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「天地創造神」(アルバム「絲綢之路」より)

 冒頭から最後まで鳴り続けるRoland VP-330 Vocorder Plusのヒューマンボイス部の音が印象的です。この音を使うシンセサイザー奏者は多いのですが、喜多郎さんのそれは多重録音の仕方にひと工夫あるらしく、音に厚みがあるにもかかわらず輪郭がぼやけていて、より幻想的な感じがします。

 また、この曲には喜多郎さんには珍しい撥絃系のシンセ音のオスティナートが入っています。打ち込みではなく手弾きと思われます。もう一つ鳴っているオスティナートはデジタルシーケンサーRoland CSQ-600に打ち込まれていると思われます。

 アルバム「絲綢之路」が発表された昭和55(1980)年夏、東映系で「ヤマトよ永遠に」というアニメーション映画が公開されたのですが、その作品中、宇宙戦艦ヤマトが暗黒星雲に入っていくシーンで流れた「黒色銀河」という曲が、この「天地創造神」に雰囲気が少し似ています。あるフレーズの繰り返しが曲の基調になっていることや、男性コーラスやシンセサイザーによる通奏低音(ステレオ音場の左端で鳴っている)、「キリリリ…」という効果音が入る所に類似を感じます。

 「ヤマトよ永遠に」は企画当初からBGMにシンセサイザーを本格的に導入することが決まっていて、参考の為に音楽担当の宮川泰さんはじめスタッフは内外のシンセサイザー作品を聴きまくったそうです。あるいはその中に喜多郎さんのアルバム「絲綢之路」も含まれていて影響を受けたのかもしれません。

 喜多郎さんが音楽を担当したアニメーション映画「1000年女王」が公開された昭和57(1982)年の、夏だったか暮れだったか忘れたのですが、FM放送のある番組でアニメーション映画のBGMが特集されたことがあります。その番組にゲスト出演した宮川泰さんは、「1000年女王」の主題歌「星空のエンジェルクイーン」が流れた番組中盤とエンディングで、喜多郎さんを文字通り激賞していました。宮川泰さんは平成18(2006)年3月21日、この世を去っています。

 私は「天地創造神」を聴く度、井上靖のこの詩を思い出します。

胡楊の死


見晴るかす地平線まで胡楊の群落が埋め、
それがみんな枯れている。

枯れてから何年経ったか、何十年経ったか知らない。

これだけ壮絶な墓所は、
地球上にはそうざらにはないだろう。

月光を配すると、立ち枯れの木という木が、
みんな身をくねらせて、舞踏をするという。

当にそうするとだろうと思う。

ゴビも、沙漠も、月も、
本来の太古の相(すがた)を取り返すには、
これだけの胡楊の大群落の死が必要だったのだ。


 
 この詩はNHK特集「シルクロード」のある回で、石坂浩二さんのナレーションではなく、宇野重吉の朗読によって披露されました。

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by manewyemong | 2005-12-16 23:10 | 音楽 | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong