YAMAHA CS-5試奏記

 implant4さんでYAMAHA CS-5を試奏させていただきました。

 上手く撮れなかったのとリアパネル側を撮り忘れたのですが、画像を添えながら雑感を記したいと思います。懐古記の要素が加わっています。

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 アナログモノフォニックシンセサイザーYAMAHA CS-5は、私がシンセに興味を持った時には既に登場していた、当時の言い方をすればリードシンセサイザーの中でも、簡便で安価なモデルです。

 ヤマハのモノフォニックシンセの普及モデルCS-15やCS-10、そしてこのCS-5は、後年の評価がKORG MSシリーズやRoland SHシリーズほどには高くない(但し海外では高い)のだそうですが、当時、私はそれらよりも気に入っていました。

 当時のライバル機、Roland SH-2、SH-09のスライダーが、演奏中に大雑把に操作する分には良いのですが、私が狙っているポイントを探す上での微妙な操作がしづらく、また、音作りのバリエーションに長けたKORG MSシリーズも、その豊かな音作りの源であるパッチコードが、演奏する時に手にかぶって来る事があり、邪魔に感じられました。

 また当時、YAMAHA CS-10及びCS-15は、店頭での価格が10万円を切っているシンセの中で、唯一VCF/VCAが各々独立して完全なADSRタイプのEGを持っていました。Roland SH-1、そしてKORG MS-20ですら、二つのEGのうち片方はアタックタイムとリリースタイムというものでした。

 店頭価格10万円を切るアナログシンセでVCF/VCAが独立してEGを持つモデルは、その後、昭和58(1983)年秋のKORG POLY-800まで登場しませんでした。

 しかしながら結局、私のシンセ第1号機はRoland SH-101になったわけですが…。

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 傾斜角のあるフロントパネル。この点、30年後のKORG M50は、これらモノフォニックのYAMAHA CSシリーズに似ている気がします。

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 外部入力/ノイズジェネレータとLFO。LFOはレイト(スピード)だけでディレイタイムはありません。波形はサイン波/下降型鋸歯状波/サンプル&ホールドで、三角波や矩形波はありません。

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 VCO。チューニング、オクターブ、ビブラートのデプス、ポルタメント、そしてなぜかLFO変調のPWM(パルスウィズモジュレーション)だけで、通常のPWはありません。

 ポルタメントのカーブの話をポルタメントやEG/ENVのカーブをつぶやくで書いたのですが、デジタルシンセはもちろん、ポルタメントに関して世間的に評判の良いminimoogや、かつて使ったKORG Mono/Poly、Roland SH-101に対して、どうもポルタメントのカーブにしっくり来ない物を感じてきました。しかしながらYAMAHA CS-5のそれは、ちょうど私が希求していた通りのものでした。今回試奏してみて最も驚かされた点です。

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 CS-5のVCOは、Roland SH-101と同じく1VCOながら一つのオシレータ波形を選択するのではなく、鋸歯状波と矩形波/PWMという二つの波形を任意の割合で混ぜる事が出来ます。つまり、このセクションはSH-101でいうソースミキサーにあたります。外部入力やノイズの割合もここで決めます。

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 VCF。この時期のこの価格帯のシンセには珍しく、ローパスフィルター以外にハイパス、バンドパスフィルターが選択できます。私はハイパスフィルターのローファイ感が気に入りました。レゾナンスを上げきってもフィルターの自己発振は起こりません。また、キーボードフォローはありません。

 EGはオーソドックス(この頃はそうではなかったのですが…)なADSR(アタックタイム/ディケイタイム/サスティンレベル/リリースタイム)で構成され、VCF/VCAで共有しています。結構素直に私の希望に添ってくれます。この点も私がこのYAMAHA CS-5を気に入った理由の一つです。

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 VCA。ここは当時のヤマハ製アナログシンセ独特のパラメーターであるイニシャルレベルや、トレモロのデプス、そしてEGのかかり具合を制御するデプスまでありました。

 アナログシンセはもちろん、後年のアナログモデリングシンセですらアンプ部にEGデプスの無いモデルは多いのですが、CS-5には30年以上前の廉価機であるにも関わらずこの機能を持っていました。

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 電源のオン/オフボタン。ところでCS-5、ボリュームに関するつまみがどこにも無いのですが…。

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 ピッチ用のベンダーレバー。指を離すと勝手にニュートラル位置に帰って来るタイプではなく、手操作で戻さなければなりません。

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 鍵盤の感触は同クラスの他社機より良く、昭和57(1982)年に古山俊一(ふるやま・しゅんいち)さんが著した新書「シンセサイザーここがポイント」(音楽之友社刊)の、YAMAHA CS-5に関する記述内でも賞賛されていました。

 ちょうどこのYAMAHA CS-5が登場した1970年代後半から1980年代半ばまで、テレビ朝日系「土曜ワイド劇場」枠で放映された、天知茂(あまち・しげる)さん主演の「江戸川乱歩の美女シリーズ」という作品群がありました。

 鏑木創(かぶらぎ・はじめ)さんによるBGM、というより心理描写の効果音に近い音源としてよくシンセが使われていました。「ピロロローン」とか「ブー」「プー」といった類いの、当時アナログシンセを買ったばかりの人がよく作りそうな、決して凝っているとは言い難いそれらの音が非常に効果的で、「江戸川乱歩の美女シリーズ」の妖しい雰囲気、夢幻感を象徴する音として脳裏に刻まれました。

 昨日、implant4さんでCS-5を試奏した時、それらの音ばかり真似ていました。無論ワークステーション機でもできるのですが、VCFのぼんやりした輪郭のローファイ感が、私の脳裏にある、ビデオではなく16mmフィルムで撮られたであろう「江戸川乱歩の美女シリーズ」の映像を思い起こさせてくれました。

 もっとも、そばで長く聴かされたimpalnt4さんのスタッフさん達やお客さんにしたら、迷惑な話だったかも知れません。

 平成23(2011)年8月6日夜の時点でYAMAHA CS-5在庫が1台ありました。手許不如意でなければそのまま連れ帰ったのですが…。


YAMAHA CS-5
http://jp.yamaha.com/products/music-production/synthesizers/cs5/

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by manewyemong | 2011-08-07 10:49 | シンセワールド | Comments(0)