Roland SH-2試奏記
未調整のようで、在庫リストへのアップは先の話と思われます。また、後述しますがこの個体にはMIDI対応の改造が施されています。
キーアサイナー方式のポリフォニックシンセが一般化する直前であり、各社が、10万円前後、あるいはそれを切る価格の、当時の言葉でいえばリードシンセサイザーに力を入れていた時期でした。
YAMAHA DX7が出るまで、シンセ関連のムック本や雑誌の音色設定の記事は、KORG MS-20、YAMAHA CS-10やCS-15、そしてこのRoland SH-2のフォーマットで書かれている事が多かったのは、これらが世に多く出回っていた事を物語ると思います。
その操作子群も大きめのスライダーで、形状も手指につまみ易いものだったと思います。ただ、上げ下げの感触がとにかく固く、各パラメーターの値を素早く目指す位置へ持っていくのに、手指に緊張感を持たせてしまい、雑になりがちでした。故に操作感に関して、当時私はYAMAHA CS-10、CS-15に及ばないという評価を下していました。この点は、続くRoland SH-101が解消してくれました。
一番上の波形は三角波ではなくサイン波です。
ビブラートデプスは、モジュレーションに関する専用のコントローラーが無いSH-2にとって、演奏操作子でもあります。
オートベンドは、押鍵の音程より下からしゃくり上げるタイプです。
パルスウィズの変化は、JXシリーズをのぞくローランドの昭和アナログシンセ及びRoland JP-8000、JP-8080に共通していると思われます。その理由は、これまでいくつかのローランドシンセを試奏してきて、後述する喜多郎miniKORG 700Sリードのパルスウィズの設定値が、このSH-2、SH-101、JUNO-6、JUPITER-6、はては平成のデジタルシンセJP-8000までが同じだったからです。
矩形波とパルスウィズを下げ切ったパルス波に、差異は全く感じられませんでした。
マスターチューンのつまみはこのセクションにあります。小さいです。ただ、SH-2のピッチは素晴らしく安定しているので、このつまみを頻繁に使うという事はなさそうです。
波形の中にサイン波があります。VCOのサイン波は、VCFを自己発振させて出すサイン波よりも温かみがあり、よくボーカルナンバーのイントロや間奏のリード音に使われています。テルミンの妖しい冷たさを模する場合、VCFの自己発振の方が効果的です。
VCO1にはピッチベンドを無効化するスイッチがあります。VCO2だけにベンドをかけるという演出が可能です。
波形にホワイトノイズがあります。
VCO1とのディチューンのための、VCO-2チューンという小さなつまみがあります。また、チューンレンジスイッチによって、このレンジを繊細にも大きくも設定できます。
SH-2のVCOはピッチが本当に素晴らしく安定しているのですが、なまじ安定しているが故に、VCO1/2のディチューンを完全に解消にしてしまうと、互いを打ち消し合い(マスキング効果というのでしょうか)発声がおかしくなります。アナログながら繊細なディチューンができるというのは、SH-2独特の厚みを得る事ができる理由の一つかもしれません。
VCO1、2及び1オクターブ下の矩形波を加えるサブオシレータのレベルを設定します。
SH-101のソースミキサーと異なり、ここにノイズジェネレータはありません。
ローパスフィルターのみです。
ENVデプスの正逆は、ポラリティスイッチで切り替えます。
エンベロープフォロワは、リアパネルにあるエクスターナルインから入ってきた音声信号の大きさでカットオフを変化させる事ができます。
レゾナンスを上げ切ると自己発振します。またこのおり、キーボードフォローを最大値にすると音階が平均率になります。
ホールドボタンはここにあります。
トリガーモードは、マルチ(GATE + TRIG)、シングル(GATE)とも設定できます。また、LFOのレイトに同期してENVを繰り返す(LFO)もあります。
「SYNTHESIZER」の部分の字体は、1970年代のローランドシンセによく使われていたのですが、「オレたちひょうきん族」に登場したYMOの偽物が弾いていた、たしかPolandなるメーカーのシンセサイザー?のリアパネルのロゴが、この字体でした。
この字体、後にRoland SH-32、そして、studiologic sledgeでも見る事ができます。
ベンダーレバーのピッチ変化の最高値(ニュートラル位置から右へ倒しきる)が、1オクターブ以上あるか否かを試すのを忘れました。
モジュレーションに関するコントローラーは無く、ビブラートはVCOの、グロウル効果はVCFの、各々モジュレーションデプスのスライダーを演奏操作子として使わなければなりません。
姫神の公演で姫神・星吉昭さんがRoland SH-2を演奏する時、左手がベンダーレバーの操作以外にフロントパネル上を頻繁に動いているのを見たのですが、あるいはこういった事にお使いだったのかもしれません。
ポルタメントにはオンオフが無く、PSE騒動の頃に試奏したSH-2やSH-09の中には、ポルタメントのスライダーを下げ切ってもポルタメントがかかってしまうものを何台か見ました。今回の個体にはその現象はありませんでした。
ベンダーレバーとポルタメントの操作子が近くにある事は、ポルタメントをフットスイッチでオンオフできないモデルの場合、本当にありがたい事だと思います。
この時代のシンセサイザーの常として、静粛性に優れてるとは言い難いものでした。
VCFで触れたエクスターナルイン、CV、音声出力関係が並んでいます。
向かって左側がMIDI IN、右がTHRUです。
implant4さんでは、将来このMIDI化改造を請け負う可能性があるとの事でした。あくまで、可能性、です。
以下、ある三つの音色設定のヒントを記します。
基本的にはVCO1の矩形波のみなのですが、「大地炎ゆ」(アルバム「北天幻想」より)や「海道を行く part 1」(NHK「ぐるっと海道3万キロ」オリジナルサントラ盤「海道」より)の場合、VCO2も使います。ミキサーのレベルはVCO1、2同じで良いのですが、ディチューン(VCO2チューン)の設定を一考してください。ディチューンし過ぎると、この2曲のメロディ音の雰囲気から乖離してしまいます。
VCOはどちらも鋸歯状波。輪郭がぼやけているのにコシがあるSH-2の特長が堪能できます。この音色もディチューンの設定を一考してください。さらにサブオシレータ(1オクターブ下の矩形波)も加えます。「ブーワワワワワーン」の「ワワワワワ」の部分は、ベンダーレバーを左右に揺らします。
SH-2の中古価格や操作子の固さ故に、私が導入するとしたら、SH-2 PLUG-OUTの方になると思います。
by manewyemong
| 2015-11-04 10:51
| シンセワールド
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