令和3年(2021年)1月18日、コルグはプログラマブルアナログモノフォニックシンセサイザーminiKORG 700FSを発表しました。
昭和48(1973年)の国産初の量産型シンセサイザーmini KORG 700及びその翌年に発売されたmini KORG 700Sの、生産台数限定の復刻機です。
この記事を書いている現在、まだ取扱説明書が公開されていないので、詳らかなことは書けず、事実誤認もあるとは思うのですが、コルグのウェブサイトの記述や画像を参考に記したいと思います。取扱説明書の公開があり次第、大幅な加筆、訂正があることをお含み下さい。
基本的にはmini KORG 700Sがベースになっていると思われるのですが、14音色のプログラマブル機能があり、アフタータッチ、ジョイスティック、内蔵エフェクターとしてスプリングリバーブ(スプリングリバーブを模したデジタルリバーブではなく本当にバネを用いたリバーブ)が加わっています。
フロントパネル左端奥にプログラマブル機能に関する操作子が集約されています。書き込み、バンク1/2を切り替える、1〜7音色指定、そして、音色設定操作子群の現状が発声に反映されるPANELのボタンがあります。もちろんデジタルアクセスコントロールではないので、設定値を見ることはできません。現時点では判明していませんが、USBを介してパソコンやタブレットで、という可能性は考えられます。
mini KORG 700には無く、mini KORG 700Sの鍵盤左側のスペースに増装された二つ目のオシレータが、miniKORG 700FSにも継承されています。ピッチに関してmini KORG 700Sではたしかコースチューンだけだった記憶があるのですが、miniKORG 700FSではファインチューンも加わっています。また、ジョイスティックが増装されていて、ピッチベンドやビブラート、グロウル効果を奏者が任意の所でかけられるようになっています。





主だった操作子群が鍵盤の下に配されているというのが、mini KORG 700、mini KORG 700Sの姿を際立たせている理由の一つだと思うのですが、これ故に、喜多郎さんが右手人差し指から小指を使って鍵盤演奏をしている時に、親指を使って操作をしているのを公演で観ました。
miniKORG 700FSがこれを継承してくれていて嬉しい。音色に関しては、私がコルグやローランドのデジタルシンセで作った音色でたいていの人は騙せるのですが、この操作感だけはこの姿でないとどうしようもない。この鍵盤の下の操作子群を見ていきます。
マスターボリュームの次に、スプリングリバーブの効果の深度を設定するスライダーがあります。mini KORG 700、mini KORG 700Sにはありませんでした。昭和54年(1979年)に我が家に来たTechnics Space T5というステレオコンポのアンプにスプリングリバーブがあってRoland SH-101等に使っていたのですが、ある時、これにイレギュラーな?振動が加わったところ、ものすごい爆音になりました。miniKORG 700FSに衝撃を加えたらどうなるのでしょうね。


mini KORG 700、mini KORG 700S、800DVの頃、コルグはVCFのカットオフフリケンシーのことをトラベラーと呼んでいて、miniKORG 700 FSにも継承されています。有名なローパスフィルター/ハイパスフィルターのスライダーを交差させない為の突起の付いたキャップが被せられているのですが、miniKORG 700 FSには突起の無いキャップも付属していて、ユーザーが換装できるようになっています。
トラベラーの右に後のシンセでいう所のEGがあります。アタックは文字どおりアタックタイム、パーカッション〜シンギングは減衰系か持続音系かを一つの操作子で決めます。これらは値が大きくなるほどスライダーは下になります。
オクターブ、VCO波形の選択つまみが並んでいます。三角波は喜多郎 mini KORG 700Sリードでも書きましたが、とても三角波に聴こえない独特の趣きがあり、喜多郎さんが多用しています。この三角波、コルグではなくローランドが自社のPCM(700 Triangle)、SuperNATURALシンセトーン(TRI B)、ZEN-Core(700 Triangle、TRI Pulse Width:42)というバリエーションで用意しています。はっきり言って、たいていの人は騙せます。
1980年代半ばに出たあるシンセサイザー本で、コルグ、ローランド、ヤマハの技術者に、好きな他社機を問うたところ、ローランドの方はmini KORG 700S、800DVを挙げていました。ちなみにコルグの方はBOSS DR.Rythm、ヤマハの方はお答えにならなかったと記憶しています。
話をminiKORG 700FSに戻します。
カラフルなレバーが続くのですが、ブライト(レゾナンス)、ディレイビブラート、ベンダー(オートベンド)等も含め、これらはオン/オフを含む規定値の選択です。
リピート(トレモロの速さ)、ビブラートのレイトや効果の深度、ポルタメントタイム(実際はレイトだと思います)は、スライダーで設定するのですが、ここも、遅いほど、深いほどスライダーを下げます。
リアパネル側を見ると、USB、MIDI IN、CV IN、GATE IN、音声入力やステレオの音声出力端子があります。
コルグのminiKORG 700FSのウェブサイトの、試作1号機やコルグデカオルガン、mini KORG 700、mini KORG 700S、800DV、MS-20等の開発者、三枝文夫(みえだ・ふみお)さんの回顧記に、
700FSはHz/VoltだがOct/Volt方式の機器も接続できるように設計されている
とあります。miniKORG 700FSはHz/V機ながら、CV IN、GATE INはインターフェイスMS-02を介さなくとも、アナログシンセ界のディファクトスタンダードともいうべきOct/V方式の機器と併せて使えます。
ステレオの音声出力はスプリングリバーブの効果をより活かす働きがあると思います。
miniKORG 700FSは、日頃、
あのシンセサイザー奏者が出しているあのシンセサイザー音はあのシンセサイザーで出してんのか!いっちょあのシンセサイザー買うか!
な人間をクサしてきた私が、絶対に買ってはいけないシンセサイザーであり、改めて操作子群を見返すと、とても私の音色に対する考えを汲んでくれるモデルではないのですが、鍵盤の下にマニピュレーションの為の操作子群があるという独特の形状は、何らかの形でデジタルシンセにも採り入れていただけたらと思います。
否、だまって買うかもしれませんけどね。
miniKORG 700FS、令和3年(2021年)6月発売予定。価格は分かりません。
miniKORG 700FS
KITARO meets miniKORG 700FS
コルグ制作の喜多郎さんのminiKORG 700FSに関するコメント映像。
#
by manewyemong
| 2021-01-18 21:47
| シンセワールド
|
Comments(0)