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「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音からの続きです。

 これまで宇宙戦艦ヤマトの姿は、波動砲の砲門とバルバスバウ(球状艦首)に目線を置いてデフォルメしたアングルが多く、それは今回の映画のポスターや波動砲発射時のカットに踏襲されているのですが、私は子供の頃からこの構図が好きではありませんでした。小学生の頃、作ったプラモデルを様々にかざしながら、動くヤマトをこんな角度から観てみたいなと夢想したものです。

 今回のCGで描かれたヤマトは、デフォルメを排した現実的な見え方が多く、子供の私がプラモデルのヤマトを手にして見ていたアングルがスクリーンで展開していて本当に驚きました。あるいは今回ヤマトを描いたスタッフも、子供の頃、私と同じようなことをしていたのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト」のメカの姿は、(あくまで空想上の)宇宙船のデザインの流れを変えたと思います。それまで大阪万博のパビリオンのような滑らかなものが主流だったのが、無骨でいて生物的なものへと変わっていったと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」は、これまでの松本零士さんの漫画の雰囲気から外れたものになっています。CGで描き動かすという前提があるからか、緻密に“設計”されたものになっていると思います。

 地球艦隊の艦艇は、これまでのヤマトのものがある程度踏襲されています。テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト2」に出てきた、旗艦アンドロメダや主力戦艦の形状やカラーリングが取り入れられています。セル画時代よりも遥かに存在感を持ってスクリーンに浮かんでいました。

 1隻あたり10万人を収容できる地球の宇宙移民船の姿は、大阪市立科学館か大阪梅田及び東京秋葉原にあるヨドバシカメラさんの建物に似ています。スクリーンではこの移民船の大船団が、何だか湾岸3丁目で働いていた頃、東京湾に面した川でよく見かけたボラの大群のように見えました。

 ベルデルやフリーデの戦艦や艦載機はいずれもプランクトンや腸内菌のような姿をしています。後に記す航海灯の描き方が一考されていて、どんな形状をしているのかスクリーンでははっきりとは捉え難かったのですが、それゆえ異様な存在感がありました。

 SUSの要塞を守る大量破壊兵器の形状が、東京都庁に似ています。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の原案者の方は、現在都知事をされています

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」のメカは、CGで描かれつつもかつてのセル画の風合いも継承しています。映画パンフレットによると、セルシェードという技術を駆使したそうです。かつてのヤマトも動くセル画だけでなく、1枚の背景画として描かれたりしたのですが、今回はより様々な質感のヤマトが見られました。省略して描かれがちだった部分(パルスレーザー等)も緻密に描かれています。

 地球やSUS以外の宇宙艦の放つビームの弾道に関して、セル画時代の粘着感と、弧を描いて意外にゆっくりと目標に到達する描き方が継承されています。しかしSUSのビームだけは、鉱物質というか、光というより光る石の槍が飛んでいる感がありました。極めて不確かな記憶なのですが、映画「ヤマトよ永遠に」冒頭の戦闘爆撃機が地球の都市を空爆するシーンの、通常の透過光ではなく、たしかアルゴンレーザーを光源にして撮影されたビームが、このSUSのビームに少し似ていたような気がします。

 宇宙艦の航海灯や窓の灯りの見え方が、セル画時代よりも鮮明になっています。ソフトウェア上で光源を指定すると、光だけでなく影まで付けてくれるそうで、立体感が出ています。劇中に登場する宇宙艦に関して、その形状と光る部分がリアルだからか、なんだか宇宙船というより高層ビルが宇宙空間に浮かんでいるような感じがしました。

 形状や性質、光源、動き等に関する情報を打ち込むとソフトウェアがシミュレーションしてくれるというのは、映像に現実感を持たせたり、手描きのムラを排することができるといったメリットはあると思うのですが、その一方で、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」を観ていて、手描き故の非現実的な動きや視点が無くなっていることの寂しさも感じました。

 昨夏亡くなったアニメーターの金田伊功(かなだよしのり)さんの炎や光、人物やメカの動きは、時に物理的には絶対にあり得ないものがありました。

 例えば映画「1000女王」で、ラーメタル機が画面中央奥から右手前に突進してくるカット、一瞬、機体の右半分がせり出しています。こういうことは物理的には絶対に起こらないのですが、画面に独特の加速感が出ていました。

 また映画「銀河鉄道999」の同じく金田伊功さんが担当した惑星メーテルでの戦闘シーンにおいて、射撃や爆発等の照り返しや火炎の動きが実に細かく描き込まれているのですが、これはこの場所で射撃や爆発が起こればどう光るか、ではなく、描き手の、どう光らせたいか、という意図が反映された映像でした。

 物事には、揺り返し、反動が必ずあると思うのですが、今挙げた物理ではなく意図を体するスタイルに対する欲求が高まった時のことを考えると、あまり今何もかもを性急にCG化してしまうと、将来、金田伊功さんのような人が現れる素地が完全に失われるような気がします。

 アナログシンセサイザーが大嫌いな私が、時にアナログシンセの記事を書くのも、私が知っていることをネット上に置いておけば、将来アナログシンセサイザーに興味を持った人の役に立つのではないかという意図があるからです。蒐集癖系シンセ趣味人の物欲譚や思い入れ話なんか見聞きしても、全く役に立ちませんから。

 かつて「宇宙戦艦ヤマト」が放映されていた昭和49(1974)年頃、ゲイラカイトというアメリカから来た凧(たこ)が流行っていて、私も大きな目玉がトレードマークのスカイスパイを揚げていました。時は流れて平成22(2010)年の正月、淀川の河川敷でスカイスパイが揚がっているのを見て、感慨深いものがありました。

 善きにつけ悪しきにつけ、人間ってそうそう次から次へと新しいものを創っていく力は無いというか、必要としていないのかなと思いました。誰かが思い出したようにゲイラカイトを揚げるのと同じく、今後も「宇宙戦艦ヤマト」は作られていくのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」が発売されます「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形に続きます。


ゲイラカイト(株式会社AG)
http://www.agport.co.jp/products/toy/gayla.html
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by manewyemong | 2010-01-11 10:07 | アニメーション映画 | Comments(0)

「あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買いにいくか!」よりも、「価値あるものを買うのではなく自分で価値を作れる人間は強い」(岡崎武志「女子の古本屋」より)でありたいと思います。


by manewyemong