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店頭で喜多郎miniKORG 700Sリードを作る方法(SH-201の場合)

 店頭で喜多郎miniKORG 700Sリードを作る方法(M3の場合)に続いて、Roland SH-201による方法を記します。もちろん、完全なものではない事や、各店頭展示機の設置環境の違い、試奏する人の奏法の違いによる出音の差異等を考慮していただく事も前回記事に同じです。前回同様、予め喜多郎miniKORG 700Sリード及び、Roland SH-201試奏記をお読みいただきたいと思います。

 ローランドのアナログモデリングシンセサイザーSH-201のプリセットバンクAの2番は、取扱説明書によるとFat Saw Leadとなっています。もちろんSH-201にはLCDやLEDによる表示機能は無いので、その名称はパソコンのエディタ上でしか視認できません。私はこれを使って即席の喜多郎miniKORG 700Sリードを店頭で作りました。

 miniKORG 700Sは喜多郎さんだけでなく、シンセサイザー黎明期のキーボーディスト達に多用されたのですが、このFat Saw Leadはそういった人達がminiKORG 700Sで出していた音に似ています。

 和製キース・エマーソン?の難波弘之(なんば・ひろゆき)さんが、昭和60(1985)年に出したアルバム「ブルジョワジーの密かな愉しみ」のタイトル曲の間奏部分のリード音はminiKORG 700Sを使っているのですが、たしか音がFat Saw Leadに似ていたような気がします。ちなみにアルバム「ブルジョワジーの密かな愉しみ」に添付されたリーフレットには、各曲にどんなシンセを使ったかが記されていました。キーボードマガジン誌読者向けだそうです。

 本題に入ります。Fat Saw Leadを呼び出したら、まずMIX/MODのバランスつまみをオシレータ1側、つまり左いっぱいに振り切らせてください。オシレータは一つしか使わないからです。

 そしてアンプのオーバードライブをオフ(ランプを消灯させる)にしてください。不必要です。フィルターのレゾナンスもMIN方向へ振り切って0にしてください。

 オートベンドが邪魔だと感じるのであれば、ピッチENVのデプスをセンター位置、つまり0にします。そして一旦ポルタメントをオフにしてください。これらを最初に済ませておいた方が後述するパルス幅やカットオフの設定が容易です。

 オシレータ1の波形をパルス波にし、ピッチを右に振り切って1オクターブ上げます。ディチューンはセンター位置にします。

 そして次が最も重要なパルス波の幅の設定です。PW/FEEDBACKの位置をセンターから左へ2目盛り分くらい動かします。音を聴きながら慎重に動かしてください。喜多郎miniKORG 700Sリードとぴったり来るポイントが見つかると思います。ここまでで既にけっこう似てきたのではないでしょうか。参考までにRoland V-Synthシリーズのアナログモデリング部のパルスウィズの場合、-21で最も似ます。

 カットオフは耳で確認しながら好みのポイントを見つけてください。

 Fat Saw LeadのENVはおそらくフィルター/アンプとも、サスティンレベルを最大値にした形になっていると思います。アタックタイムやリリースタイムを調整してみてください。

 先程ピッチENVのデプスを0設定してオートベンドを切っておく所作を記しましたが、実はFat Saw Leadのオートベンドは、それ自体が喜多郎miniKORG 700Sリードのオートベンドと結構似ています。先程0にしたデプスをマイナス方向へ動かしただけでも復元できるのですが、SH-201はピッチENVが簡素なので、アタックタイムを0、ディケイタイムを低めに、そしてデプスをマイナス方向へ動かしただけで、一からあのオートベンドを作る事ができます。

 ビブラートはLFOのディスティネーションで設定するのですが、SH-201に関してこれがくせ者で、効果がかかっていない状態からかかり始めた時のデプスが深過ぎるのです。どうも微妙な設定がしづらい。パソコンのエディタを使うとまた別なのかもしれませんが、私にとってSH-201の受け入れ難い部分です。フェイドインタイムは設定(LFOボタンを押しながらRATEつまみを回すという想像を絶する方法)できてもディレイタイムに関するパラメーターは無いので、ベンダーレバーを使って手操作でかけてください(これも効果がきついんですけど…)。

 ポルタメントはポルタメントボタンを押しながら、音色番号の1〜8を選ぶとレイトが設定できます。SOLO-LEGATO/SOLOを点灯させるとレガートの時だけポルタメントがかかるようにできます。

 SH-201の内蔵エフェクターには、ディレイとリバーブがあります。パラメーターが簡素なので容易に設定できると思います。

 以上、KORG M3及びRoland SH-201で店頭で喜多郎miniKORG 700Sリードを作る方法を紹介しました。
「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」
と思慮や試行を放棄して実機やレアモデルを買いに走るよりも、今手許にある、あるいは手に入りやすいデジタルシンセサイザーで迫れるだけ迫ってみて、自分が作った音と目標とする音のギャップを分析しながら音を作り進めてみてはいかがでしょうか。

 私の場合、仮に“あの音”に完全到達できなくても、いつの間にか自分の音になっている事がままありました。これはデジタルシンセが、数多の、そして変化の精度が細かいパラメーター群を有しているからだと思います。今回自分の手の内をほんのひとつまみ明かしたのは、そういった事をこのブログを見てくださっている皆さんに、実感していただきたかったからです。

 個々のシンセサイザーの使われ方が、屈折した執着を含まない形で、もっと濃厚になればと思います。道具として割り切られた上で、使いこなされ、使い尽くされ、使い古されるものであってほしいと思います。