KORG DVP-1試奏記

 implant4さんで、デジタルボイスプロセッサKORG DVP-1を試奏させていただきました。といっても全く予備知識が無いので、プリセット音、それもボコーダー、インターナルウェイブ、ハーモナイザー、ピッチシフターの四つのモードのうち、ボコーダーとインターナルウェイブに関するもののみを鳴らしてみました。

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 KORG DVP-1は、昭和60(1985)年秋、ハイブリッドシンセサイザーKORG DW-8000/EX-8000、プログラマブルアナログポリフォニックシンセKORG POLY-800の後継機POLY-800IIとともに発売されました。

 これらはたしか、コルグが京王技研工業株式会社だった頃の、最後の製品です。これらの発売時期の総合カタログvol.12は、「京王技研工業株式会社」とあるものと、「株式会社コルグ」となっているものがあります。私はその両方を手にしました。

 昭和53(1978)年、コルグはVC-10という、鍵盤付きとしては世界初のボコーダーを出しました。同じ年に出たアナログモノフォニックシンセKORG MSシリーズと共通する筐体に、マイク(着脱式)が生えているという不思議な姿をしていました。今でも高価で取引されていると聞きます。

 マイクが生えているという姿は、その後、形を変えてアナログモデリングシンセサイザー、MS2000BR3micro KORGmicroKORG XLに継承されています。

 KORG DVP-1は、このVC-10に続く久方ぶりのボコーダーでした。DVP-1のボコーダー部は、デジタル故かVC-10と違って語彙の明瞭度が良く、奏者ないし唄い手?が何を言っているのかが判りやすいと思います。後のコルグのアナログモデリング機等のボコーダーは、この音色のキャラクターを継承していると思います。

 インターナルウェイブは、Roland VP-330のヒューマンボイス部にあたる音源です。八つの波形が用意されています。インターナルウェイブ部は後で触れますが、1980年代後半から1990年代にかけて、姫神の作品で多用されています。試奏していて思わず姫神の曲を弾いたりしました。

 ボコーダーやインターナルウェイブには、各々のパラメーター以外に、ピッチEGやアンプEG、MG(LFO)、ポルタメント等といったシンセサイザー的な設定ができます。また、コーラスエフェクトや、通常のポリフォニック以外に、ユニゾンモードもあります。

 このモデルとRoland VP-330を比較する向きがあるようですが、これら、全く音色のキャラクターが違っていて、そもそも比べる筋合いの関係ではないと思います。まあ、私がVP-330でやりたかった事は、コルグのワークステーション機のオシレータ波形Vocorder-VPで完全に、というか、それを遥かにしのぐ事ができていますけどね。

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 天板には各パラメーターが記されています。DVP-1よりも上に別のモジュール等がマウントされると見えなくなりますけど…。

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 フロントパネル。

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 入力関係の端子及び操作子、音量操作子。

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 DVP-1の四つのモードを選ぶボタン。プログラムの呼び出し、エディットモード、書き込みボタン類。

 書き込みボタンは、コルグのプログラマブルアナログ/ハイブリッドシンセと同様、赤色をしています。

 プログラムや各パラメーターの指定は、1~8の数字キーの組み合わせで行います。プログラム呼び出しの場合、1桁目を選んだ後、バンクホールドボタンを押すと、以後、2桁目の指定だけで選択できます。解除はもう一度バンクボタンを押します。

 implant4さんの在庫のこの個体、製造から年月が経つにもかかわらず、LEDの赤が未だ鮮やかでした。

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 各パラメーターを入力する為の操作子。時計でいう7時から5時まで動くつまみと、DEC/INCボタン。

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 KORG DVP-1には、ヘッドセットマイクが付属しています。

 DVP-1との相性が良い事と、このDVP-1/ヘッドセットマイク両個体のコンディションが大変良かったからか、試奏時にハウリングを起こす事が全くありませんでした。マイクの位置をさほど神経質に決めなくても、奏者/唄い手の声を拾ってくれます。

 ただ、私はimplant4さんの店舗奥で試奏したのですが、頭から外して傍らに置くと、店の出口付近の人の話し声をも拾ってしまいます。DVP-1のヘッドセットマイクの感度の良さと一体化した事だと思うのですが、使用時に注意が必要かもしれません。

 ヘッドセットマイクが付属する事は、後にアナログモデリングシンセKORG RADIASに継承されました。

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 「KORG DVP-1」。ロゴのデザインは、POLY-800やDWシリーズ等、同時期のコルグ製品と共通。

 KORG DVP-1はおそらくボコーダーとしては、初のMIDI対応機ではないでしょうか。後年、これにKORG WAVEATATION A/Dのボコーダー部が続きます。

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 端子類。

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 姫神の「北天幻想」「雪譜」「時を見つめて」「姫神風土記」といった、主に2台のMIDIシーケンサーYAMAHA QX1を中心にしたシステム(アルバム「北天幻想」制作の新機軸参照)によって制作された時期の作品で、多用されました。ボコーダー部よりもインターナルウェイブ部がよく使われました。改めていくつかの蔵書のグラビアを見ると、姫神の田瀬湖畔スタジオには2台がラックにマウントされていました。

 かつて「月のあかりはしみわたり」(アルバム「北天幻想」より)に、

曲の中盤、ステレオ音場の左端で始まるボイスプロセッサKORG DVP-1が、遅れてやや中央寄りで鳴りだすRoland VP-330のヒューマンボイス部に取って代わられていくというバッキングパートのフレーズが繰り返されます。私には明月を見え隠れさせている雲の移動の音表現のように感じられます。

と書きました。

 全民放「第32回ゆく年くる年」のBGM集「時を見つめて」の、「陽(ひ)」では、DVP-1のインターナルウェイブ部がメロディを担当しています。

 また、ジョー・ザビヌルさんも愛用し、昭和61(1986)年大阪・OBP円形ホールでの、サンプラーKORG DSS-1、リズムマシンDDD-1(スリーディーワン)、デジタルピアノSG-1の発表会にゲスト出演したおり、DVP-1のボコーダーを聴かせてくれました。その後、KORG DVP-1を終生使われたと聞きます。

 KORG DVP-1、平成23(2011)年12月1日夕刻の時点で、implant4さんに於いて1台の在庫がありました。価格等はimplant4さんのサイトの在庫リストをご覧ください。

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by manewyemong | 2011-12-02 14:52 | シンセワールド | Comments(0)