KORG T3 EX導入記

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 KORG T3 EXが来ましたで触れたワークステーション機、KORG T3 EXの導入記です。

 平成元(1989)年末、コルグは前年に出したM1に続くワークステーション機の第二弾、Tシリーズを発売しました。

 88鍵機T1、76鍵機T2、そして61鍵機T3。「T」とは、Total workstation(トータルワークステーション)から採られたと、何かで目にした記憶があります。

 ワークステーション機の一つのモデルに、61/76/88鍵機を用意する事は、その後、現行機KORG KRONOSに至る後継機群はもとより、21世紀に入ってからは他社機であるRoland Fantom XFantomG、YAMAHA MOTIFシリーズでも採られています。Tシリーズは、この一つの流れを作ったモデルといえると思います。

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 鍵盤はヤマハ製FS鍵盤。なぜか手許にある同じFS鍵盤のKORG TRINITY plusTRITON STUDIO 61よりも感触が良い。

 念の為、implant4さんにあった調整中と思われるM1も弾いてみたのですが、T3と同じ感触でした。WAVESTATION、01/W以降、TRITON ExtremeまでのFS鍵盤の感触に違いは無かったと思います。この鍵盤の感触の良さが、今回のKORG T3 EX購入の動機の一つです。

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 ジョイスティック。右へ倒した時と左へ倒した時のデプスを個別に設定する事はできませんが、+/-を逆にする事はできます。形状はM1と同じです。

 たしかPOLY-61、POLY-800/800II、DW-6000/8000、DSS-1まで続いた形状が廃され、M1からはより使いやすいものになりました。その後、コルグのワークステーション機のジョイスティックは、何度もデザインが変わりました。

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 私は今のところ、01/W、TRINITY、そして次のTRITONを跨いでなぜかKARMAに継承されて終わった、根元が出っ張ったタイプが好きです。

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 外部記憶メディアは2HDのフロッピーディスク。平成23(2011)9月現在、まだ家電量販店等で手に入れる事ができるメディアです。

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 フロントパネル。

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 ボタンや筐体の丸み等、当時流行っていた電話機の姿に似ていると思いました。

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 パラメーターを設定する方法は、バリュースライダーとINC/DECボタンだけです。

 エディット画面の送りはPAGE +/-で、カーソル位置はUP/DOWNとA~Hボタンで決めます。

 液晶画面のバックライトが、以前のオーナーによって青色に変えられていて視認性が高くなっています。また、次のWAVESTATION及びWAVESTATION A/Dのような、液晶のトランスの振動音(「ピー」という音)は聞えません。それは以前使っていたT1も同じでした。

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 モードを最も上のボタンで、そしてエディットに入るのはその下、そして音色の選択は上下2系統並んだ0~9のボタンで行います。

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 RAMボード搭載を示す「EX」のロゴの「X」が剥離して無くなっています。ちなみに私は2台持っていたWAVESTATION EXの「EX」のロゴも、拭き掃除の時に剥がしてしまいました。

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 リアパネル側。

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 M1では音色やシーケンスデータの外部記憶メディアのカードはフロントパネルに、そしてオシレータ波形カードはリアパネルに挿すのですが、Tシリーズでは揃ってリアパネルにあります。

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 「KORG T3」のロゴ。

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 MIDI OUT端子は四つあります。


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 ダンパーペダル、エクスプレッションペダル、フットスイッチ端子。ステレオ1系統+モノラル2系統ないしはモノラル4系統のオーディオアウトプット。

 M1やTシリーズのシンセサイザーエンジン部分の基本的なパラメーター群は、コルグの現行機に至るまで継承され続けています。そのルーツをたどればデジタルアクセスコントロールタイプのシンセのはしり、プログラマブルアナログポリシンセKORG POLY-61やPOLY-800に行き着くと思います。私がコルグのデジタルシンセばかり使うのは、つまるところこのパラメーター構成が性に合っているからだと思います。

 以下、M1、そしてTシリーズより後のモデルとの違いや、足りない部分について記したいと思います。

 プリセット音に関して、基本的にM1のものを継承しているのですが、なぜか、Lore、Pole等と並んで、90年代に乱用されたUniverceが入っていません。おそらく、コルグさんの何か明確なお考えあっての事ではないでしょうか。

 M1には入っていない(M1 EX、M1R EXにはある)Hard Fluteという、「ブフッ」と吹き込む感じが強調された木管系のオシレータ波形が入っています。01/Wやその後のAIスクエア音源のいくつかのモデルには入ったものの、TRINITY/TRITONシリーズには継承されませんでした。

 私は01/W FDでこの波形を使って作った吹奏系の音を気に入っていたのですが、平成9(1997)年の東京転勤時に手放して以来、長くこの音を作る環境がありませんでした。このHard Fluteが入っている事も、KORG T3 EX購入の動機の一つです。

 MG(LFO)にディレイタイムはあるのですが、フェイドタイムはありません。ディレイタイム実行後、モジュレーションの設定値が唐突に入ってしまい、ジョイスティック等のマニュアル操作ではなくオートマチックで音色を唄わせる事に関して、満足のいく効果は得られませんでした。デジタルになればフェイドタイムは設けられると期待していたのですが…。

 もっともこの頃、Roland D-50等他のモデルにもフェイドタイムはありませんでした。コルグのシンセのLFOにフェイドタイムが設けられたのは、たしかWAVESTATIONからだったと思います。この時、シンセの周期変化の径時変化にも不満は無くなりました。

 EGに関して、POLY-800以来のADBSSRに加えて、スタートレベルやアタックレベル、リリースレベルを、固定値ではなく自在に設定できる様になりました。ADSRやADBSSRのEGは、スタートレベルとリリースレベルは0固定、アタックレベルは最大値固定です。

 M1でこの環境を手に入れられた事は私にとって画期的でした。径時変化に関して鍵盤のベロシティと絡ませる形で、本当にそれまでずっと夢想していたとおりの事を実現できました。私がアナログシンセと違い、デジタルシンセを楽器とみなせる理由はここにあります。その瞬間瞬間の気持ちを、鍵盤を通じてシンセサイザーエンジンに伝えられる様になったからです。

 ただ、SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5でも触れたのですが、M1及びTシリーズのEGのアタックタイムは、バリューを最小値00から01に上げただけで緩く感じられてしまうものでした。打/撥弦系の音色のアタック感をもう少し作り込みたいと思った時に、正直満足できませんでした。もっとも、アナログシンセのEGの変化の粗雑さや緩慢さ、何の意味も無い癖に辟易していた身には、デジタルである事による径時変化のフレキシビリティを充分堪能する事が出来ました。

 M1同様マルチエフェクトが内蔵されていて、その中から二つを選んで使えます。リバーブやディレイ、フランジャーやフェイザー等が、各々コンパクトエフェクトよりも多くのパラメーターを有する形で入っていました。

 また、PS-3000シリーズやPolysixに載っていたアンサンブルも入っていました。これもより多くのパラメーターを備えていました。かつてアンサンブルエフェクト単体での商品化を希望していた身には、これもありがたかった。このアンサンブルエフェクトを駆使して、文字通りのアンサンブル系の音や笛、さまざま(2)等を作りました。ちなみにKORG M3M50、KRONOSには、アンサンブルとは別にポリシックスアンサンブルというエフェクトも入っています。

 Tシリーズが現行機だった頃、M1に比して、88鍵機T1はともかく、T2やT3をプロの演奏家のステージやテレビ出演で見る機会は、少なかった様に思います。

 小室哲哉さんがBGMを担当した、映画「天と地と」オリジナルサントラ盤の1曲目「滝」の出だしの「ボーッ」という金管系の音色は、おそらくKORG T1のプリセット音Brass 1をエディットしたものだと思います。同盤のブックレットには、平成2(1990)年2月の大宮ソニックシティでの録音風景が載っているのですが、そこにT1とYAMAHA SY77が映っています。

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 手許に集まって来たワークステーション機達、KORG T3 EX、TRINITY plus、TRITON STUDIO 61。私はかつてT1、TRINITY pro X、TRITON Le 61を所有していました。これら手放したモデルが、いずれも多少姿を変える形で手許に戻って来ている事に、感慨深いものがあります。

 私はシンセサイザーの“今ここで”や“これから”よりも、“かつて”の方に目線を投げかけてしまう…。プレミアのついたビンテージでもなく、登場当時はそれなりにもてはやされながら今は安く買う事が出来る、そして、本当に奏者やマニピュレータ達に使いこなされて来たのか甚だ疑問に感じられる、これら1990年代モデル達(若干の誤差はありますが…)こそ、今、私が手許に置きたいモデルです。


KORG T1/T2/T3 Music Workstation
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/T1/

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by manewyemong | 2011-09-21 18:46 | シンセワールド | Comments(0)