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KORG PS60試奏記

 musikmesse 2010で発表されたKORG PS60が、4月24日から店頭に展示されています。

 PS60はパソコンのエディタを用いなければ一から音を作ることが出来ないので、エディタ使用環境の無い私には縁の無いシンセサイザーではあるものの、楽器店で少し触ってみました。音色を全くエディットせず、あくまでプリセット音を鳴らしただけでなのですが、試奏記を書きたいと思います。

 店頭でのお値段は69,800円と廉価機なのですが、MADE IN JAPAN、日本製です。コルグの関連会社コルテック製かどうかは分りません。国産だからか筐体や手指が触れる部分が最近のコルグ廉価機にしてはしっかりしていると思いました。

 鍵盤に関して、KORG M50と似て非なるもののような気がしました。段違い平行に展示されていたM50よりもしっかりした感触です。もちろん平成20年秋から店頭に置かれているM50の鍵盤には、酷使や経年による疲労があるとは思うのですが、それでも質の違いを感じました。

 また、ボタンの感触もフラグシップ機KORG M3よりも良く、つまみは他のモデルからの流用ではなく、新たなオリジナルデザインのような気がします。

 ジョイスティックの位置が鍵盤の左横ではなく、フロントパネルの左端にあります。この位置にジョイスティックがあるのは、KORG POLY-800、POLY-800II以来ではないでしょうか。

 コルグのワークステーション機のジョイスティックのそばにある二つのアサイナブルボタンは、残念ながらPS60にはありません。アサイナブルボタンで私が行っているようなことは、フットスイッチPS-1等を用いるしか無いようです。ただし、ワークステーション機のアサインリストの中にあるジョイスティックロック関係の機能を持たせた、LOCKというボタンがあります。

 ペダル/フットスイッチの端子はワークステーション機同様二つあります。

 仕様に関していくつか記すと、、オシレータの波形の数がM3やM50よりもかなり少なくなっています。いわゆるバンドキーボーディストがよく使う音色の波形を優先的に残した感があります。M1以来のパンパイプやTRINITYからのDetuned-Super等が見当たりません。Pulse-33%(喜多郎miniKORG 700Sリード店頭で喜多郎miniKORG 700Sリードを作る方法M3の場合参照)は、オシレータ波形0103番として収録されています。

 内蔵エフェクトの最大同時使用数は、インサーション5系統、マスター2。いずれもステレオ入出力です。M3、M50のようなトータルはありません。また内蔵エフェクトの選択は、インサーション63種、マスター1モジュレーション系4種、マスター2空間系4種からになっています。

 アナログシンセサイザーKORG PS3000シリーズやPolysixに搭載されて好評を博し、M1以降の歴代ワークステーション機に継承されたアンサンブル(笛、さまざま2参照)が見当たらないのですが、あるいはマスター1のビンテージコーラスがそれにあたるのかもしれません。そういえばエフェクターの中に、他のコルグシンセでは見慣れない名称のものがいくつかあります。

 何度も書きますが、KORG PS60は本体のエディットモードで一から音色を作ることは出来ません。オシレータ波形やLFO波形の選択、EGのサスティン以外のレベル(スタート、アタック、ブレイクポイント、リリース)及びスロープタイム等はパソコンのエディタを使う必要があります。

 取扱説明書をざっと読む限り、パラメーターそのものはM3やM50と遜色は無いようです。M3、M50同様ポルタメントをタイムでもレイトでも設定でき、EGのタイムまわりのオルタネートモジュレーションも各タイム個別でバリューの設定ができ、3チャンネルあります。

 取扱説明書に関して気づいたことがあります。単に機能の解説だけではなく、アイディアのヒントが書いてあったりします。例えば
フィルターEGはオルタネートモジュレーションを介してフィルター以外にも使える、オルタネートモジュレーションを設定するときは、作り出したい効果を頭に浮かべ論理的に作業していけば希望する効果が得られる
といった具合…。まるでこのブログみたいな懇切丁寧さです。

 アイディアのヒントなんて私のような人間からすれば大きなお世話なのですが、今のシンセサイザーの購買層は、ほとほと音色に対するアイディアが思い浮かばないのでしょうか。そもそも機能が理解できないのか、理解できてもそれで何をしたらいいのか皆目思い浮かばないのか…。

 Roland V-Synth GTのマルチステップモジュレーターにテンプレートがついた時にも思ったのですが、こういう機能にこそ使い手の発想力、個性が活かせるはずなのですが、今のユーザーにはシンセサイザーメーカー様からのお膳立てが必要なのでしょうかねぇ。

 KORG PS60は、今の私のシンセサイザーのラインナップに足りない部分を補完する事に関して、現行機中最も安価にそれを為せるモデルなのですが、一から音を作るためにはパソコンを新調するしか無く、そうなるとM50の方が安くあがる…。しかしDAWはもう避けて通れないという事もあり、やはり機を見てパソコンを買った方が良いのかもしれません。

 それと廉価機でもこういうしっかりしたモデルを作る事が出来るという事は、次期フラグシップモデルの出来にも期待できそうです。


KORG PS60取扱説明書
https://www.korg.com/jp/support/download/product/1/2/

by manewyemong | 2010-04-28 19:10 | シンセワールド | Comments(0)