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KORG Polysix試奏記

 implant4さんで、KORG Polysixを試奏させていただきました。

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 買い取りしたばかりの個体のようでしたが、右側化粧板に若干の傷が見えたものの、フロントパネル等に目立つ傷が無く、疲労している事が多いフロントパネル右のボタン類も、すこぶる良い状態でした。けっこうな美品ではないかと思われます。あるいは元のオーナーさんの手許にあった頃、メンテナンスを受けたのかもしれません。

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 また、MIDI INが取り付けられていて、ノートデータだけでなく、外部MIDIシーケンサーとPolysixの内蔵アルペジエータを同期させる事もできるようになっています。

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 鍵盤の感触もたいへん良かったのですが、反応にやや難ありの個所もありました。MIDIのスレイブ音源としての使用が長かったからではないかとの事でした。ただ、調整で解決できるそうです。

 要調整故に、今後、在庫リストにアップされるまで時間がかかるかもしれませんが、KORG Polysixをお探しの人にとっては、出物といえると思います。

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 プログラマブルアナログポリフォニックシンセサイザーKORG Polysixは、昭和56(1981)年登場しました。

 ネーミング、そして同時発声数を一つ多くしている事からして、プログラマブルポリフォニックシンセの実質的なはしりともいうべきSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5を意識していると思います。

 POLYSICSというロックバンドがあって、名前の由来はPolysixだそうです。「POLYSICS」も「Polysix」も、カタカナで書くと「ポリシックス」です。

 Polysixのカラーリングや操作子、側面の化粧版等、ほぼ同じ時期に発売されたKORG Mono/Polyと共通している要素が多い。それ故か、当時も今もどちらが良いかと両機を比べる向きが多い。あの頃はPolysix、そして現在はMono/Polyの旗色が良いようですが、両機の性質は全く異なっているので比較してもねぇ…。

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 私がプロの音楽家の成果物の中で、Polysixの音である事を意識して聴けたのは、姫神せんせいしょんでした。

 既に笛、さまざま(2)として採り上げたアンサンブル感のある笛や、涼しげで柔らかい日本的な感じのストリングス、撥弦系等、シンプルな、しかし曲の肝になる部分の音色に使われていました。

 姫神せんせいしょんは、コルグが機材のサポートを行っていた為、昭和57(1982)年12月の銀座ヤマハホール公演のおり、シンセサイザー星吉昭さんのブースは、KORG PS-3200やMS-20、Mono/Poly、コンボオルガンKORG BX-3といった当時のコルグ現行機群が積み上げられていました。その中で、中央に設置されていたのはPolysixでした。

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 Polysixを左から右へ見ていきたいと思います。

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 ホイール、鍵盤。

 ピッチホイールは、奏者がニュートラル位置に戻さなければならないタイプです。

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 マスターチューニング、ピッチベンドレンジ。

 電源投入から試奏終了まで、チューニングは常に安定していました。

 ピッチベンドを最大値にした場合の変化幅は、例えば「ド」を押鍵してピッチホイールを奥へ押し切った場合、1オクターブ上の「ド#」になります。

 ただ、このピッチベンドレンジつまみの設定の精度は、きめ細かとは言い難いように思いました。

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 VCO、MG。

 VCOの波形は鋸歯状波、パルス波、PWM(パルスウィズモジュレーション)。

 PWMのソースはMGではなくPWMスピードという独立したパラメーターを持っていて、レイトを設定できるようになっています。

 MG(LFO)には、当時のアナログシンセに多かったディレイタイムがあります。PolysixのMGのディレイタイムは、アナログ故かディレイタイム実行完了後のモジュレーションのかかりが、フェイドインタイムを0に設定した場合のデジタルシンセのような唐突感が無く、自然な感じがします。ディレイタイム実行後からモジュレーション実行までに、何らかの所要時間が存在すると思われます。もっともこれは、かつてアナログシンセにあまねく見られた事です。

 MGのディスティネーションは、ビブラート(VCO)、グロウル効果(VCF)、トレモロ(VCA)のどれか一つを選択する形です。三つを併用する事はできません。

 モジュレーションのデプスは、モジュレーションホイールを手前に引ききった状態、つまりオフ状態でも設定値が反映されます。minimoogやMono/Poly等は、同じ状態だとモジュレーションはかかりません。

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 VCF、EG。

 VCFはローパスフィルターのみ。EGデプスはPolysixと同時期のローランドのアナログシンセと異なり、正逆をポラリティスイッチで切り替えるのではなく、-~0~+と連続可変します。

 EGはADSRタイプ。VCFとVCAで共用しています。EGデプスを設定できるのはVCFだけです。

 EGの各タイムは、はっきりいって大雑把な設定しかできませんでした。ありふれたアナログシンセのEGです。

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 VCA、内蔵エフェクター。

 コーラスとフェイズシフターはレイトを、アンサンブルはデプスを設定できます。

 昭和58(1983)年にMono/Polyを買ったおり、Polysixのアンサンブルエフェクトを単体で出していただけないでしょうかとユーザーカードに書いた記憶があります。Roland JUNO-6のジュノーコーラスとともに、コルグのアンサンブルは夢幻感を出すツールになり得たると当時思っていました。これをYAMAHA DX7に使ってみたいとも思っていました。

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 アルペジエータ、キーアサインモード。

 アルペジエータはMono/Polyと同じものです。アップ/ダウンモードは、コルグのアナログモデリングシンセのアルペジエータでいうオルタネート2にあたります。例えば「ドレミ」を押した場合、「ドレミミレドドレミ…」と演奏されます。

 キーアサインモードには、ポリフォニック、6声ユニゾン、コードメモリーがあります。

 コードを記憶させる方法は、コードを押さえてコードメモリーボタンを押す、あるいは、ポリモードでホールドボタンを押し、1音ずつ声を足していきコードメモリーボタンを押す、です。

 6声を束ねるユニゾン及びコードメモリー時のトリガーモードは、マルチ固定です。スタッカートでもレガートでもリトリガーします。あるいは1声だけコードメモリーした場合、シングルモードになるかなとも思ったのですが、マルチ固定でした。

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 プログラマー。

 四つのバンクボタンと八つのプログラムボタンの組み合わせで、32音色を選ぶ事ができます。

 マニュアルボタンは、読み出したプログラムとは関係無しに、現在の音色設定操作子の状態の音色を発声させる事ができます。同じものがRoland AIRA SYSTEM-1にもあります。

 外部記憶装置は、この頃のプログラマブルアナログシンセのディファクトスタンダードともいうべき、カセットテープインターフェイスです。

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 「KORG Polysix」のロゴ。

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 KORG OASYS EXi LAC-1 PolysixEX試奏記等で、星吉昭さん自身の解説による姫神せんせいしょんの「舞鳥」で使われたPolysixの音色設定を中古機とEXi LAC-1 PolysixEXで試したところ、後者の方がレコードの音に遥かに近かった事、そして、コンデンサは生ものの如く劣化する事をもって、実機とEXi LAC-1 PolysixEX、どちらが本物のPolysixであるかとたずねられたら、後者であると答えるとしました。

 しかし、今回Polysixを試奏してみて痛感したのですが、操作感だけは実機には及ばない。仕様とマン/マシンインターフェイスが、一体化しているからです。実体を持った新鮮なPolysixを欲するという点からすると、昨今流行りの復刻機を出していただく事でしょうね。

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 もし、KORG Polysix復刻が実現するとしたら、MS-20 miniARP ODYSSEY同様、大きさを86%に縮小しスリム鍵盤を採る、化粧板を一考する、アルペジエータをコルグのアナログモデリング機と同じ仕様にする、PWMのソースをPWMスピードだけでなくEGも加える、MGにサンプル%ホールドを加える、ユニゾンやコードメモリー時にトリガーモードをマルチだけでなくシングルも選べる、そして、あえてプログラマブル機能を外してもらいたいと思います。

 プログラマブル機能外しの理由は、その場で出来上がる音こそが、全てのパラメーターの操作子が露出したアナログシンセのマニピュレーションの眼目ではないのかという事と、コストカットです。

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by manewyemong | 2015-03-10 08:22 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong