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アルバム「絲綢之路」

 私が小学6年生だった昭和54(1979)年4月、NHKは「マルコ・ポーロの冒険」という番組を放映し始めました。おそらく後の「あしたのジョー2」「コブラ」のスタッフが携わったと思われる(絵のタッチが酷似)美しいアニメーションと、16ミリフィルムのドキュメンタリー映像とで構成された番組でした。

 マルコ・ポーロの「東方見聞録」を下地した物語の面白さと、日本とは大きく異なるシルクロード沿道の諸民族の暮らし、史跡や大自然の景観、小池朝雄の語りや小椋桂さんの主題歌は、10代初めの私をシルクロード熱に罹患させる誘い水になりました。小学6年生にして「新十八史略」、へディンやスタインの探検記、井上靖の小説「楼蘭」「敦煌」「蒼き狼」等を、辞典を引きつつ読みふけるようになっていました。「シルクロード」放映開始までに、私にはこんなプロローグがあったわけです。

 「マルコ・ポーロの冒険」終了後の昭和55(1980)年4月7日から放映が開始されたNHK特集「シルクロード」は、当然ながら私を魅了しました。そして番組中で流れた喜多郎さんのBGMは、それまでさほど関心の無かった音楽という芸術を、一気に私の意識の中心に据えてしまいました。

 アルバム「絲綢之路(しちゅうのみち)」は「シルクロード」放映開始の翌月の発売でした。私は「シルクロード」第1集の放映直後にアルバム「OASIS」を買っていたので、「絲綢之路」は発売を待つ形で手に入れた最初のアルバムです。

 アルバム「絲綢之路」の収録曲は「絲綢之路」「鐘楼」「天地創造神」「遥かなる大河」「長城」「飛天」「シルクロード幻想」「光と影」「西に向かって」「時の流れ」「菩薩」「永遠の道」。

 アルバム「絲綢之路」は、後の長尺の楽曲が多くなる喜多郎さんのアルバムと比べて、やや小品集的な趣きなのですが、ドラムセットのスネアやタムタムを使った曲が無いこと以外、喜多郎さんの音楽のありとあらゆる要素が織り込まれています。

 昭和59年に出版された「天界から飛雲までの集大成と喜多郎語録」のアルバム「絲綢之路」に関するコメントの中で喜多郎さんは、「テレビのBGMなので視聴者の立場を考える必要があった。人が意識を深くのめり込ませて聴く時間は2分半くらい。その中で色々なテクニックを使ってみようと思った」という意味の言葉を述べていらっしゃいます。

 作品として独立した絶対音楽ではなく番組の付帯音楽であるということは、音楽家にとって、いわば軛(くびき)をかけられることのはずですが、喜多郎さんはNHK特集「シルクロード」においてむしろそれを逆手に取って、「天界」「大地」「OASIS」よりも表現の幅をひろげたのではないでしょうか。

 NHK特集「シルクロード」の音楽は、その後のNHKや民放テレビの大型ドキュメンタリー番組のBGMの一つの形、流れを新たに作ったと思います。そしてそれは、1980年代半ばに興ったニューエイジ音楽という、新たなカテゴリーの世界的な盛り上がりへと続いていったように思えます。

 このアルバムは前作「OASIS」同様、喜多郎さん1人でシンセサイザー、アコースティックギター、民族楽器やパーカッション類を演奏し、2台のオープンリールタイプ8トラックのマルチレコーダーTEAC 80-8に録音していました。ミキシングコンソールを使わず、直接TEAC 80-8に録音していたそうです。

 このアルバム制作時の喜多郎さんの自宅兼スタジオは、鎌倉市腰越にありました。

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by manewyemong | 2005-11-10 18:52 | 音楽 | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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