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KORG minilogue試奏記(2)

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 KORG minilogue試奏記(1)の続きです。シンセサイザーエンジン部分について触れていきます。

 まず驚いたのが、各パラメーターが4桁あり、微細な設定が可能だという事です。

 私はアナログシンセサイザーはプログラマブルではない方が良いと思っているのですが、その理由はプログラマブル化する事によって、各パラメーターの変化のキメが荒くなる事を危惧するからです。しかしながら、ワークステーション機をも凌ぐきめ細かさ故、minilogueに関しては杞憂だと思います。

 KORG minilogueはキーアサイナー方式の4声ポリフォニックシンセであり、1声は2VCO、1VCF、1VCA、1LFOで構成されています。

 かつて、アナログポリシンセのLFOをつぶやくで、アナログシンセ時代、ポリフォニックを謳いながら、ポリフォニックシンセのLFOが発声数分ではなく一つしか載っていないことについて触れたのですが、公開されているブロックダイアグラムを信じる限り、minilogueには4声分あるという事になります。

 もし4声分無ければ、例えばLFOのレイトにEGで径時変化を付けた音色でボイスモードをディレイにした場合、四つの発声毎に全声にLFOのリトリガーがかかる故に、径時変化がやり直されてしまいます。

 遺憾ながら、今回の試奏の折、この事に関するチェックを忘れてしまいました。次の機会にと思っています。

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 オクターブキートランスポーズや、

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 VCO1、2のオクターブは、ボタンで押し送るのではなく、レバーで選択できるので、演奏操作という形でオクターブを変える事ができます。

 オクターブトランスポーズスイッチの操作は、押鍵した状態では発声に反映されず、次の押鍵からオクターブが変わります。したがって、ARP ODYSSEYとは異なり、押鍵状態でポルタメントをオンにし、オクターブトランスポーズを操作しても、オクターブポルタメントをかける事はできません。

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 オシレータはVCOで、チューニングの安定度は流石にDCOのようなわけにはいかないのですが、シフトキー+RECボタンを押すと、画面上にチューニング中である事を示すメッセージが表示され、終わると消えます。10余秒かかったと思います。

 VCO1、2の波形は、鋸歯状波、三角波、パルス波。

 コルグのアナログモデリングシンセのオシレータのコントロール1に相当する、シェイプというパラメーターによって、パルス波のパルスウィズのデューティー比を変える事はもちろん、鋸歯状波や三角波も変調する事ができます。

 シェイプが0で純粋な鋸歯状波、三角波、そしてパルス波はデューティー比が50:50の非対称矩形波、つまり矩形波になります。

 鋸歯状波のシェイプを最大値にすると、

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 なぜか矩形波になりました。

 minilogueで恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードを真似てみたのですが、シェイプの位置をKORG MS-20 miniのPWと同じく時計の短針10時過ぎでポイントを探すと似ました。シェイプのバリューはパルスウィズの%と合致しているのですが、パルスウィズ330ときちんと設定した時点で最も似ます。この値が、

幅の比によって倍音構成が大きく変化する、上部の幅が全体のn分の1の時n倍音系列が欠落するという性質があり、33%の場合、3、6、9倍音が抜ける

ポイントなのだと思われます。

 また、パルスウィズが1000を超える(最大値は1023)と、音が聴こえなくなります。

 シェイプにEGによる径時変化を加えることはできません。LFOによる周期変化だけです。

 VCOのオクターブスイッチは、先に触れたオクターブトランスポーズスイッチとは異なり、押鍵した状態でも変更が、即、発声に反映されます。

 VCO2をVCO1へのモジュレータにしてクロスモジュレーションやシンクロ、リングモジュレーションをかける事ができます。

 VCO2にのみ、ピッチにEGをかける事ができます。もちろんオートベンドとして使えますが、むしろクロスモジュレーションやシンクロ使用時の径時変化でユニークさを発揮すると思います。

 オシレータミキサーはVCO1、2各々のレベル、そしてホワイトノイズのレベルを設定します。VCO1/2のバランスではないところがミソです。

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 VCFはローパスフィルターのみで、2ポール、4ポールの選択ができます。

 レゾナンスを上げていくと自己発振します。オシレータミキサーがVCO1/2の割合ではなく各々のレベルである、つまりVCOを使わない選択が可能です。したがって、VCOのパルスウィズ(シェイプ)のデューティー比を100:0にしてVCOを聴こえなくする必要はありません。

 VCFと接続されたEGがあり、EGデプスを0にする事で事実上接続を解除する事ができます。また、マイナス値もあるので、リバース曲線にすることもできます。EGデプスつまみのセンター位置にクリック感は無く、感触で−/0/+の分水嶺を探ることはできません。しかしながら、画面に0%が出るので視認することはできます。

 VCFには3段階変化ですが、キーボードトラックがあります。VCFの自己発振でスケールをドレミ…つまり平均律に設定する場合、100%を選びます。

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 これが私が思うminilogueのウィークポイントの一つなのですが、VCA EGは、文字どおりVCA専用、音量の径時変化のソースのみで、VCFと共用する事ができません。

 例えば、EGを、ビブラートデプスの径時変化等、他の事と共用できないような目的に回した場合、VCFのカットオフポイントは発声の始端から終端まで変化させる事ができなくなります。

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 VCA EGの下のEGは、ディスティネーション側のオン/オフやデプスの設定で、ソースとして使用できます。

 minilogueの価格帯のプログラマブルアナログポリフォニックシンセで、VCF/VCA個別にEGを設定できるのは画期的な事です。昭和58(1983)年秋、KORG POLY-800が100,000円を切って以来の快挙だと思います。POLY-800の場合、EGはADSRではなく、より複雑な設定ができるADBSSRですけどね。

 VCA EG、EGともに、パラメーターのきめ細かさと併せて、SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5とまではいかないものの、アタックタイムの変化のカーブがこれまでのコルグのアナログ/アナログモデリングシンセよりも緩やかなので、吹奏、特に金管系の設定を緻密に行えます。時計の短針でいえば8時あたりでも「コツッ」という感触が残っています。

 また、リリースタイムも同じく緻密な設定ができるカーブです。リリースタイム0にすればハサミで切ったような終わり方になるのですが、このバリューを少々あげてもタッチノイズが入らない形で歯切れよくEGの実行を終了させることができます。

 EGは私にとって最も重要なパラメーターですが、minilogueはこの点でも気に入りました。

 LFOの波形は、下降型鋸歯状波、三角波、矩形波で、サンプル&ホールド、ランダム、ノイズの類はありません。また、デプスにマイナス値を設定できないので、上昇型鋸歯状波はありません。

 EGをLFOデプスの径時変化に充てる事ができるのは珍しくないのですが、minilogueはLFOのレイトのソースにも使う事ができます。

 LFOはEGと異なり、ソース側(LFO)からディスティネーションを選びます。ただし、ディスティネーションを、カットオフフリケンシー、VCOのシェイプ、ビブラートデプスのうちのどれか一つしか選ぶ事ができません。ディスティネーションの中にVCAはありません。

 内蔵エフェクターとしてディレイがあります。ディレイタイム、フィードバック数に加えて、ハイパスフィルターがあります。

 minilogueのパラメーターには概ね専用の操作子があるのですが、一部デジタルアクセスコントロール、つまりエディットモードに入って設定する必要があります。例えば、スライダーのディスティネーションの選択(一つのみ)、左右個別のベンドレンジ等々。

 その中の一つ、ポルタメントは、タイムを、オフ、0~127の範囲で設定できます。また、レガートの時のみポルタメントがかかるオートモードもあります。

 大変遺憾ながら、minilogueのポルタメントのカーブは、多くのアナログシンセのような、始まりは速く、そして実行終了が近づくにつれて遅くなっていくフィーリングではなく、デジタルシンセのようなリニア変化です。考えようによっては、VCOのポルタメントをリニア変化でかける事ができるのは画期的な事ともいえます。

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 KORG minilogueは、低価格のプログラマブルポリフォニックアナログシンセサイザーながら、豊富なパラメーターを持っています。ただ、いくつか触れたように、意外にかゆい所に手が届かない面もあります。

 KORG minilogueに、KORG MS-20 miniARP ODYSSEYを併せると、私の中でうまい具合にピースが揃って、楽音用のシンセサイザーのパズルが完成する感があります。

 あるいはコルグさんは、それを企図した製品開発を行っているのかなと思ってしまいました。


KORG minilogue
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/minilogue/

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by manewyemong | 2016-02-22 10:17 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong