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「若冲になったアメリカ人/ジョー・D・プライス物語」

 これまで、伊藤若冲の特別展「美の巨人たち」でジョー・プライスコレクションの特集プライスコレクション・若冲と江戸絵画展を観ました「動植綵絵」、相国寺に帰る「動植綵絵」、相国寺に帰る(2)「動植綵絵」、相国寺に帰る(3)で採り上げてきた、エツコ&ジョー・プライスコレクションのジョー・D・プライスさんの半生を、インタビュー形式にまとめた「若冲になったアメリカ人/ジョー・D・プライス物語」という本が、小学館から出版されました。

 インタビュアーの山下裕二さんは明治学院大学文芸部芸術学科教授です。「BRUTUS」2006年8月15日号(マガジンハウス)で、プライス家の壁面のタイルに伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」があしらわれているバスルームで、ジョー・プライスさんの背中を流している写真をご覧になった方も多いと思います。

 幼少期に負ったある事柄や、生まれ育ったオクラホマの平原の起伏も季節感も無い土地柄、日本人のエツコ夫人から「はっきりとノーと言わなきゃダメ」「まるで日本人みたい」と言われる人柄等、ジョー・プライスさんが江戸絵画に惹かれるのには宿命と思えるような数多のいきさつがあったことが明らかにされています。

 「はっきりとノーと言わない、まるで日本人みたい」な夫の為に、夫人は「孫子」「韓非子」「墨子」といった兵法書まで読んで、“虚飾とハッタリがまかり通る町”ロサンゼルスで夫君を守る努力をされています。

 ここでは書きませんが、エツコ&ジョー・プライスコレクションは決して順風満帆なものではなく、絵画や芸術とは全く関係の無い事柄で、実に現代アメリカらしいアクシデントに見舞われていたこともあります。そのことを知って、私は先のプライスコレクション・若冲と江戸絵画展を、感慨を持って振り返らざるを得ませんでした。

 繰り返しますがそれは絵画そのものとは何の関係も無い次元の話です。しかし今日、これだけの江戸絵画が散逸すること無く、研究者や観覧者の目に触れることができるのは、夫妻の努力のおかげであることを改めて知りました。

 文中、ジョー・プライスさんと伊藤若冲の人生には奇妙な一致があることが語られています。そして最後に先の「若冲展」(「動植綵絵」、相国寺に帰る(2)参照)でも展示された、久保田米遷の描いた伊藤若冲の肖像画が「若冲になったアメリカ人/ジョー・D・プライス物語」の191ページに掲載されているのですが、その絵とその次のページのジョー・D・プライスさんの容貌が…。「若冲になったアメリカ人」のタイトルの由来はそういうことです。本を手に取ってお確かめください。


「若冲になったアメリカ人/ジョー・D・プライス物語」
(著者:ジョー・D・プライス、インタビュアー:山下裕二、小学館刊)
http://skygarden.shogakukan.co.jp/
skygarden/owa/solrenew_detail?isbn=9784093877138

by manewyemong | 2007-06-16 20:34 | | Comments(0)