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Roland Boutique JX-03試奏記

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 implant4さんで、アナログモデリングシンセサイザーRoland Boutique JX-03を試奏させていただきました。

 既にimplant4さんの在庫リストに載っています。発売から日が経っていない事もあり、美品でした。

 Boutiqueシリーズに関して、Roland Boutique JP-08、JX-03、JU-03が出ますRoland Boutique JP-08試奏記Roland Boutique JU-03試奏記で採り上げています。

 新発売時のアナウンスにもあったとおり、Boutiqueシリーズは数量限定生産であり、既に製造は終了しています。しかしながら平成28(2016)年8月22日現在、少なくとも国内のいくつかの楽器店さんで、Boutiqueシリーズ3機種の新品購入が可能です。

 Roland Boutique JX-03をについて記していきます。Boutique JX-03の元になったアナログシンセサイザーRoland JX-3Pに関して、Roland Boutique JP-08、JX-03、JU-03が出ますで少し触れています。

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 JX-03フロントパネル全景。

 二つのリボンコントローラー、JX-3PというよりPG-200を彷彿とさせる音色設定操作子群、横一列に並んだボタン群から成っています。

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 JP-08がENVが二つある等パラメーターが多い事と、元になったアナログシンセRoland JUPITER-8がそうであった事を以って、音色設定操作子にスライダーが採られています。その小ささ故に、演奏中、頻繁に音色設定操作子に触れる向きには、やや操作がしづらいかもしれませんが、JX-06のツマミは比較的その事に耐えうるのではないかと思います。

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 リボンコントローラー。

 左のリボンコントローラーC1はピッチベンド、右のC2はモジュレーションの操作子です。

 演奏操作子だけでなく、他のボタンとの組み合わせで音色設定操作子にもなります。

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 二つのオシレータ。

 JX-3Pのものに、サイン波、三角波、そして、オシレータ1にはピンクノイズ、オシレータ2にホワイトノイズが加わっています。JX-03のフィルターは自己発振しないので、サイン波はオシレータのものを使う事になります。

 通常、二つのオシレータのオクターブやチューニング、波形を完全に同一にした場合、干渉し合う現象が出るのですが、JX-03はやや音量が大きくなる以外、単に一つのオシレータが発声しているような状態になります。クロスモジュレーションのシンクロがオフの状態であってもです。

 二つのオシレータ個別に、LFO、ENVをかけるか否かのを設定できます。特にクロスモジュレーションの設定をより複雑にする事ができます。

 クロスモジュレーションの効果の種類が、シンクロ、メタルとも二つに増え、さらにリングモジュレーションが加わっています。JX-3PからJX-03への最大の変更点だと思います。オシレータ波形の増装と併せて、クロスモジュレーションの可能性が広がったと思います。

 JX-3PはDCOのシンセサイザーとしては、初めてクロスモジュレーションを搭載したアナログシンセであり、当時、他機種とは異なる安定感のあるクリアな金属的な音を出せたので、楽器店で触れるおり、それっぽい音ばかり作っていました。今回、試奏しているうちにその頃作った音の事が思い出されたのですが、違和感なく再現できました。そういえば、Roland JX-3Pが現行機だった頃、楽器店の店先にあった展示機には、たいていPG-200が装着されていました。

 JX-3PはDCO2にのみパルスウィズを設定する事ができました。ソースミックスをDCO2側に振り切る、つまりDCO2のみ聴こえるようにし、クロスモジュレーションをシンクロ、チューンつまみでデューティー比を決める、という流れなのですが、JX-03の取扱説明書にはその記述がありません。この方法が使えるか否か試す事を忘れました。

 ビブラート及びENVのデプスは二つのオシレータで共用します。ENVはリバース曲線をかける事もできます。

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 フィルター。

 JX-3Pに倣って「VCF」と表記されていますが、無論フィルターはデジタルです。

 オシレータ1と2のバランスはこのセクションのソースミックスで決めます。双方のレベルを個別で設定できないシンセの常として、JX-03のフィルターは自己発振しません。

 ENVデプスはリバース曲線をかける事ができます。

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 JX-3P(というよりPG-200)、JX-03は、ローランドのアナログ、アナログモデリングシンセでは珍しく、周期変化、径時変化のセクションが隣り合って配されています。 

 LFOの波形に関して、JX-3Pのものに加え、正逆鋸歯状波、ノイズがあります。

 最近のアナログ及びアナログモデリングシンセでは珍しいのですが、フェイドインタイムではなくディレイタイムがあります。しかしながら取扱説明書の記述を読むと、これがフェイドインタイムのように書かれています。今回試したところ、やはり押鍵から効果が始まるまでの時間、ディレイタイムの設定でした。ちなみにJX-3Pの取扱説明書にはそう書かれています。

 私としてはここにあるパラメーターはフェイドインタイムよりディレイタイムの方がありがたい。押鍵から一定時間モジュレーションがかからない期間が必要だからです。ここも、私がRoland Boutique JX-03の仕様を買っている理由の一つです。

 アナログシンセのモジュレーションに関して、ディレイタイム実行終了と同時に設定されたモジュレーションデプスがかかるのではなく、若干のフェイドインタイムに類する効果がありました。理由は、アナログシンセの構成が、仮にソース側がデジタルであってもディスティネーション側が電圧制御故に、効果が必ず0から始まるだからと思われます。もちろんその時間を、奏者やマニピュレータの意図を呈する形で設定する事はできません。ワークステーション機の場合、ディレイタイムのみを設定しフェイドインタイムを0にすると、変調の効果に唐突感が出てしまいます。

 ちなみにBoutique JP-08のLFOのディレイタイムは完全なフェイドインタイムでした。

 LFOが発声数分、つまり4つあるか否かの調査を忘れました。ディレイタイムを設定して、1声づつ全4声押鍵していった時、押鍵の都度リトリガーされるのであれば一つしか載っていないという事になります。多くのアナログポリフォニックシンセがこれにあたるという事を、アナログポリシンセのLFOをつぶやくで記しました。

 ENVは一つ。オシレータ、フィルター、アンプで、この一つのENVを共用しています。


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 音色設定操作子群の下に、A~Cのバンクボタンと、1~16のパッチボタン、コーラスボタン、マニュアルボタンが、横1列に並んでいます。音色のの呼び出し以外に、これらのボタン群の組み合わせで様々な設定をします。

 JX-3Pのフロントパネル奏者寄りの部分に、これらに相当する金属製のボタン群が並んでいたのですが、それらが錆びた中古機を割と早い段階(20世紀末)でよく見かけました。

 ポルタメントのオン/オフを、コーラスボタン + リボンコントローラーC1で行います。JX-03のトグルスイッチのことごとくが、上げるとオン、下げるとオフなのと同様、C1の上の方を触れるとオン、下の方だとオフになります。

 ポルタメントタイムはコーラスボタン + リボンコントローラーC2で入力します。C2の上の方を突くほど長くなります。スライダーを上げ下げする要領でC2を上下にドラッグする事で、ポルタメントタイムをリアルタイムに変更する事ができます。

 JX-03のポルタメントのカーブは非リニア変化です。昨今はアナログシンセKORG minilogueSEQUENTIAL prophet-6等ですらリニア変化。VCOでのリニア変化はそれはそれで画期的な事なのかもしれませんが、ワークステーション機をはじめ多くのデジタルシンセがリニア変化である以上、非リニア変化を、できればポリフォニックで欲しいところでした。

 YAMAHA reface CSのポルタメントのカーブは、 かつてのYAMAHA CS-5CS-15等を彷彿とさせる素晴らしいものなのですが、あくまでモノフォニックのポルタメントです。

 Roland Botique JX-03、JU-06は、非リニア変化のポリフォニックポルタメントがかけられるシンセサイザーの歴史上、最も安価な製品である可能性があります。

 内蔵エフェクターには、コーラス、そして、JX-3Pには無かったデジタルディレイがあります。

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 コーラスはコーラスボタンでオン/オフするのみですが、マニュアルボタン + 12でコーラスエフェクトに混ざるノイズを選択することができます。1がオフ、2がハーフ、3がオリジナル。

 ディレイは、マニュアルボタン + 14で元音とディレイ音のバランス、マニュアルボタン + 15でディレイタイム、マニュアルボタン + 16でフィードバック数を選択します。これらパラメーターを選択した後、マニュアルボタンを押したまま1~16ボタンを選択する事でバリューを入力します。16段階の設定という事です。

 16ステップシーケンサーは、試し忘れました。


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 リアパネル側。

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 Micro USB、ヘッドフォン、音声出力、音声入力、の諸端子群及びマスターボリューム。

 USBはMIDIだけでなく音声も扱う事ができます。音声出力はステレオ。音声出力、ヘッドフォン端子ともミニプラグです。音声入力はここから入れた音声信号をJX-03で加工するといったものではなく、音声出力やヘッドフォン端子から出力されます。

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 MIDI OUT、IN端子、「RRoland」のロゴ。

 国産MIDIシンセサイザーの歴史が、Roland JX-3PとJUPITER-6から始まった事を考えると、今、こういう形でJX-3Pが復刻された事に感慨深いものがあります。

 発声数が4である事等、Roland AIRA SYSTEM-1に準拠している感があるので、あるいは、Rolnad Boutiqueに関してPLUG-OUT化があるのではないかと思っています。しかしながら、二つのリボンコントローラーや、何より各シンセのパラメーター構成に則った姿をしているBoutiqueは、今、製造を終えるのは惜しい気がするシンセサイザーです。

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 製造が終わった後に、世間から絶大な評価が下されるという体験を、ローランドさんほど味わい続けているシンセサイザーメーカーはないと思うのですけどね。


Roland Boutique JX-03
https://www.roland.com/jp/products/jx-03/

Roland Boutique
https://www.roland.com/jp/promos/roland_boutique/

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by manewyemong | 2016-08-23 10:10 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong