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Roland AIRA SYSTEM-1試奏記

 平成26(2014)年6月25日発売のRoland AIRA SYSTEM-1を、15分弱ですが試奏してきました。

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 また、平成26年10月3日、implant4さんで撮影させていただいた画像を添付しました。

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 AIRA(アイラ)とは、さる平成26年3月4日のローランドのニュースリリースによると、
アーティストのアイディアを瞬時に演奏というカタチにし、リアルタイムで最高のパフォーマンスを発揮できる電子楽器を目指したブランド
だそうです。

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 既にリズムマシンRoland AIRA TR-8、ベースマシンTB-3、ボイストランスフォーマーVT-3が発売されています。

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 Roland AIRA SYSTEM-1は、ベロシティ無しの25鍵盤を持つ、4声ポリフォニックのアナログモデリングシンセサイザーです。

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 鍵盤の感触は下がり切るまで早い(短い)のと、カクカクっという感触がけっこう大きく伝わってきます。ベロシティ無し故、あまりその辺の事には気を使っていない鍵盤だと思います。静かとは言い難い楽器店店頭で、けっこう音もしました。ローランドのDTMキーボードに、酷似した感触のものがあった様な記憶があるのですが、思い出せません。

 シンセエンジン部分にベロシティに関係するパラメーターが無く、どうやら他機からMIDIを介しての受信もしないようです。

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 黒をベースにした筐体に、緑色のストライプが走り、それと同系色に光る自照型ボタン、そして、つまみやスライダーが同系色のLEDにライトアップされています。

 スライダーにはあるものの、つまみには目盛が無く、聴覚と大まかな位置でのマニピュレーションを指向する人向きです。また、マイナス〜0〜プラスやENVデプスのつまみに関して、0ないしセンター位置にクリック感があります。

 ポルタメントタイムやエフェクトデプスのような最低位置がオフになるつまみは、もしかしたら0とオフの間に一呼吸置いてクリック感の様なものがあるのかと思ったのですが、それはありませんでした。

 感触は、つまみ、スライダーとも、Roland GAIA SH-01のような剛性は無く、指先で突く様にしないとDEC /INCボタンの様な緻密な設定はしづらいのですが、むしろ、大雑把に派手に動かすには都合が良いと思いました。

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 各パラメーターの操作子が概ね露出している事とも関わり合いがあるのかもしれませんが、ユーザーメモリーは八つしかありません。あるいはAIRA開発スタッフは、実質SYSTEM-1をSHシリーズやSYSTEM-700、SYSTEM-100、SYSTEM-100Mのような非プログラマブル機として、その場でマニピュレーションしてほしいという意図をお持ちなのかもしれません。

 これまでのローランドアナログモデリングシンセ、ひいてはその他デジタルシンセと異なり、1パッチ環境下に複数トーンがあるという考えは無く、studiologic sledgeの様な1音色1トーンです。
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 LFOは、波形はこれまで同様、サイン波、三角波、上昇型鋸歯状波、矩形波、サンプル&ホールド、ランダムです。ディレイタイムは無く、フェイドタイムのみなのも、これまでのローランドアナログモデリング機を踏襲しています。

 ピッチ、グロウル効果、トレモロのデプスもここに集約されているのですが、これらはこれまでの様なスライダーではなく、つまみになっています。0~最大値ではなく、最低値~0~最大値なので、例えば波形を上昇型鋸歯状波にしてデプスをマイナス値にすると、下降型になります。

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 二つのオシレータは構成がほとんど同じで、波形も鋸歯状波、矩形波を含むPW、三角波、鋸歯状波2、矩形波2、三角波2、となっています。

 鋸歯状波2とは、所謂SuperSaw、つまり複数の鋸歯状波が重ねられた波形で、矩形波2、三角波2も、各々複数の矩形波や三角波が重なっているものと思われます。KingKORGのオシレータ波形でいえば、Unison Saw、Unison Squ.、Unison Tri.にあたると思います。

 ピッチのレンジは、これまでのローランドアナログモデリング機は連続可変だったのですが、SYSTEM-1はアナログシンセの様な、64~2までのオクターブ切り替え形になっています。

 二つのオシレータ間のディチューンは、オシレータ2で行います。また、半音単位、つまりコースチューンは、リングモジュレータとシンクのボタンを押しながらディチューンつまみを動かして設定します。

 カラーという、かつてのRoland JP-8000、JP-8080でいえばコントロール1のような、オシレータ波形に変化を与えるパラメーターがあります。コントロール1はオシレータ1にしかありませんでしたが、カラーは二つのオシレータ両方にあります。

 例えば、オシレータ波形が矩形波だった場合、カラーはパルスウィズになります。カラーが0で矩形波になります。また、ローランドのアナログシンセと違い、最大値でも音は聴こえます。恒例の喜多郎miniKORG 700Sリードのヒントを一つ書くと、カラーを時計の短い針でいう10〜11時過ぎあたりでパルスウィズを探してみてください。

 また、矩形波2のカラーのデプスを上げていくと、姫神せんせいしょんがKORG Polysixで出していた、笛、さまざま(2)の様な音ができました。ワークステーション機の矩形波にアンサンブルエフェクトをかけるよりもこちらの方が、笛、さまざま(2)に似せる事ができました。

 また、カラーはマニュアル設定の他に、LFOやENVといった周期/径時変化のソースを設定する事ができます。ローランドのアナログシンセのPWMのソースENVは、VCF ENVかENV-1(Roland JUPITER-8、JUPITER-6等)だったのですが、カラーは、ピッチ、フィルター、アンプのENVを充てる事ができます。

 オシレータ1にはクロスモジュレーションが、オシレータ2にはリングモジュレータとシンクロがあります。

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 SYSTEM-1はこれまでのローランドアナログモデリング機のオシレータミキサーと違い、二つのオシレータの音量をバランスという形ではなく、各々のレベルを設定できるようになっています。という事は、フィルターで“あれ”ができるという事です。

 また、サブオシレータやノイズジェネレータの種別やレベル設定もここで行います。ノイズはホワイト/ピンクを選択できます。

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 これまで同様、アタックタイムとディケイタイムのみの簡便なピッチENVがあります。これらは目盛の付いたスライダーです。

 正曲線とリバース曲線を、ポラリティスイッチで切り替えるのではなく、デプスつまみで連続可変できます。

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 フィルターは、ローパスフィルターとハイパスフィルターを併用できます。

 レゾナンスを上げると自己発振します。それ故に、オシレータミキサーは二つのオシレータのバランスではなく、双方のレベルを0~100にできる形になったものと思われます。

 専用のENV(アタックタイム、ディケイタイム、サスティンレベル、リリースタイム)があり、操作子はスライダーです。

 キーボードフォローは、これまでの0~100と違い、最低値~0~最大値です。つまり、フィルターを発振させた場合、音階を逆さに設定するといった事が可能です。最大値で平均律になります。

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 アンプ部のENVもADSRタイプです。

 クラッシャーというパラメーターがあります。ひねってみたかぎりでは歪み系のエフェクターのような気がしました。ただしRoland SH-201KORG MS2000シリーズ等のアンプ部にあるオーバードライブとは異なり、効果がはるかに強烈です。

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 内蔵エフェクターはリバーブとディレイのみ。前者はデプスを、後者はデプスとディレイタイムが設定できます。

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 ポルタメントはオンオフボタンは無く、タイムつまみのみがあります。ポルタメントのカーブはリニア変化ではない様な気がしたのですが、アナログシンセとも違う様に思いました。

 レガートボタンをオンにすると、レガートの時だけポルタメントがかかるようになります。

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 ローランドシンセサイザーの特徴ともいうべきベンダーレバーが無く、新登場のスキャッターという機能と併せたジョグシャトル/ダイヤルになっています。

 Roland AIRA SYSTEM-1で、奏者やマニピュレータが自分らしさを発揮できるのは、このジョグシャトル/ダイヤルの設定や操作にあるのかもしれません。

 外側のジョグシャトルは通常ピッチベンドに、そしてアルペジエータがオンの場合はスキャッターのコントローラーになります。また、内側のジョグダイヤルは、0~10まであるスキャッターの効果の選択操作子です。ダイヤルであるという事は、演奏中、効果のパターンを連続的に変えられるという事です。

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 Roland SH-101以降のローランドシンセのベンダーレバーは、前に押す事でモジュレーションをかける様になっているのですが、その行為はSYSTEM-1では、ジョグシャトル/ダイヤルそばのモッドボタンを押す事がそれにあたります。効果の設定はモッドボタンを押しながら、LFOの各パラメーターを調整します。

 プリセット音のスキャッターを操作してみたのですが、とにかくどう設定したらこんな風に音が変化するのか、正直理解できませんでした。えぐい変化です。

 また、ジョグシャトルによるピッチベンドは、ローランドのベンダーレバーやコルグのジョイスティックの代わりというよりは、やはりこの演奏操作子独特の使い方を考える必要があると思いました。

 SYSTEM-1にはプラグアウトというコンセプトがあります。ローランドが今後出していく別売りの同社ビンテージ機のパソコンベースのクローンを、AIRA SYSTEM-1に持ってくるという機能です。

 その第1弾、そしてSYSTEM-1購入特典として、Roland SH-101 PLUG-OUTがアナウンスされています。来る平成26年7月25日よりダウンロードが可能になります。

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 SYSTEM-1を操作していて、昭和57(1982)年にSH-101を買った頃や、それ以前、Roland SH-09、SH-2等を店頭で触っていた頃を思い出しました。あたり前の話ですが、SYSTEM-1の各パラメーターの素直さや安定度、出音の輪郭の明瞭度は、それらとは比較になりませんけどね。

 Roland AIRA SYSTEM-1に関して、一つ分からない事があります。コルグのアナログモデリング機のバーチャルパッチにあたる機能があるわけでもないのに、一体どこがシステムなのか、です。

 Roland AIRA SYSTEM-1mが出ますに続きます。


Roland AIRA SYSTEM-1
https://www.roland.com/jp/products/system-1/

Roland SH-101 PLUG-OUT
https://www.roland.com/jp/products/sh-101_plug-out/

「ダンス・ミュージック・シーンの進化を促す製品ラインアップ
新ブランド 「AIRA(アイラ)」シリーズを発売
~新製品4機種を3月8日から順次投入~」
(ローランドサイトのニュースリリースより)
http://www.roland.co.jp/news/0608.html


平成27(2015)年7月8日追記。

 Roland AIRA SYSTEM-1のソフトウェア版が発表されました。

Roland SYSTEM-1 Software Synthesizer
https://www.roland.com/jp/products/system-1_software_synthesizer/

by manewyemong | 2014-06-25 17:03 | シンセワールド | Comments(0)