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KORG Mono/Poly試奏記

 implant4さんで、KORG Mono/Polyを試奏させていただきました。

 平成27(2015)年11月27日現在、implant4さんには、今回試奏させていただいた個体を含め、3台のMono/Polyの在庫があります。そのうちの1台はMIDI化の改造が施されています。

 今回、平成19(2007)年1月31日にアップしたKORG Legacy Collection Mono/Polyに関する記事を大幅に改訂し、実機試奏の雑感を主軸にしたKORG Mono/Poly試奏記とさせていただきます。

 パソコンベースのソフトウェアシンセサイザーKORG Legacy Collection Mono/Polyについては、本稿後半に記述を残しています。

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 アナログシンセサイザーKORG Mono/Polyは、昭和56(1981)年の秋か暮れ頃の発売だったと思います。

 私は昭和58(1983)年9月に手に入れました。夏休みにアルバイトをして得た、生まれて初めての給料を充てました。既に前年に発売直後のRoland SH-101を手に入れていて、私にとって2台目のシンセサイザーでした。

 その年の春にYAMAHA DX7が出ていたのですが、高校生では少々手を出しづらい値段だったこと、とにかく製造が追いつかないほど売れていて、ものが手許に届くまで日数がかかること、そして、日本のメーカーが一通りデジタルシンセを出すまで待ってみようという考えから、アナログシンセを買う事にしました。

 機種候補の条件として、VCFとVCAに独立して完全なADSRタイプのEGがあること、VCOが複数あること、店頭価格が10万円代前半までとしたのですが、結果的にそれらの条件を満たすKORG Mono/Polyを買いました。価格は既に10万円を切っていました。

 しかしながら、たしかその翌月のキーボードマガジンの最終ページのコルグの広告に、プログラマブルポリフォニックシンセサイザーの新製品KORG POLY-800が出た時は愕然としましたけど…。

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 筐体、化粧板、操作子群のデザインは、いずれもKORG Polysixと同系統です。筐体のこのカラーリングは、両機独特のものです。

 KORG Polysix試奏記にも書いたのですが、両機のどちらが良いかという議論が、現行機当時も、そして今も仄聞します。あの頃はPolysixが、そして今はMono/Polyが評価が高いそうですが、この二つのシンセ、比べようが無いと思うのですけどね。

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 Mono/PolyやPolysixの合板の化粧板、角の部分から崩壊が始まっているものをよく見かけるのですが、今回、implant4さんの3台の在庫は、いずれも美しい状態を保っています。

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 ホイール、鍵盤。

 いずれも、KORG Polysixと同じものと思われます。

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 ホイールのベンドレンジ及びモジュレーションデプスの設定操作子。

 ディスティネーションはともに、VCO1のみのピッチ、四つのVCOピッチを一括、カットオフポイントで、VCA、つまり音量に関するものはありません。

 また、モジュレーションに関して、MG(LFO)、VCO、VCF側に、デプスやその径時変化に関するパラメーターは無く、手操作子によるホイールの位置や動きがその全てを決めます。

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 フロントパネルを見ていきます。

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 MG(LFO)。

 MG1はレイトと波形(三角波、下降/上昇型鋸歯状波、矩形波)、MG2はレイトのみ。

 シンセサイザーエンジン部分の変調関係とアルペジエータでレイトを別設定したい場合、MGが二つあることは都合が良い。Roland SH-101の場合、LFOのレイトを内蔵デジタルシーケンサーやアルペジエータが共用していました。

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 PWM(パルスウィズモジュレーション)/PW(パルスウィズ)。

 パルス幅を、周期変化や径時変化を持たせる場合とマニュアル設定の場合で、独立した値を設定する事ができます。

 PWMのソースには、VCF EG 、MG1、MG2があります。MG1/MG2の選択肢がある事は、PWMの周期変化のレイトを、ビブラートやグロウル効果、クロスモジュレーション関連のレイトと別設定にしたい場合、便利です。

 Mono/PolyのVCF EGをソースにしたPWMは、特に撥弦系の音色で独特の渋味を醸し出してくれます。ギターやベースのシミュレーションに有効だと思います。

 昭和58(1983)年の春休みに公開されたアニメ映画「幻魔大戦」の音楽のうち、キース・エマーソンさんの担当分はコルグの機材協力を受けているのですが、ローズマリー・バトラーさんが唄った主題歌「光の天使」のシンセベース、おそらくMono/PolyのVCF EG変調のPWMを使っていると思われます。かつてMono/Polyを所有していた頃も、そして今回の試奏でも、そっくりに作る事ができました。

 また映画「トップガン」挿入歌「愛は吐息のように」のシンセベースも、この方法を使って真似るといい線いっているような気がします。ちなみにこのシンセベースのパート、落語家の桂文珍さんがあるラジオ番組で、「べーぼーばーぼーべーん」と唄っているのをお聴きして以来、私は「ベボバボベン」と呼んでいます。文珍さんは自ら操縦桿を握られるのですが、夜間飛行中、室内灯が輝く大型旅客機が雲間から上昇してくる姿を見ると、思わず「べーぼーばーぼーべーん」と唄ってしまうのだそうです。

 恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードに関するヒントは、パルスウィズを6を過ぎたあたりで探すと、3、6、9倍音が抜けたパルス波33%が見つかると思います。VCOは一つだけ使うか、四つのVCOの設定を同じにして次に触れるするシンクロ機能を使います。

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 シンクロ/シンクロ&クロスモジュレーション/クロスモジュレーション。

 Mono/Polyの特徴的な機能の一つです。当時の同価格帯のシンセには簡便なリングモジュレーション機能はあっても、クロスモジュレーションはありませんでした。後年、近い価格帯として、クロスモジュレーションが使えるRoland JX-3P(Roland BoutiqueJP-08、JX-03、JU-06が出ます参照)が登場します。

 私はクロスモジュレーションを使って姫神せんせいしょんの「行秋(ゆくあき)」(アルバム「奥の細道」より)の鐘や「風光る」(アルバム「姫神」より)の効果音等を作っていました。

 また、取扱説明書のセッティングチャートに銅鑼(たしかKING GONGという名だった)に関するものがあり、なかなか厳かな音がしました。今回は取扱説明書を見なかったので、King Gongは作りませんでした。

 1980年代に活躍したC-C-Bというグループの「Romanticが止まらない」という曲の、Roland JUPITER-8で出していたイントロの音、Mono/PolyのEG変調のPWMとたしかシンクロ&クロスモジュレーションでかなり近い音を作る事ができました。今回の試奏でこの音色を鳴らすのを忘れました。

 センスオブワンダーの「サディスティックサイキックタイガー」(アルバム「真幻魔大戦」より)で、難波弘之さんがSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5で作った電気ギター風の音色を出しているのですが、この音もシンクロ/クロスモジュレーションで真似したことがあります。私が当時使っていたモニタースピーカーKORG MM-25に載っていたオーバードライブを使ったり、知人からBOSS Heavy Metalというコンパクトエフェクターを借りてかけてみたりしました。

 私はシンクロを、変調ではなく、単に四つのVCOのピッチを強制的に同期させることにのみ使うことも多かった。得られる効果はVCO一つだけ鳴らすより、音量が大きくなることぐらいなのですけど。先に触れた喜多郎mini KORG 700Sリードやprophet-5ホルンを、Mono/Polyで真似る等に使いました。

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 ポルタメント。

 タイム設定のつまみだけでオン/オフボタンは無いのですが、フットスイッチKORG PS-1やPS-2を使うと足でポルタメントのオン/オフができます。PS-2の生産は終わっています。

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 四つのVCO。四つとも同じ構成です。

 ユニゾンモード時のディチューンの方法として、ディチューンつまみを使う場合と、各VCOのチューニングを独立して行う場合とがあります。

 かつて私が所有していたMono/Polyは、電源投入時からチューニングが使える状態になるまで、特に冬はそれなりに時間がかかったのですが、今回試奏させていただいた個体は、さほど時を経ずに使える状態になりました。もちろん、その後熱暴走する事も無く、至極安定していました。

 波形は、三角波、鋸歯状波、PWM、PW。

 姫神せんせいしょんの「七時雨」(アルバム「姫神より)メロディ音、おそらくこの三角波で作っていると思います。姫神せんせいしょんはコルグの機材協力を受けていて、アルバムジャケット裏に「KORG」のロゴが入っています。今回の試奏でも、うまく似せることができました。

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 ホワイトノイズジェネレータ。

 Roland SH-101が「ゴーッ」という迫力あるノイズなのに比して、Mono/Polyのそれは、どこか軽やかな感じがします。かつて私は、蒸気機関車や突風をSH-101、そよ風のイメージ音をMono/Polyで作りました。

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 VCF。ローパスフィルターのみです。

 完全なADSRタイプのEGを、VCAとは別に持っています。特に金管系や撥弦系で威力を発揮してくれます。

 レゾナンスを上げ切って自己発振させる事ができます。そのおり、今回試奏したこの個体は、キーボードトラックをきっちり5にすることで音階を平均率、つまりドレミにする事ができたのですが、かつて私が持っていたMono/Polyは、6少し手前あたりで平均率になりました。

 EGデプスは正逆ともに使えるのですが、Roland SH-2のようにポラリティスイッチで切り替えるのではなく、プラス値/マイナス値があります。

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 VCA。

 モジュレーションに関する設定要素が無く、EGによる音量の径時変化のみのセクションです。

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 トリガーモードスイッチ、オートダンプ。

 Mono/Polyはトリガーモードを、シングルにもマルチにも設定できます。

 オートダンプとは、これをオンした状態の場合、押さえたコードが1声でも押鍵され続けていた場合、他の押鍵分も発声し続けてくれる機能です。

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 アルペジエータ。

 アップ/ダウンは、例えば「ドレミ」と押鍵した場合、「ドレミミレドドレミミレドド…」と実行されます。Roland JUNO-6やSH-101等の場合、「ドレミレドレミレ…」です。

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 キーアサインモード。

 KORG Mono/Polyの特徴であり、名前の由来である、4VCOのモノフォニックシンセ、あるいは4声のポリフォニックシンセの切り替えを行うセクションです。

 ユニゾンシェアは、単声を押鍵した場合は4VCO、2声は1声あたり2VCO、3、4声は1声あたり1VCOを割り当ててくれます。四つのVCOを有効利用して、1、2、4声で音の厚みを損なわないようにすることができます。

 ユニゾンシェアはMono/Poly独特の機能ですが、ワークステーション機時代になってもユーザーからのリクエストが相次いだということや、その声を採らなかった理由に関するコルグスタッフさんのインタビュー記事を雑誌で読みました。ユニゾンシェアを採らない理由は、マスキング効果(音が互いに打ち消し合う)が絡んだ事柄だったと記憶しています。コルグアナログモデリングシンセ現行機には、ユニゾンシェアと似た機能が載っています。

 コードメモリーの、文字通りコードを記憶させる方法は、ポリモードでコードを押鍵してコードメモリーボタンを押す以外に、ホールドボタンを押して1声ずつ押鍵していき、目的とするコードになった所でコードメモリーボタンを押すという方法も考えられます。

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 実機と、パソコンベースのソフトウェアシンセLegacy Collection Mono/Polyの違いについて記します。

 まず二つのMGに関して、三角波、矩形波、向きの違う二つの鋸歯状波といった、実機にもある波形に加え、S&H(サンプルアンドホールド)があります。実機の場合、アナログシーケンサーSQ-10ででたらめなピッチ設定をするか、モジュレーションペダルMS-04使わないとできませんでした。SQ-10もMS-04も私が実際に試したわけではありません。

 そしてこれが実機とLegacy Collection Mono/Polyとの最大の変更点なのですが、コルグのアナログモデリングシンセと同じくバーチャルパッチが使えます。Legacy Collection Mono/Polyのバーチャルパッチ数は8で、KORG RADIASKingKORGの6をも越えています。EGをピッチに送ってオートベンドをかけるといった、実機では不可能だった事ができるようになり、音作りの可能性を大きく広げています。

 発声数はパソコンの処理能力に依拠するようですが最大128で、もちろん実機のように押鍵の度に全てのボイスのフィルターやアンプが作動し直す事はありません。またエフェクターが同時に2種類使えます。もちろんアナログモデリング、つまりデジタルシンセなので電源を入れてオシレータが暖まるまで音程がとれないという事はありません。

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 近年コルグは、単にCMTによる旧機のモデリングではなく、本格的な形での復刻に力を入れていて、KORG MS-20 miniARP ODYSSEYといった成果があります。

 あるいは、今、現行機期以上に評価が高まり、かつて新品を10万円を切る値段で買った私が目を回すほど中古価格が高騰しているKORG Mono/Polyも、復刻されるのではないかと期待しています。

 他のモデル同様、86%の大きさでスリム鍵盤、そして願わくば、化粧板を合板ではなくローズウッドにすることと、アルペジエータをコルグのアナログモデリング機なみのものにしていただけたらと思います。

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by manewyemong | 2015-11-28 10:07 | シンセワールド | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong