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Roland AIRA SYSTEM-8試奏記

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 implant4さんで、アナログモデリングシンセサイザーRoland AIRA SYSTEM-8を試奏させていただきました。中古機ながら、箱から出したばかりの新品としか思えない美品でした。調整する部分が無いと思われるので、次回の在庫リスト更新時にアップされるかもしれません。

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 平成28(2016)年9月のRoland AIRA SYSTEM-8発表時、Roland AIRA SYSTEM-8が出ますという記事を上げています。

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 筐体は1970年代末のローランドをはじめとする国産アナログシンセの廉価機のようなつや消し黒。つまみやスライダーといった操作子群は、AIRAシリーズの伝統ともいうべき緑色にライトアップされています。

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 これらの操作感は、単に音色設定の操作子ではなく、演奏操作子として奏者の表現に組み込めるものだと思いました。

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 ベンダーレバー、ベンドレンジ及びモジュレーションデプス。

 ベンダーレバーのそばにベンドレンジ及びモジュレーションデプスの各々の専用操作子が設けられているモデルは、久方ぶりと思われます。Roland JUNO-6SH-101の頃、演奏中にベンダーレバーを操作しながら頻繁にこれらの設定を変えていた身には、これもありがたい事だと思います。ベンドレンジのダウン/アップ個別の設定はできません。

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 鍵盤。ベロシティが使えます。アフタータッチはありません。

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 裏に錘(おもり)は貼られていないものの、ローランドらしい剛性がある鍵盤です。Roland FA06と同じもののような気がしました。静粛性についてはわかりませんでした。

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 フロントパネル全景。

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 アルペジエータ、コードメモリー、オクターブトランスポーズ、キートランスポーズ。

 アルペジエータのモードにランダムが無い事、また、押鍵順が反映される機能が無いので、喜多郎さんがRoland JUPITER-4で行っていたフライングジュピターはできません。

 コードメモリーは、1つの鍵盤を押すだけで平行和音演奏できる機能。古くはKORG PolysixMono/Polyの頃からありました。ローランドの場合、αJUNOに搭載されて後、21世紀に入ってからRoland SH-32で復活しました。

 SYSTEM-8のコードメモリーは、Roland Fantom XJUNO-GFAといったローランドワークステーション機と異なり、ベロシティで構成音の発声のタイミングをずらすといった設定はできません。

 コードを押鍵してコードメモリーボタンを押すとコードが記憶されます。ホールドボタンを押して構成音を1音づつ鳴らしてコードを発声させ、その状態でボタンを押して記憶させる事ができるか否かを試し忘れました。先に挙げたコルグのシンセ群のコードメモリーはそれが可能でした。

 キートランスポーズは、アナログシンセ時代に私が使ったJUNO-6、SH-101等は、キートランスポーズボタンを押して目的のキーに該当する鍵盤を押すと移調できたのですが、SYSTEM-8はトランスポーズボタンを押しながらダウン/アップを押して、半音づつ下げ上げして目的の調を設定します。

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 パッチ/パフォーマンスモード、マニュアル、ポルタメント、テンポ。

 パフォーマンスモード時、発声させるパッチ、エディットするパッチを選択します。

 マニュアルボタンは、選択したパッチではなく、操作子群の現状を発声に反映します。

 ポルタメントにはオン/オフボタンは無く、最小値がオフで、0ではなく1からバリューが始まります。オフと0の区別が無いという事です。ポルタメントのカーブのフィーリングは、たいへんありがたい事にアナログシンセ的な非リニア変化です。

 テンポつまみでステップシーケンサー及びアルペジエータのテンポを設定します。またこのテンポは、LFOのレイトと同期させる事ができます。

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 キーアサインモード、SYSTEM-8/PLUG-OUT、ユーティリティ、画面、デジタルアクセスコントロール入力操作子。

 モノボタンを押し送る形でキーアサインモードを設定します。点灯ならモノフォニック、点滅ならユニゾン、消灯でポリフォニックです。モノフォニック時のトリガーモードのシングル/マルチをどこで設定するのか、あるいはどちらかしか無いのかを調べ忘れました。

 SYSTEM-8は本来のシンセエンジンであるSYSTEM-8以外に、PLUG-OUT JUPITER-8、PLUG-OUT JUNO-106が付属します。加えてもう一つPLUG-OUTを持つ事ができます。SYSTEM-8、PLUG-OUT1、2、3ボタンで選択します。

 メニューボタンを押して、矢印ボタンを操作する事でユーティリティを選択します。SYSTEM-8の外部記憶装置であるSDカードドライブの操作等があります。

 SYSTEM-8のシステムがver.1.11になってから、目的のパラメーターの専用操作子を動かしてエンターボタンを押すと、その設定が表示され続け、さらにバリューつまみで1づつ増減する形で、細かくエディットできるようになりました。指定したパラメーターは、次に他のパラメーターの操作子が使われてその内容が表示されても、しばらくすると再びエンターボタンで指定したパラメーターが表示され続けます。解除する場合は、EXITボタンを押します。

 Roland JD-XAと異なりこのver.1.11でも、専用操作子を動かす形でしかパラメーターを指定できないので、動かした時点で前回保存値とは異なる表示がされるわけですが、それでも旧ver.のように、あっという間に設定表示が見えなくなるという事は無くなり、つまみやスライダーという至極大雑把にしか入力できない操作子にイライラしてきた身には大いなる前進です。

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 ステップシーケンサー、音色選択ボタン。

 ステップシーケンサーは押鍵時のみ再生し続けるモードはあるのですが、コルグのアナログモデリングシンセのモードシーケンス機能のように1回だけ実行する事はできないようです。パラメーターの周期変化はともかく、径時変化のソースには使えません。

 A〜H、1〜8のボタンの組み合わせで音色を選択します。またこれらのボタンはシーケンサーのどのステップが実行されているか、データのある無しを、ランプの色で表示します。

 Roland AIRA SYSTEM-8が出ますでも書きましたが、この16個のボタン、カチッと硬く入るというよりは、変な表現ですがぬるっと沈み込む、それでいて、ボタンが押し込まれましたという事を手指にはっきり教えてくれる、という感触でした。好感触だと思いました。

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 LFO。

 波形のバリエーションは3まであります。波形にノイズはありません。

 ピッチ、カットオフ、音量のデプスのつまみには、センター位置(0)にクリック感があります。マイナス値もあるので、LFO波形の鋸歯状波を正逆とも設定できます。

 トリガーENVは、LFOの周期でENVがリトリガーされ続けます。

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 オシレータ1、2、サブオシレータ、ミキサー、ピッチENV。

 オシレータ波形のバリエーションは1、2があります。

 波形を変化させるカラーはマニュアル以外の変調のソースが豊富で、その中にはサブオシレータまであります。ENVをソースにしたPWMで撥弦系の音色を即席で作ったのですが、私がかつてSH-101やJUNO-6で作った、はつらつ感のある撥弦音ができました。

 ただ、このカラーのソースに、ベロシティを加えられないものかとも思いました。

 ピッチENVのデプスは、センター位置(0)にクリック感があります。

 恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードを真似るヒントは、波形をパルス波にし、カラーを090あたりで探します。ポルタメントのカーブが非リニア変化である事と併せて、けっこう良い線いきます。パフォーマンスモードで、オートベンド(ピッチENV)の有る無しをロワー/アッパーで作り分けて、どちらかのみを選択する形に設定しておくと、ロワー/アッパーボタンがオートベンドのオン/オフボタンになります。

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 フィルター。

 バリエーション1、2に加え、システムver.1.11から、バリエーション3としてRoland AIRA SYSTEM-1のローパスフィルターが加わりました。

 ベロシティでENVデプスをコントロールする事ができます。逆にいうとフィルターにおけるベロシティのディスティネーションはこれだけです。

 キーボードフォローはマイナス値も設定できます。弾く鍵盤の高低によるカットオフの傾斜を、右肩上がりにも下がりにも設定できるという事です。

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 アンプ。

 ベロシティで音量をコントロールできます。

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 内蔵エフェクター。

 ディレイ系、リバーブ系と、空間系エフェクターを2種併せて使う事ができます。デジタルエフェクターの黎明期からローランド/ボス(BOSS)の空間系エフェクターが好きな身には、音声入力ができるローランドのシンセサイザーを、エフェクターとしても見てしまいます。ちなみに私が初めて手にしたエフェクターはBOSS DD-2(デジタルディレイ)でした。

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 SYSTEM-8のPLUG-OUTは、当初からPLUG-OUT JUPITER-8、PLUG-OUT JUNO-106の付属がアナウンスされていたのですが、PLUG-OUT JUNO-106はシステム1.11で入りました。

 今回の試奏でPLUG-OUT JUNO-106を鳴らす事は無く、またPLUG-OUT JUPITER-8もプリセット音を聴くのみで、音色をエディットする事はありませんでした。SYSTEM-8のPLUG-OUTに関して、機会を改めて触れたいと思います。

 PLUG-OUT JUPITER-8のプリセット音の中の、ネーミングに関しておそらくギリシャ神話のサイレンの魔女の唄声にちなんだと思われる「Siren's Chant」は、冨田勲さんがmoog III pで作った女声にそっくりでした。

 また、SYSTEM-8のプリセット音「Whistling Ld」は、同じく冨田勲さんのmoog III pのあの軽快な口笛に似ていました。

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 Roland AIRA SYSTEM-8の独特の機能があるとしたら、経年変化をシミュレーションできるコンディションという機能くらいだと思うのですが、全く意義を感じないので、今回、試す事はありませんでした。

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 各設定に関して、前回保存値を何らかの形で見る事ができれば、エディットの効率は上がるような気がします。ver.1.11で、パラメータを指定して表示を持続し、バリューつまみで入力できる事になったのと同様、システムのアップデートで何とかできないものでしょうか。

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 AIRA SYSTEM-8は、Roland SHやJUPITERといったローランドアナログシンセの姿やパラメーター構成を軸に、至極堅実にデザインされた印象があります。誰か特定の奏者やマニピュレータの個性を濃厚に反映する事が無い代わりに、使う人がそこはかとなく自分を込める事ができるシンセサイザーのような気がします。

 アナログシンセ時代、Roland SH-101やJUNO-6では届かなかった部分、詰める事ができなかった部分に、それらと同じくつまみやスライダーを動かすという形でマニピュレーションを加えられ、さらに最終的に数値を1づつ増減できる事に、まことに捗々しい操作感を味わう事ができました。

 昔を懐かしむというより、加齢を意識せざるをえない身には、Roland AIRA SYSTEM-8のこのマン/マシンインターフェイスは、その事情に即した実に良い在りようです。

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Roland AIRA SYSTEM-8

待望のJUNO-106 PLUG OUT、ついに現る!SYSTEM-8 Ver.1.11公開
(ローランドサイトブログより)

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by manewyemong | 2017-01-31 13:40 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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