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KORG R3試奏記(1)

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 平成19(2007)年5月25日に発売されたアナログモデリングシンセサイザーKORG R3に触ってきました。仕様等はKORG R3(THE NAMM SHOW 2007)で既に触れているので、今回は主に見た目や奏者及びマニピュレーターとの接点に関して記したいと思います。

 筐体のカラーリングはKORG MS2000Bのような完全な黒ではなく、光の当たり方によって小豆色や茶色が含まれているような感じがしました。そういえばR3のカタログは小豆色や抑えめのショッキングピンクが、そしてR3に付属のエディタソフトの画面は茶色が基調になっています。フロントパネルそのものはシームレスで、内部へのアクセスはリアパネルを外すと思われますが確証はありません。

 鍵盤はコルグのシンセサイザーX50やmicro X、DTMマスターキーボードKシリーズと同じものなのですが、気のせいかそれらよりももう少し動作部分がしっかりしているように思えました。もちろん店頭にならんだばかり故に、まだ摩耗や疲労が始まっていないだけかもしれません。

 コントローラーは、Prophecy以来のコルグのフィジカル/アナログモデリングシンセの伝統ともいうべき、ホイールが採用されています。ギザギザが細かいからか、私にはヤマハのシンセのホイールよりも手に馴染むように思えました。

 ホイールのそばにボタンが二つあるのですが、残念ながらこれらはコルグのワークステーション機に見られるアサイナブルボタンではなく、オクターブのアップ/ダウン専用です。各々押された回数によって点灯するランプの色が緑、蜜柑色、赤と変化します。

 音色はバンクセレクトダイヤルと八つのプログラムセレクトボタンの組み合わせで選びます。KORG R3(THE NAMM SHOW 2007)でも書きましたが、カテゴリー名が筐体に印刷されてしまっています。音色を各カテゴリーに均等に八つ作るというシチュエーションは私に関して絶対に無いので、このカテゴリー名はかなり邪魔です。一々気になってしまいそうです。

 しかしバンクセレクトダイヤルの感触はmicro KORGのようにカチッと切り替えるという形ではなく、滑らかに推移するようになっています。また、選択したバンクに赤ランプが灯るようになっていて視認しやすくなっています。

 バンクセレクトダイヤルとプログラムセレクトボタンによってボイス(VOICE)を選んだ時点では、LEDで囲われた四つのつまみはリアルタイムコントローラーなのですが、ページダイヤルを動かすことによってエディットモードに入り、四つのつまみは各ページ毎のパラメーターを設定する操作子に変わります。このページダイヤルも滑らかな操作感です。また、ページを順番にしか選べないにもかかわらず、使い手のダイヤル操作の緩急にきっちり追従してくれるので、目的とするページへのアクセスが容易でした。

 四つのつまみは他のつまみと違って、本体への取り付けの仕方に若干の遊びがあります。これはおそらく四つのつまみが音作りの操作子であると同時に、演奏時にはアサイナブルのリアルタイムコントローラーにもなることから、ある程度緩衝性が必要だからではないかと思われます。高層ビルがある程度揺れるように建てられるのと同じ理屈かもしれません。

 エディットモードに入るとこの四つのつまみ各々に対応した液晶画面にパラメーター名が表示され、前回セーブされた時の大まかな値がLEDの点灯数で表示されるのですが、つまみを動かすとオリジナルバリューランプが点く位置(前回セーブされた時の数値の所)まで来た時点から、数値が表示されます。

 このノブの動きと数値の表示の関係のきめが細かく、数値を1づつ昇降順させることができます。私はかつてデジタルアクセスコントロールかつまみ操作かで、アナログシンセやRoland SH-201の操作子の効きの緩慢さやいびつさに辟易した事を記しましたが、R3に関してワークステーション機なみのきめの細かさを感じました。もっともR3はデジタルアクセスコントロールタイプのシンセですけど。

 つまみは動かされるのが止んでしばらくすると、数値表示から項目名表示に戻ります。その後、再びつまみをゆっくり小さく動かすと、項目名から変わって前回操作を止めた時の数値が表示され、その後つまみの動きに追従するようです。この四つのつまみと液晶画面とLED、そして各パラメーターとの関係の有機性は地味といえば地味かもしれませんが、シンセサイザーに触れるにあたって一から音を作ることを大命題にしている私にとって、R3の諸機能の中で最も気に入った要素です。

 音色の単位に関して触れておくと、その最大単位であるボイスは、さらに二つのティンバー(TIMBRE)に別れます。ティンバーはそれ自体が1台のシンセサイザーであり、各々全く別の設定ができます(マスターエフェクトは共通です)。レイヤー(Layer)の場合は二つのティンバーを同時に鳴らし、スプリット(Split)は鍵盤上のスプリットポイントで分けられ個別に発声します。シングルの場合、実際に鳴るティンバーは一つなのですが、ティンバーセレクトボタン1ないし2とシフトキーを同時に押すことによって選べるようになっています。

 ホイールそばのボタンがオクターブのアップ/ダウンにしか使えないと分かった時、これでは私がコルグのワークステーション機でやってきたオートベンドのオン/オフをボタン一発でできないなと失望したのですが、このティンバーセレクトボタンとシフトキーを同時に押す動作で、オートベンドの有るものと無いものに設定したティンバーを切り替えることができます。ホイールから距離があることと二つ押さなければならないというところがちょっと面倒です。

 ちなみにSH-201の場合、音色をパッチ(PATCH)と呼び、それはさらにアッパー(UPPER)、ロアー(LOWER)の二つに分かれます。そしてこの二つを重ねる(DUAL)、鍵盤上で二つに分ける(SPLIT)までは同じなのですが、シングル(DUAL/SPLITボタンを消灯した状態)の場合、R3と違ってUPPER/LOWERをそれらのボタンを押すだけで切り替えることができます。

 今回は奏者やマニピュレーターとの接点に関する事柄について触れました。KORG R3試奏記(2)ではパラメーターに関して記したいと思います。


訂正

 本文中、

シングルの場合、実際に鳴るティンバーは一つなのですが、ティンバーセレクトボタン1ないし2とシフトキーを同時に押すことによって選べるようになっています

としたのですが、取扱説明書を読む限りシングルの場合、ティンバーそのものが一つになるようです。コルグのワークステーション機のプログラムのシングルと同じということです。

ホイールそばのボタンがオクターブのアップ/ダウンにしか使えないと分かった時、これでは私がコルグのワークステーション機でやってきたオートベンドのオン/オフをボタン一発でできないなと失望したのですが、このティンバーセレクトボタンとシフトキーを同時に押す動作で、オートベンドの有るものと無いものに設定したティンバーを切り替えることができます

はできません。四つの操作子のどれかにEG → ピッチに関するバーチャルパッチのデプスをアサインして演奏時にコントロールするか、別ボイスを作るかしか思い浮かびません。繰り返しますがRoland SH-201ならシングル時でもUPPER/LOWERのボタンを押すだけで切り替えることができます。

 KORG R3試奏記(2)に続きます。

by manewyemong | 2007-05-31 20:19 | シンセワールド | Comments(0)