「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」を観ました

 約1年前、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形の最後に、

 かつて「宇宙戦艦ヤマト」が放映されていた昭和49(1974)年頃、ゲイラカイトというアメリカから来た凧(たこ)が流行っていて、私も大きな目玉がトレードマークのスカイスパイを揚げていました。時は流れて平成22(2010)年の正月、淀川の河川敷でスカイスパイが揚がっているのを見て、感慨深いものがありました。

 善きにつけ悪しきにつけ、人間ってそうそう次から次へと新しいものを創っていく力は無いというか、必要としていないのかなと思いました。誰かが思い出したようにゲイラカイトを揚げるのと同じく、今後も「宇宙戦艦ヤマト」は作られていくのかもしれません。

と書きました。私がこんな事を思っていた頃、既に「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」は、俳優さん達の出演部分を撮り終えていたそうです。

 この引用部を象徴するような事が、「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」上映時にありました。本編上映前の他作品の予告編のうち、「あしたのジョー」「トロン:レガシー」は、何らかの形で元になる作品が過去に存在した映画です。私は中学2年の夏に「あしたのジョー2」を、そして「トロン」を翌年の秋に観ました。

 洋/邦画を問わず、全く新しいストーリーやヒーロー/ヒロインを生む事が、難しくなっている事をひしひしと感じます。

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」は現在公開中であり、物語の詳細をここに掲げる事はしません。子供心にも話の齟齬が目について仕方がなかったアニメのヤマトシリーズよりも、はっきり言って完成度は高いと思いました。

 かつて我々は、アンテナの付いたヘルメットをかぶり、ピエール・カルダン風の服を着て、錠剤のような物を食べ、スリッパのような形の空中自動車に乗って移動するといった未来を想像していました。しかし今、そういう未来は来そうにない事を予感しています。「ヤマト」や映画「ブレードランナー」といった映像作品は、むしろ我々の文明がそうそう劇的に進化しない事を予想し始めた、はしりではないでしょうか。  

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」が描く西暦2199年の人々の文明の利器は、基本的に平成22(2010)年のそれと変わっていません。第一艦橋や波動エンジンの機関室等の様々な機器の操作子は、我々が扱っているものと全く変わらない。2199年の人々が見たらおそらく相当滑稽でしょう。

 しかしながら、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で、“ついこの間の過去”をやや詩情を織り込みつつ緻密に再現した山崎貴(やまざき・たかし)監督は、未来に突拍子もない文明を構築するくらいなら、我々の“今ここ”を未来に据えようと考えたのかもしれません。

 登場するメカに関して地球側のものは、ヤマトをはじめ概ねアニメでのデザインが踏襲されています。

 ヤマトは手描きのアニメではとてもできない作り込みが為されていて存在感があり、艦橋の窓から中で働く乗組員が見えるまでになっています。

 艦載機の格納庫の場面は、一見してフェリーボートでのロケだと判るのですが、少しも貧相な感じがありませんでした。また、火星でガミラスに敗れ帰還した沖田艦長と司令長官が建造中のヤマトへ向かうシーン、おそらく東京都内に造られた雨水を一時的に貯める為の巨大な縦穴(名称や所在地等を忘れました)で撮ったものではないでしょうか。二人の台詞にかかるリバーブも、エフェクターではなく生録されたものかもしれません。全編通じて、場面撮影を特撮かセットかロケかのアサインが絶妙だと思いました。

 艦載機ブラックタイガーが、アニメでは後継機であるコスモタイガーよりも格好よく見えました。また木村拓哉さん演じる主人公古代進の愛機コスモゼロは、劇中ちょっとした変身をするのですが、なんだか愛嬌を感じました。

 昨年の「宇宙戦艦ヤマト復活篇」もそうだったのですが、CGで描かれた戦闘機のドッグファイトシーン、後厄を過ぎた私の動態視力では、何が起こっているのか捉える事ができませんでした。

 沖田艦長が搭乗する旗艦等の戦艦の姿は、アニメのガミラス艦を艦首艦尾逆にし、地球風の艤装(ぎそう)を施した感があります。火星の脇を航行する地球艦隊を後ろから捉えた映像は、どうもそのことをかつての「ヤマト」を知る観客にアピールしているように思えました。

 「ヤマト」シリーズ第1、2、3作の敵側のプロダクトデザイン?は、およそ我々地球人の感覚から離れた生物的なフォルムを持っていましたが、今回はより怪異感を増しています。「ヤマト」というより、恩地日出男監督のアニメ映画「地球(テラ)へ…」のそれに少し近い気がしました。

 ヤマトに拿捕されたガミラス機から現れたガミラス兵のポージングが、なんだか金田伊功さんのアニメのように見えました。

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」のパンフレットには、監督やスタッフから、設定デザインやVFXに使用したアプリケーションの品名が明かされています。ちなみにガミラス兵のデザインは、“ZBrush”というコンピュータのデスクトップ上で粘度を扱うようにして造形できるものが使われたそうです。

 音楽や音についても少し記しておきます。

 佐藤直紀(さとう・なおき)さんの手によるBGMには、かつて宮川泰(みやがわ・ひろし)さんが作曲したアニメ版の主題歌や「無限に広がる大宇宙」(「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音参照)が、モチーフとして織り込まれていました。

 川島和子さんの歴史的なスキャットによる「無限に広がる大宇宙」は、先の小惑星探査機はやぶさ帰還を特集したテレビの映像で、滑稽なまでに多用されていました。「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」でのスキャットはYuccaさんです。先般放映が終了した、同じく佐藤直紀さん音楽担当の大河ドラマ「龍馬伝」でも、Yuccaさんのスキャットが聴けました。

 効果音に関して一つだけ記すと、アナライザーから出る電子音、「スターウォーズ」のR2D2と似ています。アナライザーがR2D2から影響を受けていると思っている人が、外国人はもとより若い日本人にもいるのですが、もちろん実際は逆です。しかしながら今回のアナライザーの音のおかげで、また誤解されてしまうような気がします。「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」で唯一、納得のいかなかった個所です。ただ、声をアニメ版と同じく緒方賢一さんが担当したのは嬉しかった。


SPACE BATTLE SHIP ヤマト
http://yamato-movie.net/index.html

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by manewyemong | 2010-12-07 13:15 | アニメーション映画 | Comments(0)