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nord lead 4試奏記

 平成25(2013)年9月12日に発売されるスウェーデンのアナログモデリングシンセサイザー、nord lead 4を試奏する事ができました。発売前日ですが、大阪市内に既に展示している楽器店がありました。

 nord lead 4には、鍵盤を備えたnord lead 4と、机上に設置、あるいはラックに架けるタイプのnord lead 4Rがあります。今回試奏させていただいたのは、前者です。15分弱の試奏だったのですが、これまでのnord leadシリーズの特徴も含めて書いていきたいと思います。

 大阪駅前第3ビル地下2階に、ノードカフェ(nord kaffe)という、スカンジナビア半島風のメニューや内装で、セルフサービスのカフェがあります。そのあたりを検索語彙にして調べてみたところ、「nord」の語彙には英語の「geek」、つまり日本語の「オタク」の意もあるそうです。ちなみに「kaffe」は「コーヒー」です。

 お話をnord lead 4に戻したいと思います。

 基本的な仕様やフォルム、セクションの位置、音色作りの要素が概ねつまみやボタンという実体で存在する、木製ピッチスティック及びそれと直角の位置関係にレイアウトされたモジュレーションホイール(鍵盤有りモデル)、といった特徴は、平成7(1995)年、アナログモデリングシンセの事実上のはしりとして世に出た、初代clavia nord leadを継承しています。

 つまみを回してバリュー入力、ボタンを押し送る形で選択肢の指定を示すのですが、形状、感触とも良くできています。ボタンは「カチッ」という感触が無い故に連打しやすく、選択の動きが時計回りの一方通行なのですが、速く選択を確定できます。

 私がnord leadで最も興味を持っている、独特の木製ピッチスティック及びそれと直角の位置関係にレイアウトされた幅が狭いモジュレーションホイールは、モーフィング機能のソースとして使える事と併せて、一般的なピッチベンドとモジュレーションの二つのホイールが平行に並んでいるものとは、違った表現が考えられます。

 nord lead 4の49ある鍵盤の感触は、nord lead 3やnord waveと同じだと思います。ベロシティも単にフィルターの開き具合や音量だけでなく、モーフィングのソースとして使えます。

 足周りに関して、サスティン端子とコントローラー端子があり、前者にはダンパーペダルKORG DS-1H、フットスイッチPS-1、PS-3が、後者にはエクスプレッションEXP-2、エクスプレッション/フットボリュームXVP-10が使えます。

 nord lead 4で加わったインパルスモーフィングは、インパルスモーフボタンで様々なパラメーターの設定をコントロールする機能です。演奏操作子ですが、鍵盤、ピッチスティック、ホイールが無いnord lead 4Rにも、全く同じものが搭載されています。

 インパルスモーフボタンは横1列に三つ並んでいます。その三つのボタンの押し方の組み合わせで、1音色毎に7パターンまで割り振る事ができます。1、2、3、1と2、2と3、1と3、三つ全て、という組み合わせです。

 インパルスモーフボタンは、押さえている間その効果が実行されるモーメンタリーにも、オン/オフを切り替えるトグル(ロックモード)にも設定できます。

 インパルスモーフボタンの形状や感触は他のボタンと同じものであり、鍵盤のトレモロ奏の様な連打といった、演奏操作子としてのハードな扱われ方にも絶え得るものです。

 二つのLFOは、ディスティネーションを各々選択肢から一つ選び、デプスも一つを設定するタイプです。例えばRoland GAIA SH-01とは違い、一つのLFOのレイトや波形をオシレータ、フィルター、アンプで共有し、ビブラート、グロウル、トレモロのデプスを個別に設定する事はできません。

 LFO1と2では、波形やディスティネーションの選択肢に若干の違いがあります。波形の違いは、LFO1には形の違う鋸歯状波が四つあり、LFO2には二つのランダム(スムースとステップ)があります。ディスティネーションは、LFO1が両オシレータで共有、オシレータ2のみ、トレモロ、PWM等で、LFO2はオシレータ1か2、パンポット、エフェクト等。

 LFO1はアルペジエータと操作子を共有しています。

 MOD ENV(モジュレーションエンベロープジェネレータ)は、フィルターやアンプが持つ専用ENVと違い、選択したディスティネーションに径時変化を与えるセクションです。

 簡便なアタックタイム/ディケイタイム、もしくはアタックタイム/リリースタイムで構成されていて、その選択はシフトキーを押しながらディスティネーションボタンを押すと、アタック/リリースモードの時にランプが灯ります。

 当然ながらスタートレベルは0に、アタックレベルは最大値(デプスが+時)もしくは最小値(-)に、リリースレベルは0に各々固定です。デプスは-10~0~10で設定します。アタック/リリースの時は、アタックレベル=サスティンレベル=最大/最小値という事になります。

 MOD ENVのディスティネーションにPWMは無く、パルス波の幅に径時変化を与える事はできません。

 インパルスシンクをオンにすると、鍵盤のトリガーとは独立する形で、インパルスモーフボタンだけでモジュレーションENVをトリガーする事ができます。もちろんインパルスモーフボタンに登録済みである事が前提です。

 鍵盤とインパルスモーフボタンのトリガーを併用したり、どちらかにのみ設定できるというのは面白いと思います。アナログシンセサイザーKORG MS-20、MS-20 miniのホイールの手前にあるモーメンタリースイッチも、こういう使い方ができるか否か知りたいと思っています。

 nord lead 4の最初のプリセット音は、インパルスモーフボタン1を押すと音程が下がっていきます。MOD ENVのディスティネーションにOSC1/2、つまりオシレータのピッチを充て、インパルスモーフボタン1を押すと実行される様に設定されています。押すのを止めると音程が元に戻る事と、鍵盤が押された状態で何度押しても再実行される事から、トリガーは鍵盤から独立した設定だと思います。

 オシレータ1の波形は、三角波、鋸歯状波、LFO変調のPWM(パルスウィズモジュレーション)、矩形波、PW(パルスウィズ)、ウェイブテーブル、サイン波。

 コルグやローランドのアナログモデリングシンセでいうコントロール1に相当するパラメーターが無く、鋸歯状波や三角波、サイン波の波形変化はもちろん、PWM、PWもパルス波の幅(パルスウィズ)をマニュアル設定する事はできません。規定値です。PWMを示す記号の上にある双方向の矢印←→は、奏者やマニピュレータがパルスウィズを変えられる事ではなく、LFOによって周期変化する事を示したものです。

 ウェイブテーブルには128種の波形があり、専用のつまみで選択します。

 オシレータ2の波形は1と同じなのですが、ウェイブテーブルの代わりにノイズがあります。音程に関する二つのつまみは、ノイズの時は音色設定操作子になります。

 オシレータ2に鍵盤演奏による音程変化をつけたくない場合、キーボードトラックオフボタンを押します(ランプが点灯する)。

 二つのオシレータの音量は、各々個別にレベルを設定するタイプではなく、オシレータミックスというつまみでバランスを設定します。オシレータのレベルをトータル0にする事はできません。

 ENVはADSRがフィルター、アンプに独立して存在します。アタックタイム、ディケイタイム、サスティンレベル、リリースタイムの全てに個別にランプがある事からも分かるとおり、nord lead 4のENVの各要素は、ベロシティやホイール、エクスプレッションペダル等のディスティネーションとして設定できます。

 フィルターは、レゾナンスを上げていくと自己発振するタイプなのですが、二つのオシレータの音量を0にする手段が分かりません。パルス幅が可変ではないので、波形をPWにしてデューティー比を0:100にする方法は使えません。

 フィルターモードは、3種のローパスフィルター、バンドパスフィルター、ハイパスフィルターの他に、minimoogのVCFやENVの風合いをシミュレーションしたラダーフィルターM、1980年代初頭、その頃は大阪市住之江区にあった某シンセメーカーが作った、可愛らしいベースシンセのVCFに依ったラダーフィルターTBがあります。これらラダーフィルターの名称もそうなのですが、取扱説明書の記述が、KingKORGもかくやと思われるほど、あからさまな表現なので笑ってしまいました。

 内蔵エフェクトは、FXで歪み系や変調系が計六つあり、どれか一つを選びます。パラメーターはデプスだけなのですが、MOD ENVやLFO2のディスティネーションに設定できます。

 また、FXとは別に空間系エフェクト(ディレイ、リバーブ)もあります。フィードバック数や原音とエフェクト音のバランスを決める事ができます。これらもディスティネーションに設定できます。

 今回初めて多少なりともnord leadの試奏らしい試奏をしたのですが、モーフィング、そしてこのnord lead 4で加わったインパルスモーフィングのおかげで、露出しているつまみやボタンの数から描くイメージよりも、奏者やマニピュレータのアイディアを緻密に織り込める事が分かりました。

 ENVがADSRのシンセに対して私が出せる価格ではないものの、赤い筐体、木製ピッチスティック及びそれと直角にレイアウトされたモジュレーションホイールと併せて、シンセサイザーエンジン部分にも興味をひかれました。


平成28(2016)年12月19日追記。

 同年11月1日より、代理店がKID(コルグインポートデザイン)からヤマハに変わっています。

 それに伴っての事と思うのですが、公式サイトの仕様ページの接続端子群に関する記述から、サスティンペダルとしてフットスイッチKORG PS-1、3、DS-1H、コントロールペダルとしてエクスプレッションペダルKORG EXP-2、XVP-10が使用可能であるという記述が消えています。

 しかしながら、もともとnord leadシリーズ現行機は、コルグ、ローランド、ヤマハ、ファターの特性に適合する設定がプリセットされていて、各メーカー製品用の設定を選択するだけで使えるようになっており、代理店交代後の個体を導入しても、先に挙げたメーカーの足回り製品を使うことができます。


nord lead 4
http://www.nordkeyboards.jp/products/nord_lead_4/

by manewyemong | 2013-09-12 13:07 | シンセワールド | Comments(0)