人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」

 「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」は、昭和56(1981)年夏に公開されたアニメーション映画「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」のオリジナルサントラ盤です。2枚組のLPレコード及びカセットテープが発売され、後年、1部の曲を収録しない形でCD化されました。そして平成22(2010)年2月24日、今度は完全な形でのCDです。メディアにはHQCDが使われています。

 作曲は東海林修(しょうじ・おさむ)さん。「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」では、THE GALAXY名義で自らシンセサイザーを演奏しています。

 東映動画からBGM担当の話が来たおり、全曲をシンセサイザーでと申し入れたものの、東海林さん自身の危惧から1曲だけ効果的に、ということになり、純粋なクラシックスタイルの編成のオーケストラによる作品になったのだそうです。「序曲~パルチザンの戦士たち~」にはハーモニカが入ります。

 収録曲は、ディスク1が「序曲~パルチザンの戦士たち~」「若者に未来を託して」「メインテーマ~新しい旅へ~」「謎の幽霊列車」「車中にて~LOVE LIGHT~」「メーテルの故郷、ラーメタル」「再会~LOVE THEME~」「黒騎士ファウスト」「過去の時間への旅」。

 そしてディスク2が「青春の幻影」「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」「惑星大アンドロメダ」「生命の火」「崩壊する大寺院」「サイレンの魔女」「黒騎士との対決」「戦士の血」「終曲~戦いの歌~」「さよなら銀河鉄道999~SAYONARA~」。

 「LOVE LIGHT」「SAYONARA」は、メアリー・マッグレガーさんが唄ったボーカルナンバーです。映画ではエンディングタイトルロールに「SAYONARA」が流れました。これらの曲に東海林修さんは関わっていませんが、アルバム「DIGITAL TRIP さよなら銀河鉄道999シンセサイザーファンタジー」において東海林さんのシンセサイザーによってインストナンバーとしてカバーされました。

 「メインテーマ~新しい旅へ~」は、999号が地球の駅(戦争であらかた破壊されている)から発車するシーンに流れました。空へ伸びているカタパルトレールが崩落していく上を999が走っていくという緊迫感、そしてその危機を脱して宇宙へ飛び出すと太陽が顔を出すという緩急ある描写に沿って曲想が変わっていきます。

 この「メインテーマ~新しい旅へ~」は、平成17(2005)年7月から9月にかけてフジテレビ系列で放映されたドラマ「電車男」で、なぜかBGMとして頻繁に用いられました。

 「再会~LOVE THEME~」は、命からがら危機を脱してきた主人公星野鉄郎が、早朝のラーメタル駅のホームでメーテルと再会するシーンに流れました。

 メーテルのデザインは前作と全く変わりがないはずなのですが、今作品ではより美しくなっていて、作画監督小松原一男さん(故人)は周囲の人から女性観が変わったのかの冷やかされたそうです。このシーンの蒸気機関車の湯気の向こうに見えたメーテルは、当時13歳だった私にもたしかにまぶしかった記憶があります。

 そしてこのシーンが甘美でどこかほろ苦い感じがしたのは、ストーリーやビジュアルだけではなく「再会~LOVE THEME~」の効果もあると思います。東海林さん自らライナーノーツにおいてアルバム中屈指の佳曲としています。「再会~LOVE THEME~」は再会のシーンだけでなく、終盤の鉄郎とメーテルの別離のシーンにも流れました。

 ちなみに「再会~LOVE THEME~」をはじめ「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」のピアノ演奏は、羽田健太郎(はねだ・けんたろう)さん(故人)です。

 「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」は、アルバム中唯一シンセサイザーによる多重録音作品です。999号が終着駅惑星大アンドロメダに近づいたシーンに流れました。このシーンの唯一はBGMだけでなく、アニメーションそのものも通常のセル画のものとは異質の、グラフィックアニメーションが使われました。画面の1点から絵の具のようなものが吹き出してきてそれが鉱物やガラス片を思わせる映像へとめまぐるしく変わってきます。

 「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」で使われたシンセサイザーの紹介はありませんが、曲中、ミキシングコンソールのオートパンポット機能を駆使して、終始ステレオ音場を左右に移動し続ける「ヒーン」という音は、ライナーノーツによるとコルグのシンセで作ったとの事です。

 映画の予告編のBGMはシンセサイザーのよるもので、おそらく「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」のプロトタイプではないでしょうか。

 曲中、「パピパーピッ、ポピパーパッ、パピポーピッ、ポピパピポッ…」と聴こえるフレーズがあるのですが、この音を聴いた当時、冨田勲さんがシステムシンセサイザーmoog III p(モーグスリーポータブル)で出している“パピプペ親父”(「ゴリウォーグのケークウォーク」「火星」「木星」「パゴダの女王レドロネット」等)に似ていると思いました。

 「崩壊する大寺院」は、退避していく999号を追って戦闘衛星が浮上し、後ろから車両を次々と撃ち落とし、救援に来たアルカディア号と激しく砲戦を繰り広げるというシーンに流れました。めまぐるしく変わっていく映像に曲の展開が完全に合致しています。編集して曲を合わせるのではなく、譜面、つまり編曲の段階で既に完全に合わせているのです。

 またこのシーンを描いたのは金田伊功さんで、映画「1000年女王」についてで「信貴山縁起絵巻」の「飛倉巻」に似ているとしたカットもあります。ビームの照り返しや爆発の描写は、金田伊功さんの特徴がよく出ています。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形でも触れましたが、ソフトウェアによる演算ではこんな動きは導き出せないと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト」の編集版の劇場公開に始まるアニメブームの頃、BGMがとても大掛かりなものでした。シンセサイザーを始めた頃、私は様々な音を模写したのですが、この頃のアニメーション映画の音楽は大編成のオーケストラが多く、ストリングスのトレモロ奏等各楽器の様々なテクニックが、クラシックよりも大げさに強調されていて分りやすく、本当に勉強になりました。

 何もかもが、小ぶりな、あるいは小作りな、そして姑息な感じのする今の時代に、この頃のアニメーション映画のありとあらゆる要素が、なんだか新鮮に感じます。

「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」_a0060052_12321424.jpg
 
 CDを引っ張り出して思わず笑みが…。アナログレコードを彷彿とさせます。今の時代、思い出は、時にアイディアへと変わるのだということを、ひしひしと感じます。

 「DIGITAL TRIP さよなら銀河鉄道999シンセサイザーファンタジー」へ続きます。


交響詩 さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-
(Colombia Myusic Entertainnmenntより)
http://columbia.jp/prod-info/COCX-36077-8/

by manewyemong | 2010-03-31 12:38 | アニメーション映画 | Comments(0)