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moog MOTHER-32試奏記

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 平成28(2016)年3月25日、moog MOTHER-32が発売されました。価格は79,488円(税込)。

 moog WERKSTATT-01 MOOGFEST 2014 Kitの時も思ったのですが、モーグのシンセサイザーを10万円を切る価格で買える時代が来る事を、MIDIもYAMAHA DX7も登場していなかったあの頃、全く想像していませんでした。隔世の感があります。

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 わずかな時間であり、一切パッチングをしなかったものの、moog MOTHER-32を試奏してきました。本体のフロントパネルに白鍵黒鍵のように配された13個のボタン型鍵盤による発声のみ試しました。

 既に公開されている日本語の取扱説明書を参考にしつつ、記したいと思います。

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 minimoog VOYAGER XLやKORG MS-20 mini等のセミシステムシンセと同様、パッチングの端子群がパッチパネルという形で集約されています。

 この端子群は、32個あります。moog MOTHER-32の名の由来かもしれません。

 端子のうち、白い文字で名称が書かれているものは、ディスティネーションへの入力、白地の黒文字はソースからの出力です。

 出力、つまりソースの中に、アサイン(アサイナブルアウトプット)という端子があります。様々なソースをこの端子へ充てる事ができるのですが、中には内蔵シーケンサーを走らせると、ステップ1〜最終ステップで、ランプ波(傾斜波)、鋸歯状波、三角波、ランダムの1セグメントといった形で電圧を変化させるものがあります。

 WERKSTATT-01にも似たものが載っていたのですが、フロントパネル下方に、白鍵黒鍵のように配された13個のボタン型鍵盤があります。moog MOTHER-32本体での試奏はこれで行う事ができました。

 白鍵にあたるボタン鍵盤の下にある八つのランプは、内蔵シーケンサーの実行ステップの所が灯るようになっています。

 また、このボタン型鍵盤群の左横に、オクターブの状態を示す八つのランプと、オクターブトランスポーズの操作子である左右二つの矢印ボタンがあります。

 発声中にこのボタンを操作した場合、発声が途切れるか否かをチェックし忘れました。

 VCOは一つ。フリケンシーつまみで上と下にピッチを約1オクターブチューニングできます。“約”とした理由は、センター位置から左端右端とも若干1オクターブよりはみ出る、つまり余裕を持たせているという事です。

 ポルタメントはオン/オフは無くグライドつまみがあるだけです。カーブはリニア変化ではなく、アナログ的な始めは速くてだんだん間延びしてくれるタイプでした。

 波形は、トグルスイッチで鋸歯状波かパルス波かどちらか一つを選択します。ただ、ここで選択したのと反対の波形を、パッチパネルのVCO鋸歯状波/パルス波端子からパッチコードを引いて音声入力端子へ送り、ミックスつまみで波形のブレンド具合を設定することができます。

 発声中にトグルスイッチで波形を変えた場合、音が途切れるか否かのチェックを忘れました。

 パルスウィズ(取扱説明書ではパルスウィズでもパルスワイズでもないパルス・ウィズスという珍しい表記が為されています)を調整するつまみがあります。センター付近で矩形波になり、最大値だけではなく最低値でも音が聴こえなくなります。

 VCOモジュレーションソースは、VCOの変調をLFOかEG/外部入力かをトグルスイッチで選択します。どれか一つだけという事です。後者を選んだ場合、パッチパネルのVCOモジュレーション端子に、外部ソースからのパッチケーブルが引かれていれば、それがVCO変調のソースになります。

 VCOモジュレーションアマウントつまみでデプスを設定します。

 VCOモジュレーションのディスティネーションとして、ピッチ(フリケンシー)かパルスウィズかを選択します。

 LFOはレイトと波形(矩形波/三角波)を設定します。正逆鋸歯状波はありません。

 LFOの矩形波、三角波は、パッチパネルにソースとしての出力端子もあります。

 VCFはハイパスフィルター、ローパスフィルターがあり、どちらかを選択します。

 カットオフフリケンシーの変調のソースとして、EG(径時変化)かLFO(周期変化)かを選びます。変調の効果の深度はVCFモジュレーションアマウントつまみで調整します。また、この効果の正逆をポラリティスイッチで選択する事もできます。

 レゾナンスを上げていくと自己発振します。VCOの波形にパルス波を選び、パルスウィズを最低値か最大値に設定するとVCOを黙らせる事ができます。

 VCFの自己発振させた音を平均律で鳴らす方法は、パッチパネルのキーボードアウトとVCFカットオフを、そして、VCF端子と音声入力を接続します。これはあくまで、moog MOTHER-32のボタン型鍵盤でのお話です。

 moog MOTHER-32のEGは、アタックタイム、サスティン(オン/オフ)、ディケイタイムで構成されています。サスティンスイッチをオン状態にすると、押鍵中、アタックレベル(最大値固定)が維持され続けます。オフの場合、アタックタイム実行終了後すぐにディケイタイム実行に入ります。

 VCAモードのトグルスイッチは、音量に径時変化(EG)を付けるか、あるいはARP ODYSSEYでいうVCAゲインを最大値に設定したのと同じ状態、つまり音声信号が常時最大値で通り続ける、要するに鳴りっ放しにするかの選択をします。

 今回、内蔵シーケンサーを試す事ができませんでした。いずれ機会があればと思っています。

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 手のひらに乗る小型の廉価機とはいえ、モーグらしいつまみやその周りの目盛り、古めかしい感じのトグルスイッチ、側面の木の化粧板等、愛嬌の中にそこはかとなく風格を感じてしまいました。

 複数のオシレータをディチューンしてアンサンブル感を出すといった事をあまりしない身には、minimoogの三つのVCOのうち、VCO2を使う事が滅多にない(VCO3はLFOとして使う)のですが、moog MOTHER-32は1VCOながら、パッチングを併用して二つの波形を採る事ができるという点も気に入りました。

 カットオフやEGの各タイム等、私が所有している比較的古い形式のminimoogとは異なり、もっと素直に変化してくれました。そのシンセ独特の妙味とやらを、単に奏者やマニピュレータの音色の発想の具現化を阻害する要因としかみない私には、安心して使えるアナログシンセだと思いました。

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 セミシステムシンセながらも、基本的にパッチングせずとも単体で音色を作る事ができるmoog MOTHER-32は、ユーロラックのシステムシンセを始める橋頭堡(きょうとうほ)、つまり初めの第一歩として、Roland AIRA SYSTEM-1mとならんで適当なモデルかもしれません。


平成28(2016)年9月1日追記。

 implant4さんで撮らせていただいた画像を添付いたしました。


平成28(2016)年11月7日追記。

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 平成28(2016)年11月4日から6日まで東京ビッグサイト催された2016楽器フェアで撮影した、moog MOTHER-32三連装の画像を載せました。


moog MOTHER-32

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by manewyemong | 2016-04-05 20:18 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong