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KORG 800DV試奏記

 implant4さんで、KORG 800DVを試奏させていただきました。

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 40年近くの時を経たとは思えない美品でした。21世紀に入ってから、私はKORG 800DVの中古機で、これほどの美品を見る機会はありませんでした。既にimplant4さんのサイトの在庫リストにアップされています。コンディションや価格等、お調べください。

 ちなみに、キーボードマガジン昭和58(1983)年1月号のある楽器店の広告に載っていたKORG 800DVの中古機のお値段は、たしか39,800円でした。発売から約8年後のお話です。

 今回、せっかくimplant4さんで撮影させていただいた画像のかなりの枚数を、デジカメからパソコンへの転送時のアクシデントで消し飛ばしてしまったのですが、生き残った分を使ってKORG 800DV試奏記を書いていきたいと思います。

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 アナログデュオフォニックシンセサイザーKORG 800DVは、昭和49(1974)年に発売されました。この年、他に国産シンセとしては、mini KORG 700S(主に輸出用)、Roland SH-3(後に諸事情あってSH-3Aに替わる)が発売されました。前年に出た初の国産量産型シンセサイザーmini KORG 700、Roland SH-1000に続く、日本のシンセサイザー黎明期のモデルです。

 2台のモノフォニックシンセが搭載されていて、アッパー側を高着優先、ロワー側を低着優先とする事により、キーアサイナーの無い時代にデュオフォニック(2声)の発声をする事ができました。

 この2台のシンセサイザーエンジンは、音声出力に至るまで互いに全く影響しあっていません。完全に独立しています。

 KORG 800DVを愛用するシンセサイザー奏者として私が知っているのは、やはり喜多郎さんです。ファーイーストファミリーバンドの頃からお使いだったと思います。

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 ファーイーストファミリーバンドが使っているおびただしい数の楽器や機材を野外に並べてメンバーと一緒に撮った写真が、アルバム「地球空洞説」のリーフレットに載っていて、minimoogやRoland SH-1000あるいは2000等とともに、800DVも写っていました。左端の人物、フルートやサックス等を担当したJOEさんの前に見えます。

 今日に至るまで、発声の末尾に1オクターブ上へのディレイオートベンドがかかった威勢のいい「パァァァアー」というブラストーンリード等にお使いです。

 また、平成14(2002)年2月7日NHK総合で放映された「人間ドキュメント・喜多郎~長良川を奏でる」で、喜多郎さんの「水に祈りて」という新曲とその制作風景が紹介されたのですが、その終盤、喜多郎さんが800DVのトラベラー(VCFのカットオフ)のスライダーを動かして、風の音を鳴らしている場面がありました。

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 リアパネル側。「SYNTHESIZER KORG」のロゴがあります。

 譜面立てを取り付ける事ができる様になっています。

 800DVに搭載されている2台のモノフォニックシンセは、オーディオアウトを独立して持っています。シンセサイザーエンジン部分同様、左右ではなく上下(アッパー/ロワー)に並んでいます。

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 電源コードはこの蓋の中に格納されていて、使用時にコードを取り出して閉じる時、下の穴に通す形になっています。テープレコーダー等、この頃のオーディオ機器に、こういう風になっているものが結構あった記憶があります。

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 鍵盤。

 見た目も感触もすこぶる良い状態でした。以前のオーナーさんが手入れを欠かさなかったか、取り替えたのかもしれません。私がこれまで触れてきた800DVの鍵盤は、もっとやかましい音がしたのですが、この個体は比較的静かでした。

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 フロントパネル。

 当然ながら、デジタルアクセスコントロールではなくアナログ操作なので、音色作りに関する全ての操作子が、実体を持つ形で独立してパネル上に存在しています。

 つまみやレバー、スライダーには、カラフルな色が付いています。

 つまみは涙滴を柱状化したような姿をしていて、38年後、少し似たものが、

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 ワークステーション機KORG KROME及びKROSSで復活します。

 レバーは、いずれも三つの選択肢が充てられています。

 上下に動かす形のスライダーが変わっていて、上が最小値、下が最大値になっています。周期変化に関するもの(ビブラートのレイト)は下に行く(数値が増える)ほど速く、逆に、径時変化に関するもの(EGのアタックタイム、オートベンドのディレイタムやフェイドタイム)は遅くなります。

 いずれの操作子も扱いやすく、操作時の脆弱感がどうこういう感じはしませんでした。

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 ピッチに関する操作子群。コース及びファインチューン。

 この800DVで驚いた事の一つなのですが、電源投入時からチューニングがあっていて、普通にドレミが弾けました。かつて私が所有していたKORG Mono/Polyは、特に寒い時期は15分以上かかりました。

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 フィルター。

 コルグはVCFのカットオフフリケンシーの事を、トラベラーと呼んでいました。この頃のコルグシンセサイザー独特の温かみを醸し出す部位がここだと思います。

 横に動かす形のローパスフィルター、ハイパスフィルターのトラベラーのスライダー。有名な両者をすれ違わせない為の突起が見えます。

 ブライトとは今でいうレゾナンス。レバーで規定値を選ぶ形です。その横のエクスパンデッドはEGデプスの事で、これも規定値選択です。

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 アンプ部。

 アタックタイムと、減衰~持続音を設定するパーカッション及びそれと組み合わせて使うレンジセレクターといった要素で構成されたEG。VCFと共有する形です。

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 VCO。

 アッパー/ロワーともほぼ同じなのですが、前者のノイズはピンク、後者はホワイトです。

 左から四つ目のパルス波は幅を設定する事はできません。規定値です。また、その横のコーラスはLFO変調のPWMで、レイトをビブラートと共有しています。

 鋸歯状波を加えるサブオシレータとリングモジュレータがあります。

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 LFO、というより、コルグ風にいうところのMG(モジュレーションジェネレータ)及びオートベンド(簡便なピッチEG)セクション。

 ビブラートレバーは、ノーマルで押鍵と同時に、ディレイでディレイタイム(規定値)を実行して後、ビブラートがかかります。センター位置ではかかりません。

 ベンダーのレバーは、下向きの矢印で1オクターブ下へ、上向きで上へオートベンドがかかります。センター位置ではオートベンドはかかりません。上向きのオートベンドは喜多郎さんが「パァァァアー」というブラストーンリードで常用しています。

 ポルタメントレバーは、センター位置ではかからない、バリアブルではかかる、です。フィクストの意味する所を試奏し忘れました。

 ビブラートに関するスライダーは、レイトとデプス。ディレイタイムはビブラートレバーの所で書いたとおり規定値で、奏者やマニピュレータの意図は反映されません。喜多郎さんの800DVブラストーンリードのディレイビブラートのディレイタイムは、喜多郎さんが決めたのではなく、コルグの技術者が決めた値です。

 オートベンドに関するスライダーは、押鍵からオートベンドがかかり始めるまでのディレイタイムと、かかり始めてから1オクターブ上または下に達するまでのフェイドタイム。これもオートベンドのデプスは1オクターブと決められています。

 このオートベンドのフェイドタイムの部分を、KORG OASYS以前、つまりEGの各タイム個別にカーブを設定する事ができないリニア変化固定のKORG TRINITYTRITON等のピッチEGで行うと全く雰囲気が出ず、アナログシンセKORG 800DVがオートマチックで行っている事を、私は長年手操作で行ってきた事は、喜多郎KORG 800DVブラストーンリードで書きました。

 また、800DVのオートベンドは、公演等の長時間使用のおり温度の上昇の影響で、1オクターブ上あるいは下まで達しないうちに、息切れして終えてしまう事がよくあるそうです。電源の再投入で治る事も多いのですが、それも繰り返すうちに次第に効かなくなってくるとの事です。

 ポルタメントはアナログシンセらしい、実行の序盤と終盤で速さが変わってくるタイプです。タイムではなくレイト設定だと思われます。これもリニア変化だと雰囲気が出ません。

 アナログモデリングシンセサイザーKORG RADIASのポルタメントは、カーブのパターンを選択設定できるのですが、アナログシンセのポルタメントのフォームをシミュレーションしたものもありました。ワークステーション機やアナログモデリングシンセに、是非搭載していただきたいと思っています。後者の場合、デジタル(リニア)とアナログ(アナログシンセのフォームを模したもの)の二つ程度の選択肢にしておく方が、音色作りの苦手なユーザーに簡便な印象を与えると思われます。

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 アッパー/ロワーの音量スライダー、キートランスポーズ、リピートの操作子群。

 キートランスポーズとは、後年のRoland JUNO-6や60、SH-101から搭載され始めた、ギターのカポタストのような移調機能の事ではなく、キーアサイナー方式のポリフォニックシンセのように2台のモノフォニックシンセがどう発声するかの組み合わせを決めます。

 ここを色々試すのを忘れたのですが、A←→Bレバー、C←→Dレバーが共に上がった状態では、2声が出ました。

 リピートは、所謂トレモロです。アッパーのみ、ロワーのみ、両方、交互の発声パターンを、つまみで選択します。左のスライダーはレイトです。右側のスライダーで何をするのかを試奏し忘れました。

 imaplant4さんでは試奏のおり、スピーカーを二つ配してステレオで音を聴く事ができる様にしてくださるのですが、それ故今回、このリピート機能の面白さを堪能する事ができました。

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 コルグは試作1号機を開発した頃、まだシンセサイザーの存在を知らなかったと聞きます。それ故その後、姿や仕様、パラメーターの呼称に至るまでが独自性に富むminiKORG 700やminiKORG 700S、そしてこの800DVを作る事できたのかもしれません。

 コルグという、今も最も豊かな発想力を持つシンセサイザーメーカーは、昭和49(1974)年の時点でも、やっぱりコルグだったという事なのでしょう。

 KORG 800DVはマニピュレーションに関して、脳裏で音を鳴らしてから音色のエディットを始める、要するに私のような人間の意図を体するシンセサイザーではないのかもしれません。結局、このシンセのキャラクターそのものを必要としている人の演奏で輝くモデルなのだと思います。

 私の手許に置く気は起きないのですが、時々、演奏、というより、ただただ遊んでみたくなるシンセサイザーではあります。


KORG 800DV
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/800DV/

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by manewyemong | 2013-10-01 11:37 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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