KORG Z1試奏記

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 implant4さんで、調整待ち状態のKORG Z1と、既に商品として販売されているYAMAHA MOTIF XS6を試奏させていただきました。ここではZ1について記します。

 コルグは同社のフィジカルモデリングシンセサイザーエンジンを、MOSS(モス:マルチオシレータシンセシスシステム)音源と呼んでいます。最初のMOSS音源は、平成7(1995)年秋に発売されたKORG Prophecy及び同時に発売されたワークステーション機TRINITY plus、TRINITY pro、 TRINITY pro Xに搭載されました。いずれのMOSS音源もモノフォニックでした。

 MOSS音源第2弾KORG Z1は、平成9(1997)年夏に登場しました。筐体やマン/マシンインターフェイス、操作子が刷新され、そしてなによりMOSS音源そのものが大幅に増強されました。13に増やされた楽器モデルや発声の12音ポリフォニック化等がそれです。

 オプションボードを装着する事で6声増やす事もできました。最初からこのボードを搭載したZ1 EX、ワークステーション機TRINITY V3、後にTRITONシリーズ用のオプションボードも用意されました。

 コルグのMOSS音源は、フィジカルモデリングシンセサイザーYAMAHA VL1やVP1(「東日流笛」の東日流笛参照)ほどには出音に存在感は無い(一時期ヤマハの総合カタログに言外にそう書いてる事がありました)のですが、VL1とVP1が各々、吹奏/擦弦系、打/撥弦系なのに対して、楽器モデルのバリエーションがはるかに多く、シンセサイザーとしてのフレキシビリティでは勝っていると思います。なにより価格に歴然とした差がありました。YAMAHA VP1のお値段¥2,700,000也で、発売時から10万円を切っていたProphecyや、たしか20万円台前半だったZ1が何台買えたでしょうか。

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 筐体の基本的なフォルムやボリュームスライダーは、TRINITYを踏襲しています。

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 リアパネル。

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 「KORG Z1」のロゴ。

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 外部記憶メディアPCカードのドライブ。

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 通常のフットスイッチやエクスプレッションペダルの端子に加え、YAMAHA DX7EX5といったかつてのヤマハのデジタルシンセのように、ダンパーやボリュームの専用端子があります。アウトプットはステレオ1系統です。

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 演奏操作子類。筐体左に集約されています。

 つまみは二つのフィルターやEG用。ホイール、Z1上の外見上の特徴でもある新しいコントローラーX-Yパッド、そしてX-Yパッドで行った効果を任意の位置で固定するホールドボタン、ポルタメントのオン/オフ、アサイナブルボタン1/2。これら四つのボタンは縦に並んでいます。

 ホイールは、FM音源シンセKORG 707やProphecyのものが踏襲されています。形状や二つのホイールの間隔も、だいたい同じ様だった気がします。

 Z1のX-Yパッドはやがて一人歩きを始め、KAOSS PADシリーズへと進化していきます。

 ジョイスティックのホールドやポルタメントのオン/オフは、TRINITY以降のコルグのワークステーション機の場合、二つのアサイナブルボタンのディスティネーションとして存在します。

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 鍵盤。

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 ヤマハ製FS鍵盤。何度も書きますが、真ん中に仕切りというか背骨があります。今回Z1と併せてFSX鍵盤のMOTIF XS6も試奏したのですが、同時に弾いてみると感触の違いを意識しました。YAMAHA MOTIF XS6試奏記で触れます。

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 TRINITYの場合、エディットボタンでエディットモードに入ってから、P1~P8のボタンを使ってオシレータやピッチ、フィルターといった選択をするのですが、Z1の場合、エディットボタンは無く、オシレータ、フィルター、アンプ、EG等へ、八つのボタンを押してエディットに入る事ができます。左横の演奏操作子群だけでなく、演奏中のリアルタイム操作に音色エディットそのものを加える事も可能です。私はワークステーション機でもやっていますけど…。

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 先の八つのボタンを選択した後、その中のページ移動を画面左側の二つのページボタンで行います。パラメーターの内容の1づつの増減は右の+/−、カーソルの上下はその下の二つのボタンで動かします。

 各パラメーターは横には最大五つまで並んでいて、画面下の五つのつまみはその事に対応しています。そのうち一つを押すとそのパラメーターの選択、回すと入力操作子になります。この五つのつまみは、エディットモードで無い時は演奏操作子として、任意のパラメーターをアサインしておく事もできます。

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 各パラメーターはテンキー入力もできます。その折、先の五つのつまみの一つを押す事による選択が活きます。

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 アルペジエータの操作子。これも後のTRITON等のワークステーション機のものより多く露出しているので、リアルタイムの操作性に優れていると思います。

 今回、音色のエディットをする時間は無かったのですが、プリセット音の吹奏、擦弦、撥弦、打…、どれもPCMとは違う存在感がありました。Roland JUPITER-80を試奏したおり、各楽器モデル毎のパラメーターは意外に少なかったと記憶しているのですが、KORG Z1は、各楽器モデル内の“部品”や、変化を加える組み合わせ(ソース/ディスティネーション)が実に豊富です。

 例えばEGはアンプ専用以外の四つは、フレキシブルなソースとして接続できます。また四つのLFOも同じく様々なソースとして使えます。一つ気になるのはZ1のLFO、フェイドタイムはあるのですがディレイタイムは無いという事です。

 また、現実の楽器音の発声数にしばられてなく、吹奏楽器等のモノフォニック楽器のポリフォニック演奏も可能です。音色に対する奏者やマニピュレータの思慮や発想を、深く幅広く受け止めてくれます。

 一つ面白いプリセット音を見つけました。

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 プログラムの最後の方に入っている“B126:Laughter(SW1)”です。欧米系の男が笑っているような声なのですが、Z1には人声型楽器モデルは無く、

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 オシレータタイプリードモデルの中の“Soft Sax 1”を使っています。サックスと人声の発声メカニズムは似ていると聞いた事があるのですが、さもありなんです。ちなみにアサイナブルボタン1を押すと笑わなくなり、ヒューマンボイス風の音になります。

 1990年代半ば、シンセサイザーメーカー各社から、複数の音源システムのシンセサイザーが出されていて、音源戦争の感がありました。実体を持ったシンセサイザーが、今では想像もつかないほど熱かった頃でした。その中でも、このKORG Z1は特異な存在だったと思います。KORG WAVEDRUMのような21世紀モデルの登場を希望します。

 KORG Z1が来ましたへ続きます。


KORG Z1
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/Z1/

KORG Prophecy
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/Prophecy/

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by manewyemong | 2011-11-18 18:24 | シンセワールド | Comments(0)