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フライングジュピター Roland JUPITER-4

 昭和58(1983)年10月9日、喜多郎さんは大阪城ホールの柿落とし公演を行ないました。これは同年8月19日名古屋城から始まった「KITARO SUMMER TOUR'83」の千秋楽です。

 私はこの公演の聴衆の一人だったのですが、終演後に買ったパンフレットに添えられた紙片を見て腑に落ちない事がありました。

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 その紙片には演奏者達の氏名や使用楽器、ツアーのレパートリーが記されていたのですが、その4曲目に「フライング・ジュピター/FLYING JUPITER」とありました。「フライングジュピター」という曲は、公演の内容を思い出しても心当たりがありませんでした。大阪城ホールでは披露されなかったのかもしれません。

 ちなみに紙片のレパートリーにあった「ANGEL QUEEN」(映画「1000年女王」主題歌シングル「星空のエンジェルクイーン」のB面)も、この公演では披露されませんでした。

 「フライングジュピター」は喜多郎さんの作品の中には見当たりませんし、その後の公演で披露されたとかレコード化されたとかいう事を仄聞する事もありませんでした。

 17年後、この「フライングジュピター」とは、喜多郎さんのいくつかの曲に収録されている「ポコポコ…」という効果音の事だと知りました。「フライングジュピター」が1楽曲としてどういう形で披露されたのか今となっては私には確かめようがないのですが、一つだけいえる事は、この「ポコポコ…」という音はRoland JUPITER-4で作られているという事です。


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 1980年代初頭の喜多郎さんのステージには、このJUPITER-4が予備用のmini KORG 700S800DVの横に置かれていました。

 当ブログではこの「ポコポコ…」というランダムトーンの事そのものを“フライングジュピター”と呼ばせていただきます。それにしてもJUPITER-4で作った音だから「フライングジュピター」なのでしょうか…。そういえばライブアルバム「喜多郎イン・パースン」には「九月十八日」という曲が入っています。昭和55年9月18日にできたからだそうです。

 Roland JUPITER-4は、国産のキーアサイナー方式のプログラマブルアナログポリフォニックシンセのはしりといえるモデルで、最大発声数4、オリジナル音色8種を記憶させる事ができるのと、それとは別にボタン一つで選択できるメーカープリセット音10種を備えていました。1声あたり1VCO+サブオシレータ(1オクターブ下の矩形波)、VCF/VCAに独立してENVを備えています。

 フライングジュピターにはアルペジエータが使われているのですが、JUPITER-4のアルペジエータは、かつて私が使っていたアナログシンセKORG Mono/PolyRoland SH-101のそれよりもより凝った事ができるようになっていて、モードそのものはアップ/ダウン/アップダウン及びランダムなのですが、アップ/ダウン/アップダウンの場合、アルペジオのパターンに押鍵した順番が反映されるようになっています。

 コルグのワークステーション機のアルペジエータの場合、ソートのチェックを外しておくと同様の効果が出せます。

 思いつくだけでも、「星雲」(アニメーション映画「1000女王」オリジナルサントラ盤)「朝もや」(アルバム「天竺」)のフライングジュピターのアルペジエータのモードはアップ。「砂漠の残照」(アルバム「天竺」)「地球創成」(アルバム「飛雲」)はアップダウン。そして「流」(アルバム「氣」)の終端や「THE FIELD」(アルバム「THE LIGHT OF THE SPIRIT」)はランダムだと思います。

 またNHK特集「シルクロード」第2部では、沙漠(さばく)の陽炎(かげろう)や蜃気楼の映像のバックに、ランダムモードのフライングジュピターのみが鳴っていた記憶があります。

 今回は「THE FIELD」を参考にしました。私が所有するKORG TRITON Le 61及びMS2000Bのどちらでも実に上手く再現する事ができました。シンセ音色関連の記事の内、「東日流笛」の東日流笛 YAMAHA VL1以外のこれまでの全音色同様、今日この音色を出すにあたって実機を用意する事の意義は微塵もありません。

 先にアルペジエータの設定から行ないます。私はアルペジエータを実行させながら音を作りました。

 アルペジオパターンはランダム。テンポは106。オクターブは3。レゾリューションは16分音符(符尾が2本の記号)を選んでください。ラッチをオン。

 そして鍵盤「ソシミ」を押してください。ラッチをオンにしているので押さえ続ける必要はありません。

 次にシンセサイザー部分の設定について記します。ごく短い減退音であり、設定は容易です。

 発声はモノフォニック。オシレータは一つでいいのでシングルモード。オクターブは8’にしました。

 オシレータ波形に関して、実機の場合VCOの矩形波をこもらせたのかVCFを発振させたのか(JUPITER-4は発振しないかもしれません)判らないのですが、デジタルシンセでの音作りではサイン波が適当です。私はTRITON Leでこの音を作るにあたってSine-JPを使いました。JUPITER-4のVCOにはサイン波は無いのですが、JUPITER-8のVCO2にはあります。Sine-JPはあるいはそのサイン波をDWGSで模した波形なのかもしれません。ビブラートやピッチEGは使わないようにしてください。

 フィルターの設定はカットオフをこもり気味にしてください。フライングジュピターは曲中の後ろの端の方で鳴っている事が多いパートです。レゾナンスは0。ベロシティやEGもかからないようにしてください。モジュレーションをかける必要もありません。

 アンプ部もベロシティがかからないようにしてください。EGはアタックレベルを最大値、他の全てのレベルを0、アタックタイムも0にしてください。フライングジュピターに関して、アルペジエータのゲートタイムとEGのディケイタイム、リリースタイムには相関関係があり、仕上がりを決定づける重要な要素です。どう設定するかをあえて記しません。ご自分で考えてみてください。

 ディレイやリバーブもお忘れなく。ちなみに私はTRITON Leの内蔵エフェクト、アーリーリフレクションとスムースホールを使いました。

 私は出来上がったこのフライングジュピターを、小音量でですが部屋の中で流しっぱなしにしている事がよくあります。至極簡単にできる音なのですが、この音色単体で何だか環境音楽になっているような気がします。


平成24(2012)年4月17日追記。

 TRITONシリーズの場合、アルペジエータ実行中に音色をエディットすると、アルペジオが狂い出す事があります。TRITON Le、TRITON STUDIO 61で現象を確認しました。

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by manewyemong | 2009-07-14 18:41 | シンセサウンドメイクアップ | Comments(0)

シンセサイザー、デコラティブジャパン(絢爛な日本)文化、絵巻、屏風、浮世絵、都市散歩、神社が好きです。鈴木春信の春画「風流艶色真似ゑもん」にちなみました。


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