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ARP ODYSSEY試奏記(2)

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  ARP ODYSSEY試奏記(1)からの続きです。平成28(2016)年4月12日、implant4さんで撮らせていただいたカラーバリエーションrev2の画像を添付しました。

 ODYSSEYのフロントパネルは、セクションという単位でオレンジ色の縦線で区切られています。

 コントローラーセクション。

 ポルタメントは、オン/オフのスイッチは無く、タイムを設定するスライダーのみです。

 押鍵状態でポルタメントタイムを0より大きい値にして、横の2オクターブトランスポーズボタンを上げ下げした時、ポルタメントがかかるか否かを設定するスイッチというか穴があります。かつてApple Macintoshのフロッピーディスクドライブが、万が一メディアを取り出せない状態になった時、ドライブ横の穴に差し込んで押し出す針金様の機具がありましたが、それを使うと操作し易いと思います。

 プロポーショナルピッチコントロールという白いパッドが三つ並んでいて、左の♭は下へ、右の♯は上へピッチベンドが、そして中央の~はビブラートがかかります。これらは押された強さ(どれだけ深く押し込まれたか)を感知して、効果の深さに反映します。

 ♭と♯を同時に押した時どうなるかを試奏し忘れました。また、プロポーショナルピッチコントロールの感度を変えるパラメーターはありません。

 なぜかここに、ホワイトノイズかピンクノイズかの選択操作子があります。このセクションに広く空きがあるから持ってきたのか、何かしらの意味があるのかは分かりません。

 VCO1セクション。

 VCO1は低着優先です。「ドレミファ」を押鍵した場合、「ド」を発声します。

 ODYSSEYのVCOには、オクターブの操作子が無く、ピッチはコースとファインで設定します。

 VCO1はキーボードスイッチによって、通常のオシレータとして使うかLFOにするかを選べます。

 ピッチの周期変化(ビブラート)のソースを、LFOのサイン波か矩形波か、径時変化をランダムノートかADSR EGかから選ぶ事ができます。

 径時変化をADSR EG、つまりオートベンドにした場合、リバース曲線を設定する事はできません。VCOのデプスにマイナス値が無く、EG側にも正逆を設定するスイッチが無いからです。喜多郎mini KORG 700Sリード風のしゃくり上げるオートベンドは不可能です。

 パルスウィズは下げ切った状態で矩形波、上げ切るとデューティー比100:0になり、聴こえなくなります。PWMのソースはLFOのサイン波かADSR EGかを選べます。

 VCO2セクション。VCO1セクションと異なる点のみ記します。

 VCO2は高着優先です。「ドレミファ」を押鍵した場合、「ファ」を発声します。

 2VCOのモノフォニックシンセとして演奏(鍵盤をスタッカートでのみ演奏)する場合、ピッチをVCO1を基準にする上でのディチューンは、VCO2のファインで行う事になると思います。

 VCO1のピッチへVCO2を強制的に同期させるシンクロがあります。二つのVCOの設定が完全に同じ場合は、単に音が大きく聴こえる効果しか無いのですが、フリケンシーの設定如何でさまざまな音色変化を作り出す事ができます。

 ビブラートのソースは、LFOのサイン波、サンプル&ホールドミキサー、そしてペダル端子に挿したフットボリュームが使えます。

 LFO、サンプル&ホールドセクション。

 LFOのレイトを設定します。波形(サイン波、矩形波)の選択は、ディスティネーション側で行います。ディレイタイムやフェイドタイムといった、周期変化に対する径時変化のパラメーターは、ODYSSEYにはありません。

 サンプル&ホールドのソースを、VCO1の波形、及びノイズジェネレータないしVCO2の矩形波を選び、その割合をスライダーで設定する事ができます。

 サンプル&ホールドのトリガーを、垂れ流し(LFO)か、押鍵かから選ぶ事ができます。

 オーディオミキサー、VCF、VCAセクション。

 ODYSSEYのVCFにはローパスフィルター、ハイパスフィルターがあります。

 ローパスフィルターに関して、ODYSSEYリビジョン1、2、3の回路を選ぶ事ができます。

 ローパスフィルターの変調のソースを、キーボードトラックかサンプル&ホールドないしフットボリュームか、サンプル&ホールドかLFOのサイン波か、EGをARかADSRかから選択し、各々の効果のデプスを設定します。

 オーディオミキサーは、VCFへ送る信号の内訳、つまり、ノイズジェネレータかリングモジュレータか、VCO1の鋸歯状波かパルス波か、VCO2の鋸歯状波かパルス波かの選択と、各々のレベルを設定します。

 VCAには、ODYSSEYオリジナル機には無い、ドライブという歪みを生む要素が加わっています。
 
 VCAゲインは、音声信号がVCAを常時通るボリュームを設定します。ここの設定が少しでも上がっていると、ODYSSEYはそのレベルで常に発声し続けます。通常、0にしておきます。

 VCA EGとして、ARかADSRかを選択する事ができます。またコンボタイプのアナログシンセのVCAでは珍しいのですが、EGのデプスも設定できます。

 EGセクション。

 ARP ODYSSEYには、AR(アタックタイム、ディケイタイム)、ADSR(アタックタイム、ディケイタイム、サスティンレベル、リリーズタイム)の二つにタイプのEGがあり、ディスティネーション側でどちらを使うかを選択できるようになっています。

 AR EG、ADSR EGを持つ1970年代のアナログシンセとして、Roland SH-1が思い浮かぶのですが、SH-1は、VCFにADSR ENVが繋がっていて、VCAが、VCFとADSR ENVを共有するか、AR ENVを選ぶかを、選択するようになっています。ODYSSEYのフレキシビリティには及びません。

 AR EGは、スタートレベル/リリースレベルが0固定、そして、アタックレベルとサスティンレベルで最大値を共有していると考えると、分かりやすいと思います。つまりスタートレベル0からアタックタイム実行によって最大値に達すると、離鍵するまでその状態が持続するということです。そしてリリースタイム実行で0へ帰っていく。

 AR EG、ADSR EGは、ともにトリガーのソースを、押鍵かLFOリピートかから選択できるようになっています。ソースを押鍵にした場合は、EGの1ショットの実行、そして、LFOリピートの場合は、EGの実行を繰り返すという形に設定できます。

 ADSR EGは、トリガーモードをLFOリピートにした場合、押鍵している間だけEGのリピートを実行するか、押鍵とは関係無しにし続けるかを選択する事ができます。

 ARP ODYSSEY、復刻成るでも書きましたが、かつてのARP ODYSSEYオリジナル機は、誰それが何々という曲のどこそこのパートで使っている、という形で人々の口の端にのぼる事が多ったシンセサイザーだと思います。

 コルグがその復刻に当たって、三つのリビジョン全ての性質をなるだけ継承しようとした理由も、そういう事に訴求しようという意図かもしれません。限定生産のカラーバリエーション機も、その事を物語っているような気がします。

 しかしながら、この小さな筐体にこれだけ可能性を秘めたモデルが、
あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!
といった形でのみ消費されるのは、やはり、惜しい。

 40余年前ではなく、奏者やマニピュレータの、今、ここで、を込める工具であってほしいと思います。


平成28(2016)年9月2日追記。

 ARP ODYSSEY Moduleが出ますをアップいたしました。


ARP ODYSSEY

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by manewyemong | 2015-03-24 21:20 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong