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Roland AIRA SYSTEM-500を開発中だそうです

 平成27(2015)年4月15日から催されているmusik messe 2015に於いて、ローランドAIRAブランドから、所謂ユーロラックに沿ったシステムシンセサイザー、Roland AIRA SYSTEM-500を開発中であるというアナウンスがありました。

 開発中ながら、既にmusik messe 2015の会場でデモンストレーションが披露され、その模様を動画投稿サイトで観る事ができます。

 かつてローランドは、日本のシンセサイザーメーカーで唯一、本格的なシステムシンセサイザーRoland SYSTEM-700、SYSTEM-100(本格的とはいえないかもしれない)、SYSTEM-100Mを出していました。

 私が冨田勲さんの「ダフニスとクロエ」でシンセサイザーに興味を持ち、楽器屋さんでもらったローランドのカタログには、SYSTEM-700、SYSTEM-100、そして、記憶が曖昧なのですがSYSTEM-100Mが載っていました。

 「ダフニスとクロエ」のリーフレットに載っていた、パッチコードを抜き挿しする電話交換機みたいな巨大なシンセサイザーは、日本では大阪市住之江区新北島(当時)のローランドだけである事を知りました。

 1980年代初頭、大阪駅前第2ビル2階にあったローランドのショールーム(大阪駅前第2ビルのローランドのショールームとMCクラブニュースをつぶやく参照)に、本当にこんなに要るのかと思うほどモジュールが組み上げられたRoland SYSTEM-100Mが置かれていました。ローランドのカタログでご覧になった人も多いと思います。

 21世紀になってから知り合った関西のシンセ好きの同世代の人達が、同時期、一様にこのショールームを訪れ、私と同様、ため息をついていたと聞きました。

 冨田勲さんは、アルバム「宇宙幻想」から「ダフニスとクロエ」まではSYSTEM-700、「大峡谷」「ドーンコーラス」ではSYSTEM-100Mを使っています。

 SYSTEM-700は、たしかデジタルシーケンサーRoland MC-8と同時期の導入だったのではないでしょうか。「宇宙幻想」の「ホラスタッカート」(作曲グリゴラシュ・ディニーク、ヤッシャ・ハイフェッツ)は、冨田さんが初めてMC-8のテンキーによるステップ入力のみで制作した曲です。

 「大峡谷」のプラズマシンフォニーオーケストラのセカンドバイオリンパートに、鋸歯状波を36個、つまり、SYSTEM-100Mのモジュール112(2VCO)を18台使っています。

 東祥高さんのニュートンスタジオには、SYSTEM-700が2セットありました。やはりMC-8と組み合わせて、アルバム「ムーラントオブエイシア」「エイシアンウィンド」「ファーフロムエイシア」等の制作に使われました。

 なぜモーグではなくRoland SYSTEM-700だったのかをご本人にお聞きしたところ、「安かったから」(三百万円切っていた)との事でした。東さんはE-MUのシステムシンセもお持ちでした。

 1980年代初頭の喜多郎さんの公演で、通常、フライングジュピター用のRoland JUPITER-4が設置されている場所に、SYSTEM-100Mの5台のモジュール(内訳不明ですがおそらくDセット)が置かれている事がありました。コントロールキーボード184にはアルペジエータがあり、何らかの理由でJUPITER-4の代役を務めたのかもしれません。

 また、昭和55(1980)年9月16〜18日の渋谷PARCO公演を収めたライブアルバム「喜多郎インパースン」に、SYSTEM-700とMC-8、そしてこれらのマニピュレータとして、ローランドのあるスタッフの方のお名前がクレジットされています。

 長くなりましたが、以上、私がローランドのシステムシンセをどういう形で見聴きしたかを羅列しました。

 Roland AIRA SYSTEM-500は、ローランドが製造するのではなく、アメリカ・オレゴン州ポートランド市にある、MALEKKO Heavy Industryという、システムシンセサイザーのモジュールやコンパクトエフェクターのメーカーに委託するようです。同社サイトにはその事を示す画像や動画がアップされています。

 コルグの場合、シンセサイザー試作1号機やmini KORG 700800DVMS-20等の設計技術者の方が未だ役員をしている等、アナログシンセを製作する下地が残されていて、他社機であるARP ODYSSEYすら復刻する事に成功したのですが、あるいはローランドにはその人的な環境は残されていなかったのかもしれません。

 ただ、SYSTEM-500の姿や仕様は、ローランドの意匠に沿う形で具現化されたのではないかと思われます。それらがローランドのシステムシンセの遺風を、色濃く継承しているからです。

 SYSTEM-500の、2VCOモジュール512はSYSTEM-100Mの112、2VCFの521は121、2VCAの530は130、ENV/LFOの540は140、フェイズシフター/ディレイ/LFO/ゲートディレイの572は172に、各々該当すると思われます。

 いずれこれら以外のSYSTEM-100Mのモジュールも、SYSTEM-500で加わっていくのかもしれません。Roland SYSTEM-500を、事実上SYSTEM-100Mの復刻機とみなしてもよいのではないでしょうか。私としてはローランド伝統のベンダーレバー、アルペジエータ、そしてキーアサイナーを備えてポリフォニック使用にも対応した、要するにかつての184のようなコントロールキーボードも希望したいと思います。

 musikmesse 2015において、デジタルシンセながらパッチングが可能なアナログモデリングシンセモジュールRoland AIRA SYSTEM-1mや、同じくデジタルエフェクターながらパッチングが可能なモジュール群、BITRAZER、DEMORA、SCOOPER、TORCIDOが発表されています。musikmesse 2015では、これらのモデルとSYSTEM-500が一塊でマウントされていました。

 musikmesse 2015にしても、先のNAMM 2015にしても、デジタルシンセがソフトウェアに併呑されていく中で、実体を持つシンセサイザーの意義が、結局アナログだったり、パッチングだったり、マン/マシンインターフェイスにある事を、メーカーが意識している事を実感させられました。

 かつて大阪駅前第2ビルのローランドショールームで、山のように組み上げられたRoland SYSTEM-100Mにおそるおそる手指をのばした私みたいな元シンセ少年達にとって、「Roland SYSTEM-500」という名と、かつてのローランドシステムシンセを彷彿とさせる仕様やその姿は、認めたくはないものの我々の多少の“あの頃”への情緒と、手で触れて作りたいという欲求とに、訴求するものなのかもしれません。


平成27(2015)年5月24日追記。

 KYOTO FESTIVAL OF MODULAR 2015に、Roland AIRA SYSTEM-500が展示されていました。


AIRA Mdular
http://www.roland.co.jp/aira/airamodular/

MALEKKO AT MUSIKMESSE 2015
(MALEKKO Heavy Industryサイト。英文です。)
https://malekkoheavyindustry.com/malekko-at-musikmesse-2015/


平成27(2015)年11月20日追記。

 Roland AIRA SYSTEM-500シリーズが発表されました。

Roland SYSTEM-500 512 DUAL VCO
http://www.roland.co.jp/products/system-500_512/

Roland SYSTEM-500 521 DUAL VCF
http://www.roland.co.jp/products/system-500_521/

Roland SYSTEM-500 530 DUAL VCA
http://www.roland.co.jp/products/system-500_530/

Roland SYSTEM-500 540 Dual Envelope Generator + LFO
http://www.roland.co.jp/products/system-500_540/

Roland SYSTEM-500 572 Phase Shifter + Delay + LFO
http://www.roland.co.jp/products/system-500_572/

Roland SYR-E84 Eurorack Case
http://www.roland.co.jp/products/syr-e84/


MALEKKO Heavy Industry SYSTEM-500(英文)
https://malekkoheavyindustry.com/system-500/


平成27(2015)年12月3日追記。

 Roland AIRA SYSTEM-500各モジュールの価格が判りました。512 DUAL VCO、521 DUAL VCF、540 Dual Envelope Generator + LFO 42,120円。530 DUAL VCA 38,880円。572 Phase Shifter + Delay + LFO 46,440円。SYR-E84 Eurorack Case 52,920円。以上税込み、発売日12月24日予定。
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by manewyemong | 2015-04-16 21:23 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong