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「舞鳥」(アルバム「姫神」より)

 「舞鳥(まいどり)」の、短いながら緩急のある構成、メロディの躍動感、タイトなリズムセクション、所々に織り込まれたオスティナートの無機質なスピード感、そしてこれらが合わさって醸し出す色彩感は、私の中で、江戸時代寛永期に描かれた屏風絵「江戸名所図屏風」と結びつきました。

 「江戸名所図屏風」は、幕府開府からさほど歳月を経ていない江戸の様子が8曲1双(各々縦107.2cm、横488.8cm)全面に極彩色で緻密に描かれています。泰平の世の到来と江戸建設の活況に酔う様々な階層の人々が放つエネルギー感が屏風からあふれています。この屏風絵を見るたび(本物ではなく画集ですが…)に脳裡に「舞鳥」が鳴り響き、「舞鳥」を聴く度に「江戸名所図屏風」の部分部分が細切れに脳裡に浮かびます。

 「舞鳥」はアルバム「姫神」中、際立って分厚く多重録音が繰り返されているのですが、その多さが少しも耳に不快ではなく、自然に響きます。姫神・星吉昭さんのシンセ音色のセンス(この頃はご自分で音を作っていました)、そして姫神せんせいしょんの編曲・演奏のセンスが光っていると思います。

 イントロ部分の撥弦風のシンセのグリッサンドや間奏のオスティナートはローランドのデジタルシーケンサーCSQ-600に打ち込まれたものと思われます。シンセはおそらくRoland SH-2かSYSTEM-100Mです。ミキシングコンソールのオートパンポット機能を使って、ステレオ音場を左右に素早く移動させています。

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 かつてコルグが発行していた「SOUND MAKE UP」誌の1983年2月号「ワンページデスマッチ」のコーナーは、姫神・星吉昭さんのエッセイですが、この中で「舞鳥」の最初の部分の譜面とKORG Polysixの音色設定図が紹介されていました(KORG OASYS EXi LAC-1 PolysixEX試奏記)。来る11月25〜26日大阪でSYNTHESIZER FESTA OSAKA 2005という催しがあるのですが、もしそこでコルグのソフトウェアシンセLegacy CollectionのPolysixが使えたら、この設定図を試してみようかなと思っています。


参考文献:
「江戸名所図屏風—大江戸劇場の幕が開く 」 内藤正人
小学館アートセレクション ISBN:4096070173

by manewyemong | 2005-11-07 18:54 | 音楽 | Comments(0)