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SEQUENTIAL prophet-6試奏記

 implant4さんで、発売日翌日のSEQUENTIAL prophet-6を試奏させていただきました。

 私がimplant4さんをお訪ねした時点で、まだprophet-6は開封されてなく、試奏をお願いして、梱包を解き、設置していただいた後、最初に音を出したのは、implant4スタッフさんではなくこの私でした。本当にすみません。

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 prophet-6に関して、先のNAMM 2015での発表のおり、SEQUENTIAL prophet-6が出ますとして採り上げています。重複する部分も多々あるのですが、試奏しての雑感を記していきたいと思います。

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 各セクションのレイアウト、側面の化粧版、ロゴの字体に幻惑される面はあるものの、実物を前にしての外観の印象は、やはりシーケンシャルサーキット社(SEQUENTIAL CIRCUITS)とうよりは、デイブスミスインストゥルメント社(Dave Smith INSTRUMENTS)のシンセサイザーであるという事でした。

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 つまみやボタン類の形状は、元々デイブスミスインストゥルメント社のシンセがそうなのですが、prpphet-5、そしてそれに続くprophet-T8等prophetシリーズを意識したものになっていると思います。

 つまみのうち、最低値~0~最大値と変化するものは、0、すなわちセンター位置にクリック感があります。

 また、波形の種別等、選択用のつまみには、DEC(ディクリーメント)/INC(インクリメント)としての使い方を持たせる為にクリック感があります。

 昨今、選択の局面で、ボタンを押し送る形のモデルが多いのですが、prophet-6は選択操作子もつまみなので、選択の行きつ戻りつを発声そのものに反映させる事が可能です。

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 LEDの輝度が高い事も、私がprophet-6を気に入った理由の一つです。

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 ホイール近くの「SEQUEITIAL」(暗く写ってしまいました)及びフロントパネル右端の「prophet-6」のロゴは、ステッカーではなくアルミ製のプレートが接着剤で貼り付けられています。

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 リアパネル側の「SEQUENTIAL」「prophet-6」のロゴ。

 プレートではなくリアパネルに直にあります。

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 演奏や打ち込みに関わる部分を見ていきます。

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 鍵盤。ベロシティおよびアフタータッチが使えます。

 感触や静粛性から、Dave Smith Instruments POLY evolver PE keyboardPRO 2等と同じ鍵盤かもしれません。

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 裏におもりが装着されています。

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 ホイール。

 PRO 2と同じものと思われます。

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 アルペジエータ及びデジタルシーケンサー。

 アルペジエータのモード群のうち、アサインは押鍵順が反映されるようになっています。かつてRoland JUPITER-4、JUPITER-8のアルペジエータのアップ、ダウン、アップ/ダウンモード時、同じ事ができるようになっていて、喜多郎さんがフライングジュピターで使っていました。

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 アフタータッチはモノフォニック。デプスを最小値~0~最大値、つまり、マイナス側にもプラス側にも設定する事ができます。ディスティネーションは、オシレータ1のピッチ、同2、モジュレーションデプス、音量、そしてローパス/ハイパスフィルターの開き。

 ポリモジュレーションと併用する事で、効果に鍵盤を押し込む事によるリアルタイム変化を加える事が考えられます。

 アフタータッチ、ポリモジュレーション、LFOと、prophet-6はソース側からディスティネーションを指定します。これに対してARP ODYSSEYは、ディスティネーション側からソースを指定します。

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 オクターブトランスポーズボタン。

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 ホールドボタン、グライドレイトつまみ、グライドオン/オフボタン、ユニゾンボタン。

 グライドレイトのカーブが、アナログシンセっぽくないリニア変化のような気がしました。レイトが速い設定ならともかく、遅い場合、正直、私にとって使いづらいポルタメントです。

 グライドオンして、押鍵、あるいはホールドした状態でオクターブトランスポーズボタンを操作しても、1オクターブ上下へのグライドはかからず、オクターブのみが変化します。ARP ODYSSEY復刻機の場合、同じ所作でポルタメントをかけることができます(ARP ODYSSEY試奏記2参照)。

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 音色の選択は、一桁のバンクと二桁のプログラムを0~9ボタンを使って指定するのですが、バンクはバンクボタンを、プログラムの十の位はテンズボタンを押しながら、そして、プログラムの一の位は0~9のみを押します。

 音色選択で一つ気になった事なのですが、ENVがリリースタイム実行中に別の音色を選択すると、音色は瞬時に次の音色に変わり、前音色のリリースタイム実行を継承した形で鳴ってしまいます。これは特段珍しい事ではないのですが、それなりの価格であるprophet-6において、次の押鍵までは前音色を維持する、つまり、コルグの上級ワークステーション機のスムースサウンドトラジションのような機能があればなと思いました。

 アナログシンセサイザーにプログラマブル機能を希求する向きは、多くがライブ演奏を想定しての事ではないでしょうか。

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 フロントパネル上の音色設定に関するセクションを見ていきます。

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 ポリモジュレーション。

 prophet-5同様、ここが最もマニピュレーションで奏者やマニピュレータの発想力を発露させる事ができるセクションかもしれません。

 アニメーション映画「1000年女王」の、雨森始が永久管理人に連れられて1000年女王のマンションから地下大空洞へ、そしてモーターボートでさらにその地下の川を滑走し、ミライの案内で歴代1000年女王の墓所を往く、という場面展開の中で、喜多郎さんはそのBGMのほとんどを、propeht-5のポリモジュレーション機能を駆使した音色群で構成しました。

 prophet-6のプリセット音の中に、エディットすればそれらの音に近づくなと思えるものがいくつもありました。

 今回、墓所の場面で流れた古時計風の音を、prophet-6でかなり似せて作る事ができました。この古時計風のprophet-5の音、喜多郎さんの「ガンガ」(アルバム「天竺」より)で聴く事ができます。ちなみにガンガとはインドのガンジス川の事です。

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 内蔵エフェクター。

 アナログディストーションのデプス、そしてその右横にデジタルエフェクターの操作子群が並んでいます。

 空間系エフェクターの中には、アナログ遅延回路BBDを模したデジタルディレイがあります。

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 LFO。

 レイト、波形(三角波、鋸歯状波正逆、矩形波、ランダム)、デプス(0~最大値)、ディスティネーション(VCO1ピッチ、同2、パルスウィズモジュレーション、カットオフ)のみで、これまでのシーケンシャルサーキットやデイブスミスインストゥルメントのシンセ同様、ディレイタイムやフェイドタイムといった径時変化に関するパラメーターはありません。

 あるいは、prophet-6もLFOを発声数分積んでいないのかもしれません(アナログポリシンセのLFOをつぶやく参照)。

 デプスにマイナス値を設定できない場合、LFOの鋸歯状波は正逆欲しいところでしたが、prophet-5には上昇型しかありませんでした。

 SEQUENTIAL prophet-6が出ますでも書いたのですが、prophet-5のソースミックスに相当するセクションはありません。ノイズジェネレータがモジュレーションソースになる事は無いのですが、波形をランダムにし、レイトを上げ(速め)、デプスを深くするとノイズになっていきます。

 prophet-5のソースミックスのように、LFOとノイズの混ぜ具合を設定し、ホイールを介してディスティネーションに送るという事はできないのですが、波形にノイズを充てるのは可能という事です。ただし、この効果はソースミックスとは根本的に異なるという事を留意する必要があります。

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 VCO1、2。

 波形は単なる選択ではなく、つまみを回す事で、三角波〜鋸歯状波〜パルス波と、連続的に変化させていく事ができます。

 パルス波はLFOのディスティネーションでPWを指定されるとPWMになります。

 波形を右に回し切ってパルス波にし、パルスウィズを左か右に回し切ると、デューティー比0:100または100:0になり、音が聴こえなくなります。

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 パルスウィズがほぼ中央あたりで矩形波になります。

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 恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードを真似るヒントは、オシレータ1のみ使い、波形を完全にパルス波にして、パルスウィズを目盛3を若干過ぎるあたりにします。この辺りが3、6、9倍音が抜けるポイント、つまりパルス33%と思われます。音を聴いて慎重に設定してください。

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 VCF。ハイパスフィルター及びローパスフィルター。

 ENVデプスにベロシティをかけることができます。キーボードトラックは、オフ、中間値、最大値を、キーボードボタンを押し送る形で選択します。

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 VCF ENV及びVCA ENV。

 両者ともADSRタイプ。VCA ENVデプスのベロシティの可否及び感度はここで設定します。

 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5試奏記で、同機の性質で特に気に入った事の一つとして、アタックタイムを緻密に設定できる、を挙げました。時計の短針10時、つまり目盛4あたりでも打/撥弦系のアタック感だったのですが、prophet-6は、

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 0はもちろん、

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 1を過ぎるあたりでも打/撥弦系のアタック感であるものの、

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 それを過ぎると吹奏系になっていきます。

 他社のアナログシンセよりはかなり細かいのですが、それでもprophet-5、あるいはそのENVカーブを模したと思われるアナログモデリングシンセstudiologic sledgeほど緻密には設定できないという事です。

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 SEQUENTIAL prophet-6は、「SEQUENTIAL」「prophet」が冠され、仕様やプリセット音に明らかにprophet-5に対する意識が濃厚に働いているているものの、昨今続いているアナログシンセ旧機の復刻機とは、異なる位置にあるシンセサイザーのような気がしました。

 試奏中、喜多郎さんがprophet-5で出していた音を真似てひとしきり悦に入った後、「これ使って、またYAMAHA DX7やMIDIが出てくる前にやってたのと同じ事を始めるのかい?」という、prophet-6のこの個体の声を聞いたような気がしました。

 現行機においてARP ODYSSEY復刻機とならんでこのprophet-6は、私がいつも言っている
あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!
の誘惑をしてくるモデルだと思います。

 故に、将来幸運に恵まれてprophet-6を手にする事があっても、私自身の、今、ここでに、こだわった使い方をしたいと思います。

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 私としては、prophet-6からベロシティ、アフタータッチ、プログラマブル機能を省き、内蔵エフェクターを簡便な操作子に限ったモデルが出てくればなと思います。

 SEQUENTIAL prophet-6は、平成27(2015)年7月1日発売されました。価格は429,800円(税込)です。


SEQUENTIAL prophet-6
http://www.fukusan.com/products/DSI/prophet6.html

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by manewyemong | 2015-07-03 10:53 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong