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「峠」のメロディ音

 「峠」(アルバム「遠野」より)でも記しましたが、「奥の細道」後半の裏メロや「岩清水」の間奏、「やませ」のリフ等、初期の姫神せんせいしょんの作品の中に、トラベルソ(ルネサンスフルート)か尺八を模したようなシンセ音があります。最も前面に出ているのが「峠」でのメロディと思われます。

 参考までにトラベルソについて記しておくと、音孔をふさぐ行為に関して、現代のフルートのようにカバード・キイではなく、尺八などと同じく直接指を使います。フルートより音程がせまく、調を変えることができない、音程を正確に取るのが難しいといった面はあるのですが、逆に尺八のようなあいまいな音程を取りやすい、音が柔らかいといった優れた点があります。

 カテリーナ古楽合奏団のアルバム「ドゥクチア」(クルムホルンレコード)の「トリスターナ」(作者不詳、14世紀イタリア)という曲で、このトラベルソがメロディをとっているのですが、演奏者が日本人であるという理由もあるかもしれませんが、私にはその音が日本的に感じられました。

 デジタルシンセの無かった姫神せんせいしょん時代、姫神・星吉昭さんはおそらくローランドのアナログシンセJUPITER-4でこの音を作っていたと思われます。同機に触れた機会にこの音を真似てみたところ、よく似た音になりました。デジタルシンセYAMAHA DX7、Roland D-50導入以降は、この種の音はそれらで出すようになりました。「陽(ひ)」「うら青く波涛は澄み」「海の子守歌」等のフルートは、D-50と思われます。

 PCM音源のシンセにはたとえ廉価機であってもオシレータにフルートの波形がありプリセット音が入っていますが、今回はあえて姫神せんせいしょんが用いたであろう方法に依りたいと思います。笛、さまざま(1)で作った笛の音色をエディットしていく形で記していきます。

 まずオシレータ波形を鋸歯状波(きょしじょうは:saw)にします。そしてフィルターの設定をしていきます。カットオフおよびフィルターEG、ベロシティまわりの設定は特に丁寧に緻密に行ってください。カットオフが開き過ぎているとフルートではなくブラスのようになってしまいますし、閉じすぎると音がこもってしまいます。もっとも初期の姫神せんせいしょんにはブラスなのかフルートなのか判然としない音(「行秋」「水光る」等)も存在しています。

 そして、フィルターに対してモジュレーションをかけます。フルートの音をよく聞くと「フーフフフフフ…」と聴こえますが、その「フフフ…」の部分のシミュレーションです。これを“グロウル効果”といいます。これもデプスはもちろんLFOの早さやディレイ/フェイドインタイムを緻密に設定してください。

 PCM音源のシンセの中には、サンプリングの段階でフルート奏者にグロウル効果を強調させたものを収録したオシレータ波形を持つものがありますが、この波形で作った音にフィルターでグロウル効果をかけると、音がいびつに感じられることがあります。シンセサイザー奏者側の、このタイミングでグロウル効果をかけたい、という意図が拒絶されてしまうわけで、オシレータ波形のリアルさのみを追求するメーカーの考えはいかがなものかと思います。ちなみに私は鋸歯状波、フルート波形を使い分けて、いくつかのフルートの音色を作っています。

 笛、さまざま(1)同様、ピッチベンドとフットボリュームの操作は、この音色に生命感を与えるポイントです。この音をフルートではなくトラベルソや尺八に聴かせる為に、常に左手指はジョイスティック(コルグ)、ベンダーレバー(ローランド)、ホイール(ヤマハその他)といったコントローラーにかけておいて、ピッチのコントロールをまめに行ってください。


カテリーナ古楽合奏団(ロバハウス)
http://www.roba-house.com/

楽器の部屋
http://www.roba-house.com/inst.html
「フルート系の楽器たち」の中にトラベルソの画像(不鮮明ですけど)と解説があります。
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by manewyemong | 2006-02-15 20:05 | シンセサウンドメイクアップ | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


by manewyemong