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Roland SH-101懐古記

 平成27年(2015年)3月9日、それまで二つあったRoland SH-101に関する記事を一つにまとめて改稿し、implant4さんで撮らせていただいた画像を加えました。

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 私はアナログモノフォニックシンセサイザーRoland SH-101を、昭和57年(1982年)11月の第2土曜日に手に入れました。

 私が通う中学校で、当時シンセサイザーに興味を持っていたのが私を含め二人。もう一人が既にアナログモノフォニックシンセサイザーYAMAHA CS01を持っていたので、その中学校の生徒が手にした2台目のシンセサイザーということになります。

 小学6年生だった昭和54年(1979年)のクリスマスか冬休みが始まる頃、ある偶然から冨田勲さんの「ダフニスとクロエ」を聴き、シンセサイザーに興味を持ちました。

 「宇宙戦艦ヤマト」シリーズを観て、インストルメンタルの音楽と効果音に関心があったのですが、シンセサイザーと一人多重録音が、音楽と音を一緒くたにしてしまえるように思えて、自分でもやってみたくなりました。それまで自分が楽器を弾こう等と考えた事はありませんでした。

 以来、シンセサイザーメーカーのカタログを集めたり、専門書を読んだり、楽器店で試奏したりしていたので、SH-101導入時、マニピュレーションのやり方は既に自分なりに会得していました。

 SH-101は、各パラメーターがアナログシンセにしては実に素直に変化する事と、デジタルシーケンサーやアルペジエータを内蔵していた事が、一人多重録音をする上で本当に役に立ちました。

 現行機だった頃は、MIDIやYAMAHA DX7の登場といった事もあり、単に安いシンセという評価しか無かったように記憶しているのですが、平成5年(1993年)の年明け、SH-101に信じられないような買取価格が付いている事を知り、その事に目がくらんで即座に売ってしまいました。その頃ほどではありませんが、今もSH-101の中古機が高価である事に変わりはありません。

 仕様の話に移りたいと思います。

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 Roland SH-101は、1VCO、1VCF、1VCA、1ENV、1LFOのアナログモノフォニックシンセサイザーです。オプションのグリップやストラップを取り付けるとショルダーシンセにもなります。ショルダーシンセとして使う為か、電源に関してACアダプター以外に乾電池も使えます。

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 LFOはレイトの設定と波形の選択ができます。ディレイタイムはありません。またレイトは内蔵デジタルシーケンサーのクロックと回路を共有しています。波形は三角波、矩形波、ランダム、そしてコンボタイプのアナログシンセでは珍しいと思うのですがノイズがあります。

 LFOのノイズ波形を選択してVCOのビブラートのデプスを上げていくと、ノイズジェネレータから出すのとは異なる感触のノイズが出せました。私はパンパイプを吹き込むような音や、英語の「th」の発音のような摩擦音のノイズを出すのに使っていました。

 またVCFのモジュレーションデプスを上げるとピンクノイズが出ました。うねりを帯びた男声風パッド音でも書きましたが、私はこのピンクノイズにスーパーフェイザーBOSS PH-2をかけて、「機動戦士ガンダム」のガンダムがザクの腹部をビームサーベルで切り裂いていく音を真似たことがあります。

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 VCOの波形はパルス波(パルスウィズを下げきると矩形波になる)と鋸歯状波だけで、サイン波や三角波、ランプ(RAMP:傾斜)波等はありません。

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 VCOは通常、波形を一つだけ選ぶことがほとんどなのですが、SH-101はパルス波、鋸歯状波を同時に選択でき、ソースミキサーで各々のレベルをコントロールすることができます。ほぼ同じ時期に出たプログラマブルアナログポリフォニックシンセサイザーRoland JUNO-60及びその非プログラマブル機JUNO-6は、パルス波と鋸歯状波のオンオフはできるものの、混ぜ具合を決めることまではできません。

 ソースミキサーでは、他に1オクターブ下の矩形波、2オクターブ下のパルス波(パルスウィズ固定)や矩形波を加えることができるサブオシレータや、ホワイトノイズジェネレータがありました。これもオンオフではなくレベルを調整できます。

 VCOのパルス波の幅は、マニュアル設定以外にLFOやENVが変調のソースとして使えます。

 SH-101のVCOに関して、電源投入後しばらくはチューニングが合わない(KORG Mono/Poly等)とか、長時間使用すると熱暴走するといったことが、全くありませんでした。

 SH-101のVCO、本当にVCO(ボルテージコントロールドオシレータ)だったのでしょうか。もしかしたらJUNO-6やJX-3P等と同じ、DCO(デジタルコントロールドオシレータ)なのではないかと疑っているのですが…。

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 VCFはローパスフィルターのみで、ENVはVCAと共有しています。レゾナンスを上げていくと発振状態になります(アルバム「北天幻想」の口笛参照)。発振状態のときキーボードフォローを最大値にすると平均律になります(「赤い櫛」参照)。

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 VCAのENVはA(アタックタイム)、D(ディケイタイム)、S(サスティンレベル)、R(リリースタイム)で構成されています。昭和58年(1983年)秋のKORG POLY-800(EGがADBSSR方式)の登場まで、コンボタイプのアナログシンセのEGは、ADSRタイプかもっと簡便なものしか無かったように記憶しています。

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 ポルタメントはタイム(実際はタイムではなくレイトのような気がします)のつまみだけでなく、オンオフ及びレガートの時だけかかるオートというモードをレバーで選択できるようになっています。ポルタメントに関して、当時のアナログシンセにはタイムを設定するつまみのみがあることが多く、後年のPSE騒動の頃、このつまみが疲労しているからか、タイムを0にしてもポルタメントがかかってしまうものを何台も見ました。

 ベンダーレバーは、左右に倒して行なうピッチベンドやカットオフの開閉の操作以外に、前に押すことでモジュレーションのデプスを深くすることができます。SH-101で初めて可能になり(笛、さまざま1参照)、形を変えつつ今日までローランドのシンセサイザーに継承されています。

 立奏用のグリップは、ホイールによるベンダーレバーの右倒し、つまりプラス方向の操作と、ボタン操作によるモジュレーションのオンオフができます。

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 100ステップのデジタルシーケンサーを持っています。もちろん後のMIDIシーケンサーのようなリアルタイム入力はできませんが、レストやレガートボタンを使って休符やスラーを打ち込めます。喜多郎さんや姫神せんせいしょんが、デジタルシーケンサーRoland CSQ-600を使って打ち込んでいたような無機的なオスティナートを、私はこれを使って出していました。

 この内蔵シーケンサーに関して、クロックがLFOのレイトと共通なのがネックで、例えばある規則性を持ったランダムトーンを作りたい場合、LFOの波形を矩形波にして「キコキコ…」という音を作り、“規則性”の部分をシーケンサーに打ち込んだのですが、LFOのレイトとシーケンサーの再生速度が同じだと私の狙った効果が出ませんでした。後にデジタルシーケンサーRoland MC-202を借用してSH-101をコントロールした所、考えた通りの結果を出すことができました。

 アルペジエータは、アップ、アップ&ダウン、ダウンのモードがあります。レンジ(オクターブ)の設定はできません。アップ&ダウンに関して、例えば「ドレミ」を押すと「ドレミレドレミレ…」と自動演奏します。ちなみにKORG Mono/Polyの場合は「ドレミミレドドレミミレド…」です。

 では最後におまけといってはなんですが、音色設定のヒントを一つ書きます。どんな音なのかは敢えて記しません。なにぶんSH-101を手放してから歳月が経っているので、間違っている所があるかもしれません。最終的にSH-101を使ってこの音をお試しになる方が自分で考えて変えてください。

 トランスポーズはハイ。一番下の「ド」の鍵盤あたりをホールドして、LFOのレイトを最速の位置にしてください。LFOの波形はランダム。VCOは使わないのでソースミキサーは全て完全に下げてください。

 VCFのモジュレーションデプスとキーフォローを最大値。ENVデプスは0。ENVに関してアタックタイムを0よりやや上に、サスティンレベルを最大値(したがってディケイタイムは関係無し)、リリースタイムを若干余韻が残る程度に設定します。そしてVCFのカットオフとレゾナンスをともに7よりやや上あたりを目安にして微調整し、発振したりしなかったりするポイントを見つけます。これで完了です。どんな音が鳴るでしょうか…。

 VCFが発振したりしなかったりするポイントを見つける、がこの音色のポイントです。VCF(ボルテージコントロールドフィルター)が文字通り電圧制御であり、その電圧が必ずしもフラットでないことを利用して作った音です。

 内蔵シーケンサーにでたらめなデータを打ち込んで走らせると、より水滴の量(どんな音か書いてしまいました)が増す感じがします。この場合もシーケンサーのクロックを最速にしておきます。ただ、私は「ド」あたりをホールドした時の音の方が自然な感じがして好きです。

 リバーブやディレイといった空間系エフェクトの使用をお勧めします。かつて私はこの音色に、世界初のコンパクトタイプのデジタルディレイBOSS DD-2をかけていました。

 Roland SH-101には、灰色の通常色機の他に、赤、青のカラーバリエーション機がありました。

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 画像は、平成27(2015)2月22日京都Blue Eyesさんで催された「シンセ温泉vol.3」に出演した電氣蕎麦さんの機材です。青色機の近くに、組み立て式パーカッションシンセサイザーAMDEK PCK-100が見えます。

 平成26年(2014年)6月25日、ローランドからRoland AIRA SYSTEM-1用プラグアウトソフトウェアシンセサイザー、Roland SH-101 PLUG-OUTが発表されました。

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 いっその事、Roland SH-101を実機として復刻するというのはいかがでしょうか。


平成29年(2017年)8月8日追記。

 平成29年8月8日、Roland Boutique SH-01Aが発表されました。


令和5(2023)年5月11日追記。

 同日、Roland AIRA Compact S-1が発表されました。

by manewyemong | 2009-02-23 23:50 | シンセワールド | Comments(0)