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うねりを帯びた男声風パッド音 Roland VP-330

 姫神せんせいしょんのアルバム「奥の細道」の「紫野」「邪馬台国の夜明け」「Gun-Do」などで、「シュワ〜ン」といううねりを帯びた「アァ〜」という男声風のパッド音が、バックで白玉(全音符、2分音符のこと)演奏されています。決して前面に飛び出てくるような音ではありませんが、曲調に不思議な広がりを与えています。

 この音はボコーダーRoland VP-330 Vocoder Plusのヒューマンボイス部に、フェイザー(フェイズシフター)というエフェクターをかけた音だと思います。

 Roland VP-330には、本来のボコーダー機能の他に、ヒューマンボイス、ストリングスという音源部があります。ボコーダー部は「赤い櫛」(アルバム「遠野」より)「えんぶり」(アルバム「姫神」)「武夫のテーマ」(映画「遠野物語」オリジナルサントラ盤)「ハヤト」(アルバム「姫神伝説」)で使われています。ヒューマンボイス部は「アァ〜」という人声音を電子的に合成しています。「海道を行く」や「夕凪の譜」等では、このVP-330のヒューマンボイス部がフェイザー無しで使われています。

 フェイザーは、元々はハモンドオルガンのレスリースピーカー(回転しながら音を出す)のドップラー効果(中学か高校の物理の時間に習いましたね…)を、擬似的に作り出すことを目的に開発されたエフェクターだそうです。しかし、本来の目的からは全く逸脱した形で使われています。

 変わった所では、1979年のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第1回放映分で、ガンダムがビームサーベルでザク(敵のロボット)の腹部を切り裂いていく効果音は、シンセで作ったピンクノイズ(野菜等を炒める時の「ジュ〜」という音等)にフェイザーをかけたものです。

 話がそれました。うねりを帯びた男声風パッド音をワークステーションタイプのデジタルシンセで再現する、私なりの方法を記します。

 本家ローランドのJV/XPシリーズ用のオプションボードSR-JV80-04 Vintage Synthや、Fantom X/JUNO-G/JUNO-STAGE用のSRX-07 Ultimate Keys、そしてFantom Gのオシレータには、VP-330のヒューマンボイス部のサンプル波形VP-330ChoirA、VP-330ChoirB、VP-330ChoirCが収録されています。

 またKORG TRITONシリーズ/KARMA用のオプションボードEXB-PCM05 Vintage Archivesや、TRITON Extreme、microX、M3M50のオシレータには、Vocorder-VPという波形が収録されています。

 しかしながら、ここではそれらを利用できない人向けに書きます。

 まず、既存の男声風(女声の低音部でもいい)プログラムを用意してください。プリセットの中に必ずあると思います。それをあまり前面に出て来ない、しかし、広がりをもった音にエディットします。ヒントは、フィルターでの音変化を派手にしない、複数のオシレータのピッチを微妙にずらす(ディチューン)、などです。ディチューンのさじ加減を間違うとアンサンブル感が足りなかったり、逆に、単に音程をとるのが下手な合唱団みたいな音になります。また、「邪馬台国の夜明け」「Gun-Do」等の「アァ〜」は、音が減退しています。EGのディケイタイムやサスティンレベルの設定も一考してください。アタックタイムの若干遅い金管楽器風のEGに設定してみるのもいいかもしれません。

 「アァ〜」ができたらマルチエフェクターの中のフェイザーをかけてみましょう。エフェクトの深さ(デプス)、速さ(レイト)等はお好みで…。

 ワークステーションタイプのデジタルシンセのマルチエフェクターは、モジュレーションソースをシンセ部分のパラメーターと連動させることができるものが多いので利用するのも手です。鍵盤のベロシティやアフタータッチ、アサイナブル・ノブ、エクスプレッションペダル等を使用するのもいいと思います。演奏中の気分でフェイザーの効果をさまざまに変化させる事ができます。

 アナログ時代に私がKORG Mono/Polyで作った「アァ〜」を記しておきます。アナログモデリング音源やコルグのMOSS音源、Roland D-50/20/10等に応用できます。

 オシレータの波形をPWMにします。変調はLFOを選択します。Roland D-20/10等パルス波の幅をLFOやVCF EGで変調できない機種はPWでけっこうです。そしてパルス波の幅を耳で確かめながら「アァ〜」に近い位置に設定してください。

 フィルターの設定はカットオフポイントとレゾナンスの関係が極めて重要です。また鍵盤の高低とカットオフポイントの関係を設定するキーボードフォロー(キーボードトラック)も慎重に設定してください。鍵盤の位置でフィルターの感触に差異が出るのを防ぐ為です。後は上記のワークステーションタイプのシンセの設定と同じ考え方で結構です。

 冨田勲さんの1970年代のシンセアルバム「月の光」「惑星」「ダフニスとクロエ」等は、フェイザーを使った音のバリエーションが実に豊富です。「ダフニスとクロエ」の「亡き王女のためのパヴァーヌ」(作曲モーリス・ラヴェル)は、曲中でリコーダー風の音とフェイザーのかかった人声風の音(メロトロンとシステムシンセを多重録音したもの)とがかけ合いをする、非常に美しい曲です。参考に聴いてみてください。
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by manewyemong | 2005-12-19 18:55 | シンセサウンドメイクアップ | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong