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喜多郎prophet-5ホルン

 喜多郎さんの「シルクロード幻想」「人類青春組曲」「飛翔」「空の雲」「星雲」「自由への架橋」「朝もや」「ノアの箱舟」「大銀河」等に、極端な表現ですが「ッポアウ〜ン」「ッポウン」(頭に小さい「ッ」があるのがポイント)等と聴こえる、ややこもった、そして柔らかさと輪郭の明瞭さを同時に兼ね備えたホルン風の音が入っています。

 この音を担当したのは、今は亡き米国シーケンシャルサーキット社製のプログラマブルポリフォニックシンセサイザーSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5です。

 prophet-5は、昭和53(1978)年に発売されたアナログシンセサイザーで、キーアサイナー方式によるポリフォニック化やプログラマブル(作った音色を記憶させる)といった機能を初めて搭載した機種です。機能の革新性に加え、デザインの美しさや合理性、そして出音に関して低雑音でこしがあり、今日に至るまで絶大な人気を誇っています。

 キーボードマガジン昭和57(1982)年2月号の喜多郎さんの巻頭特集のインタビュー記事によると、

オリジナルにプログラミングされていたものを自分なりにいじって作った

音だそうです。

 喜多郎さんが使っていたprophet-5は製造時期が古いものらしく、リアパネルの「prophet-5」のロゴが大きく、音色メモリーは40の仕様と思われます(シンセサイザーフェスタ’09見聞記参照)。YMOがテレビ出演時に演奏していたものは、ロゴが小さく、ヒートシンクやデジタルシーケンサーRoland MC-4との接続端子があり、音色メモリーは120のタイプでした。

 喜多郎さんがこのprophet-5で出しているホルン風の音の特徴は、既に記しましたが、ややこもった、そして柔らかさと輪郭の明瞭さを同時に兼ね備えていることだと思います。オシレータ波形は、曲によって鋸歯状波とPWM(パルスウィズモジュレーション)を使い分けています。また、同じように聴こえる音でも曲によってEGの設定が変更されているはずです。

 共通して言えることは、VCFとVCAのEGの設定に関して違いがあり、前者の方がアタックタイムが遅く、ディケイタイムは逆に早く、サスティンレベルは低いということです。「ッポアウ〜ン」「ッポウン」の「ッポ」は、VCA EGのアタックの立ち上がりよりもVCFの開き方の方が遅い故に、そして、「アウ〜ン」「ウン」の部分はフィルターの閉じ方がアンプの減退より速いことで出ている効果です。

 アナログシンセサイザー時代、アマチュアの手に届く価格帯のシンセにはVCFとVCAのENVが共通のものがほとんどでしたが、私が所有していたKORG Mono/PolyはVCFとVCAが独立した完全なADSRのEGを持つ数少ない機種で、この喜多郎prophet-5ホルンもかなり近い感じを出すことができました。KORG Mono/Polyは、PWMをMG(LFO)だけでなくVCF EGでも変調できたのですが、これは「ッポアウ〜ン」「ッポウン」の感じをやや強調気味に設定する時に役に立ちました。

 今日のデジタルシンセはPCMであれモデリングシンセであれ、廉価機であれフィルターとアンプが各々独立したEGを持っていることや、アナログシンセが太刀打ちできないほどEGを緻密に設定できるので、上で述べた特徴を考慮しながら設定すると、廉価機でもかなり近い、というより本物のprophet-5以上の効果が出せます。

 また、せっかくデジタルシンセを使うのでベロシティまわりの設定を一考、例えばフィルターの開き具合やENVのアタックタイム等をコントロールすると、より吹奏感のある喜多郎ホルンができると思います。

 喜多郎ホルンのイメージからは乖離しますが、LFOのディレイタイムやフェイドインタイム(prophet-5のLFOには後者はもちろん前者も無い)の設定を工夫して、音をふるわせて唄わせるようにしてもいいかもしれません。

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by manewyemong | 2005-12-29 20:55 | シンセサウンドメイクアップ | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong