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KORG MS-20 mini試奏記

 implant4さんで、アナログモノフォニックシンセサイザーKORG MS-20 miniを試奏させていただきました。

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 MS-20 miniはNAMM 2013での発表時、KORG MS-20 miniが出ますで採り上げています。

 流石に経験不足なので今回はパッチングに関して、ディレイフェイドインビブラートと、モーメンタリースイッチをトリガーにしたオートベンドぐらいしかできなかったのですが、試奏してみての雑感を書いていきたいと思います。

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 フロントパネルが立った、そしてパッチケーブルの抜き差し口がパッチパネルという形で集約されている独特のデザイン。minimoog Voyager XLも、フロントパネル左にパッチパネルがあります。

 モーグやローランド等のシステムシンセの場合、パッチパネルという考えは無く、ソースとディスティネーションの所にパッチケーブルの抜き差し口があります。完全なシステムシンセKORG MS-50も同様です。

 ちなみに上の画像の音色設定は、恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードをシミュレーションしたものです。EG1をディレイフェイドインビブラートのソースに使っています。

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 パルスウィズは大体この位置。

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 鍵盤。MS-20 miniの為に新たに設計されたものです。

 KORG M3 KYBDアセンブリ-61/73microKORG XLM50といったコルグ鍵盤のしっとりした感触を継承して、静粛性にも優れています。ミニ鍵盤としては弾きやすい方だと思うのですが、トリガーモードがシングル固定である故に、リトリガーする/しないをタイトに弾き分けるには、スタッカート/レガートを丁寧に行う必要があります。

 この鍵盤は、来る4月下旬に発売されるショルダーシンセKORG RK-100Sに継承されています。

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 ホイールとモーメンタリースイッチ。

 どちらもパッチングによって様々な用途のソースになります。

 ホイールは勝手にニュートラル位置に戻るのではなく、奏者やマニピュレータが手操作で戻してやる必要があるタイプです。

 MS-20から継承された独特の演奏操作子モーメンタリースイッチは、コルグのワークステーション機のジョイスティックの側にあるアサイナブルボタンの様なものなのかと思ったのですが、これ自体が押鍵とは独立してトリガーのソースになります。アナログモデリングシンセnord lead 4の三つのインパルスモーフボタンに似ています。

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 フロントパネル。

 VCO1、2の波形、オクターブ選択、VCFのハイパス及びローパスフィルターのカットオフフリケンシーのつまみが、他より大きいものが採られています。

 MS-20のものより小型化されているのですが、アナログモデリングシンセKORG MS2000シリーズのものよりも、扱いやすい形状と感触だと思いました。音色設定操作子としてだけでなく、演奏操作子として使えます。

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 二つのVCO及びそのミキサー。

 VCO1の波形は、三角波、鋸歯状波、パルス波、ホワイトノイズ。VCO1にのみあるパルスウィズは、0で矩形波になります。

 MS-20、MS-20 mini、MS-20 Kitは、パルスウィズをMG(LFO)、EG、アナログシーケンサーKORG SQ-10等で変調する事ができません。マニュアル設定のみです。

 VCO2の波形は、鋸歯状波、矩形波、パルスウィズが固定されたパルス波、リングモジュレータ。

 VCO2には、対VCO1のディチューンつまみがあります。

 VCO1、2とも矩形波は、Roland JUNO-6試奏記で触れた二つの矩形波のうちの、“黄ばんだ矩形波”です。

 難波弘之さんの「時計の匂い」(アルバム「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」より)の間奏のリード音はMS-20によるものなのですが、二つのVCOをオクターブ違いにして双方矩形波にし、ポルタメントをかけっぱなしで演奏してみると結構似ました。

 ミキサーはVCFが自己発振するアナログシンセの常として、二つのVCOの割合を決めるのではなく、独立して両者のレベルを設定するタイプです。

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 ポルタメントタイム及びマスターチューニング。

 ポルタメントは実行開始時は速く、後にだんだん遅くなっていくタイプと思われます。要するにポピュラーなアナログシンセポルタメント。リニア変化だけでなく、こういうカーブをワークステーション機やアナログモデリングシンセにも、選択肢の一つという形で取り入れていただけたらと思います。

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 VCF。

 ハイパスフィルター及びローパスフィルターのカットオフ及びレゾナンス。自己発振します。かつてのMS-20のVCFには、製造期間の前期はKORG35、後期はSallen-Key OTAという部品が使われたそうですが、MS-20 miniにはより人気が高いとされるKORG35が採られています。

 昭和57(1982)年に刊行された古山俊一さんの「シンセサイザーここがポイント」(音楽之友社)に、MS-20による母音「あ」「い」「う」「え」「お」の作り方が載っていたのですが、この四つのつまみを微妙に変えた設定でした。約32年ぶりにやってみたのですが、MS-20 miniががんばって発声している感じが、どこか可愛らしくて面白かった。

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 ピッチ、ハイパスフィルター、ローパスフィルターのカットオフの、周期変化、径時変化の深さを設定する操作子群。内部接続されているMGやEG以外に、パッチングを介して他のソースを設定する事ができます。

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 MG(LFO)、EG1、そしてこの画像では上の方が切れてしまっているのですがEG2。

 MGは、降下型鋸歯状波~三角波~上昇型鋸歯状波と連続可変できます。また、パッチングを介してですが、パルス波~矩形波~パルス波も同様です。

 EG1はアタックタイムとリリースタイムの簡便なものですが、押鍵やモーメンタリースイッチによるトリガーからアタックタイム実行開始までの時間を設定するディレイタイムがあります。モジュレーションのソースに使うと、MS-20の頃の同価格帯の他社機(よくできたモデルでLFOにディレイタムはあるがフェイドタイムは無い)よりも、有機的な変調をかけることができます。

 EG2は基本的なADSR(アタックタイム、ディケイタイム、サスティンレベル、リリースタイム)に加え、離鍵やモーメンタリースイッチのオフからリリースタイム実行開始までサスティンレベルを維持する時間を設定するホールドタイムがあります。

 現在のアナログモデリング及びアナログシンセのADSRタイプのEGに、ディレイタイムやホールドタイムがあると、音色作りの奥行きが広がると思います。Dave Smith Instruments POLY evolver PE keyboard等、デイブスミスインストゥルメント社のシンセのENVには、ADSRの前にディレイタイムがあります。

 EG2のアタック感というかアタックタイムに関して、打/撥弦系から吹奏系へと変わっていく度合いが、もう少し緩ければなと思いました。この点、MS-20とたしか同い年のprophet-5は、SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5試奏記で書いたのですが、恐ろしく緻密に設定する事ができました。もちろん、歴然とした価格差があるのですけどね。

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 パッチパネル全景。

 コルグのワークステーション機のオルタネートモジュレーションや、アナログモデリングシンセのバーチャルパッチ同様、ソースは何か、ディスティネーションは何か、そもそも何をさせようとしているのかを脳裏で確定させておく必要があります。Roland JD-800試奏記で触れた“音を探す”やり方だと、時間を無駄に費やすだけだと思います。

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 パッチケーブルが標準サイズだったKORG MS-10、MS-20は、鍵盤を演奏する手にパッチケーブルが被って来る事が、楽器としての大きなウィークポイントだったのですが、MS-20 miniのパッチケーブルは、ミニサイズ故に宙に浮いてくれます。

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 かつて私も持っていた小冊子「サウンド・シンセサイズ入門 Dr.コルグのシンセサイザー講座」の復刻版。KORG MS-20 miniを購入すると、おまけとして付いてくるのですが、無くなり次第この特典は終わります。今現在でも付いて来るのか否かを聞き忘れました。

 今回、KORG MS-20 miniを試奏してみて、気付いた事があります。MS-20誕生から歳月が経った平成18(2006)年に起きたPSE騒動の頃はもちろん、1980年代初頭に試奏したMS-20が、MS-20 miniのように、つまみを回したら回しただけ音色がきっちり変わるのではなく、変化がいびつというか緩慢だった様な憶えがあります。

 MS-20 mini発売時に制作されたPR動画(「KORG MS-20 mini - Behind the scene - 開発者インタビュー」 http://www.youtube.com/watch?v=ZFCFbyzOLso )で、「EGのカーブのフィーリングまで再現した」旨のお言葉が設計者の方からあったのですが、MS-20 miniは私の記憶にあるMS-20よりも、素直に音色が変わってくれる気がします。無論、アナログシンセには各機の個体差(年を経るほど顕著になるそうです)があり、私と今回試奏したMS-20 miniとは相性が良くて、かつて触れた複数台のMS-20とはそうではなかっただけなのかもしれません。

 コルグはMS-20 mini、MS-20M KitARP ODYSSEYと、アナログシンセ旧機の復刻を続けています。ご存知の通り、私は基本的にアナログシンセが嫌いなのですが、これらの報になぜか心が躍ってしまう。

 それは、あの頃買えなかった、触れる事すらできなかったという情緒的な理由ではなく、ワークステーション機やアナログモデリングシンセと違い、とても私の意図を体するとは思えないこれらのシンセに対するちょっとした関心が、私の中に芽生えたからです。都合の良いシンセに飽いたのかもしれません。

 MS-20 Kitには手を出せそうにないので、選択肢としてはMS-20 miniになるのでしょうけど、一つだけいえるのは、私はMS-20 miniを手にしても、そのシンセ独特の妙味とやらには、絶対に乗っからないという事です。

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 ところでKORG MS-20 miniは35年後、KORG MS-20のように大きな評価を受けているでしょうか…。


平成27(2015)年1月22日追記。

 本日、アナログセミシステムシンセサイザーKORG MS-20M Kitが発表されました。発売日2月11日。

 KORG MS-20M Kitが出ますへ続きます。


平成29(2017)年1月12日追記。

 平成29(2017)年1月12日、KORG MS-20 miniの数量限定カラーバリエーション機、MS-20 mini WM(ホワイトモノトーン)が発表されました。



KORG MS-20 mini
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/ms_20mini/

サウンド・シンセサイズ入門 Dr.コルグのシンセサイザー講座(PDF)

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by manewyemong | 2014-02-22 18:15 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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