS(オムシス)の食材は、結局なんだったのか。
諸賢の興味の対象として残しておこう
は、謎を謎のままにしておく事の定型句なのですが、「宇宙戦艦ヤマト2199」が残した謎もそういう事なのでしょうか、それとも次作への伏線という事なのでしょうか。

 これまで「宇宙戦艦ヤマト復活篇」「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」を、第1作本放映時に流行ったアメリカ・ヒューストンから来た凧、ゲイラカイトが、今も時折、思い出したかのように空に揚げられる事になぞらえて、本来、電子音楽や美術の事ばかりのこのブログに記事を書いてきました。

 あるいは「宇宙戦艦ヤマト2199」も制作の動機は、「久しぶりにゲイラカイト揚げてみるか」の類いだったのかもしれません。しかしながら第1作から「復活篇」まで、私の中で見るもの聴くものと割り切ってきた「ヤマト」が、「宇宙戦艦ヤマト2199」だけは1本の作品として真に楽しむ事ができたのは、「宇宙戦艦ヤマト」の種々の矛盾や舌足らずさ、鼻白む様な浪花節臭に対し、おそらく自分だったらこうするを脳裏に描く事ができる、あの頃視聴者だった人達の手に依って、至極丁寧に作られた作品だからかもしれません。

 加えて、40年近く経っても全く新鮮さを失わない、宮川泰さんの音楽と柏原満さんの効果音が、セル画やオープンリールテープがCGやDAWになっても、変わらず作品に生命感を与えてくれた事にも感じ入りました。お二人の成果物は、CGやDAWの時代の今、むしろ輝きを増した感さえあります。

 昭和6(1931)年の宮川さん、昭和8(1933)年生まれの柏原さん、お二人に共通する昭和ヒトケタという生年は、お二人の創造性と関係がある様な気がします。昭和20(1945)年8月15日を、10代前半から半ばで体験しているという事です。

 この年代の人は、あの日を境の世間の価値観の変化を、すんなりとは受け入れる事ができず、結局、今信じている事が必ずしもそうであり続けるとは限らない、言い換えれば、セオリーを信じきれない面があるといいます。その事はお二人の独創性にとって、むしろプラスに働いたのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の制作者の方々に、続編をお作りくださいとはいいませんが、もしそれが実現して映画館にかけられたら、私はその席に座ってスクリーンを見つめる事になると思います。


平成25(2013)年9月24日追記。

 文中、
第17収容所惑星レプタポーダで起きた反乱事件で、容姿がザルツ人に似ている事と手錠をはめられていたが故に、蜂起した囚人達から仲間と間違われ、行きがかり上、彼等と行動を供にすることになった薮助治機関士は、阿倍仲麻呂や山田長政の様にそのまま異境で生涯を閉じるのか、あるいは大黒屋光太夫やジョン万次郎のように、数奇な運命を辿って帰って来るのか。
とした、薮助治機関士に関して、9月22日にテレビ放映された第25話「終わり無き戦い」で、その後の消息が描かれていたそうです。

 「第四章 銀河辺境の攻防」でヤマトと戦った“眼下の敵”フラーケン率いる次元潜航艦で、薮助治改めヤーブ・スケルジ機関士として同艦の危機を回避する活躍を見せたそうです。同僚のガミラス兵と良い関係を構築できていそうな描写だったそうです。

 大宇宙へ雄飛した2199年の日本男児、薮助治改めヤーブ・スケルジ氏に、八百万の神々のご加護のあらん事を…。


平成26(2014)年4月22日追記。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の完全新作「星巡る方舟」が、来る12月6日から劇場公開。また、既に放映が終了したテレビシリーズの総集編「追憶の航海」が、10月11日から順次公開されます。

 「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」を観ましたに続きます。


「宇宙戦艦ヤマト2199」
  http://yamato2199.net/

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by manewyemong | 2013-08-26 08:39 | アニメーション映画 | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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