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Roland Boutique D-05が発表されました

 平成29(2017)年9月9日、ローランドはRoland Boutique D-05を発表しました。

 Roland Boutique D-05は、昭和62(1987)年に発売されたローランド初の完全デジタルシンセサイザーD-50を、Boutiqueという形で再現したモデルです。

 「LA音源シンセサイザー」と銘打たれているのですが、D-50のシンセサイザーエンジンであるLA(Linear Arithmetic synthesis : リニアアリスメティックシンセシス)の回路そのものが入っているのではなく、DCB(Digital Circuit Behavior)によるモデリングです。

 2つの縦型リボンコントローラーがフロントパネル左端にある、オプションキーボードRoland K-25mが使える、電池駆動、スピーカー搭載といった他のBoutiqueシリーズのシンセモデルの特徴を継承しています。

 また、D-50には無かった、64ステップのシーケンサーやアルペジエータも載っています。

 ローランドのウェブサイトで「Experience The Roland D-50」という告知があった時点で、私を含め数多の人々がD-50のBoutique化、そして名称が「Boutique D-05」となる事を予想したと思います。

 私はBoutique D-05の姿が、Boutique JX-03が、JX-3Pそのものというより、そのプログラマPG-200を継承したように、D-50用プログラマPG-1000のようになるのではと想像したのですが、Boutique D-05はD-50のフロントパネルの雰囲気そのままでした。

 Boutique D-05のウェブサイトに、「オリジナルD-50を完全再現」とあるので、Boutique D-05にPCM素片の増装やパラメーター構成の変化が無いものと仮定して、D-50の取扱説明書を元に、リニアアリスメティックシンセシスについて触れたいと思います。それがBoutique D-05のシンセエンジンに触れる事につながると思うからです。

 Roland D-50は、1つの音色プログラムをパッチと呼び、パッチはアッパー/ロワーの2つのトーン、トーンは2つのパーシャルに細分化できます。

 パーシャルには、アナログシンセ的なシンセサイザーサウンドジェネレータか、PCMサウンドジェネレータかを充てる事ができます。2つのパーシャルには双方にシンセジェネレータ、双方にPCM、あるいは片方にシンセジェネレータ、もう片方にPCM等、リングモジュレータとの絡みも含めて7通りの組み合わせがあります。この組み合わせをストラクチャーとしています。D-50同様、Boutique D-05のフロントパネルには、7つのストラクチャーが図で示されています。

 ピッチENV、3つのLFOを、1つのトーン、つまり2つのパーシャルで共用しています。これらのパラメーターをコモンパラメーターとしています。

 レベル/タイム型のピッチENVは、コルグのPCMシンセと異なり、サスティンレベルが0に固定されていません。全てのパラメーターに規定値が無く、オートベンドの設定はよりフレキシブルです。このピッチENVは、今日のローランドのワークステーション機やPCMシンセに継承されています。

 3つのLFOはどれが充てられるかを、パーシャルのディスティネーション側で選択します。波形は三角波、鋸歯状波、矩形波、ランダムがあります。レイト、ディレイタイムがあるのですが、フェイドタイムはありません。また、デプスは0〜最大値なのですが、パーシャルパラメーターの側で正逆の設定ができます。したがって、鋸歯状波は上昇/下降型とも使えます。

 ちなみにRoland D-10、D-20のLFOにはディレイタイムが無かったのですが、ピッチENVのタイム1実行中はなぜかビブラートがかからないという仕様になっていたので、時にディレイタイムの代わりに使いました。

 パーシャルのパラメーターを見ていきます。

 シンセサイザーサウンドジェネレータは、オシレータ波形を矩形波、鋸歯状波から選び、PCMサウンドジェネレータは波形番号を指定します。

 この鋸歯状波は、実際は矩形波をフィルターに通した後、演算処理をもって作られているそうです。

 話がそれるのですが、KORG POLY-800は、鋸歯状波を選んでも'4以外をオフにすると矩形波になりました。また、minilogueはシェイプを最大値にすると矩形波になります。

 話をD-50に戻します。

 オシレータ波形が矩形波、鋸歯状波であってもパルスウィズを設定する事ができます。LFOを充ててPWMにしたり、ベロシティやアフタータッチでデューティー比をリアルタイム変化させる事もできます。

 フィルターは、TVF(タイムバリアントフィルター)となっていて、この呼び方は、後のJV/XPシリーズ、そして今日のFA、JUNO-DSに至るまで継承されています。なお、PCMサウンドジェネレータはTVFを通りません。

 コルグのデジタルフィルター(VDF:バリアブルデジタルフィルター)が、KORG M1、WAVESTATION、01/Wとレゾナンスが無かったのですが、TVFはD-50からありました。アナログシンセしか持っていなかった頃、借用したD-50やD-10で、レゾナンスを効かせ、そして次に記すレベル/タイム型ENVを活かした撥弦系の音色を作った時、VCFより溌剌感が出ていて、デジタルシンセの威力を実感したものです。

 フィルターには専用のENVがあり、2つのパーシャル個別に設定できます。ADSRではなくレベル/タイム型であり、ここでもデジタルシンセのありがたみをかみしめました。スタートレベルは0固定なのですが、リリースレベルはエンドレベルとして設定できます。

 アンプ(TVA:タイムバリアントアンプ)のENVも、TVF ENVと同じレベル/タイム型です。パーシャル毎に個別に設定できます。

 モジュレーションは、フィルター、アンプに関する設定を独立して行います。どのLFOをソースにするか、変調の深度、アフタータッチの効果を決めます。

 昭和56(1981)年にプログラマブルアナログポリフォニックシンセRoland JUPITER-8が出てきた時、100万円近く出してもこの程度の事しかできないのかというのが、当時中学2年生だった私の感想でした。

 その後、昭和58(1983)年春にデジタルシンセYAMAHA DX7が登場して、民生機でも広大な可能性が用意されたのですが、さりとて、そのマニピュレーションたるやそれまで私が蓄積した知識が活きず、別の意味での困難に遭遇しました。それを解決してくれたのは、マニピュレーションの緻密な可能性をもちながら、アナログシンセの知識が活きたRoland D-50でした。デジタルシンセがいよいよ自分の射程距離に入ってきた事を実感しました。

 ただ、遺憾ながら世間は必ずしも、このシンセの分かり易さに乗ったマニピュレーションをした訳ではありませんでした。DX7に続いてやたらとメーカープリセット音が聴かれるようになりました。私が最も耳にしたのは、アメリカのドラマ「Xファイル」のオープニング音楽のメロディの口笛のような音色です。

 Roland Boutique D-05がまたぞろ、

 「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」

な扱いしかされないのであれば、この30年とは一体何だったのでしょうね。

 これも多くの人々が予想している事かもしれませんが、次にBoutique化されるシンセサイザーは、おそらくRoland JD-800ではないでしょうか。つまり、Roland Boutique JD-08。

 そういえば、Roland JD-800試奏記でも、

 「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」

を書きましたね。

 Roland Boutique D-05、発売日は来る9月29日、価格は税込49,680円。


平成29(2017)年9月11日追記。

 本日、取扱説明書が公開されました。

 
Roland Boutique D-05


Experience The Roland D-50

 Roland D-50発売30周年を記念しての、同機開発に携わった人たちの証言集です。

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by manewyemong | 2017-09-10 15:34 | シンセワールド | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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