人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音に続き、「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形です。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形で触れなかった事も含めて書きます。

 今回、感想はこの「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形の方に書きました。

 追加された映像は、ストーリーの変更やエピソードの挿入に伴うものです。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」でカットされたが故に説明がつかなかった面を補っているのですが、取捨選択を進めた結果、「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の上映時間はむしろ短くなっています。ブラッシュアップは、完全に良い方向へ働いたと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」では、コスモパルサー隊のエース小林が、途中から旧ブラックタイガーチームの制服を着ている事に対する説明が無かったのですが、「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」では古代艦長から託される場面が描かれています。

 また、第1次移民船団の旗艦ブルーノアの唯一の生き残りで、古代からヤマト戦闘班長に起用された上条が、戦闘中、時に情緒的な言動をする事に対する理由として、彼がブルーノアで深手を負い未だ治療中である事と、全滅した第1次移民船団の中に家族がいた事を明かす場面がありました。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」/「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の区別の無い話なのですが、人物のデザインやアニメーションとしての動きについて記します。

 この作品の総作画監督、湖川友謙(こがわ・とものり)さんは、「さらば宇宙戦艦ヤマト」「THE IDEON(イデオン)<接触編><発動編>」の作画監督でもあります。

「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形_a0060052_13333914.jpg
 
 私は特に「IDEON」の絵柄が好きだったのですが、人物の顔を下から仰ぎ見た構図の絵に特徴があって、そのアングルの時「さらば宇宙戦艦ヤマト」の古代進と「IDEON」の主人公ユウキ・コスモが、酷似する事がありました。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」ではタッチがかなり変わっているものの、人物の顔を仰ぐアングルの時、相変わらず特徴が出ていました。穿った見方かもしれませんが、かつてそう評された事をご本人かアニメーターが憶えていて、あえてその事を強調したのかなとさえ思えました。

 私は中学高校の美術の時間に人の顔を描く時、よく湖川さんの特徴を真似したのですが、美術の先生から、なぜおまえは凹凸や陰影を強調したがるのかと聞かれました。ちなみに金田伊功(かなだ・よしのり)さんの真似をすると、中学の美術教師からはなぜおまえの描く物は歪んでいるのかと聞かれたのですが、高校では「カネダイコーみたいやな」と言われました。

 佐渡酒造先生とその愛猫ミーくん、アナライザーのデザインは、松本零士さんの残り香です。終盤に登場する同じネコ科のライオンは老若オスメス?の別なく写実的なのですが、ミーくんは松本漫画そのままです。

 今はもうセル画の類いを使う事は無いのでしょうけど、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」は、メカの部分はあらかたCGだったのですが、人物は一コマ一コマ描いていく文字通りのアニメーションだったと思います。人物による派手なアクションシーンが無いというのもあるとは思うのですが、アニメーションそのものの見せ場は無かったように思いました。

 「宇宙戦艦ヤマト2」のデスラー艦内で、古代進とデスラー総統が対峙する場面、デスラーが銃をかまえ、古代に向けるポーズや動きに関して、子供心に上手く描く人がいるものだなと感動した記憶があります。

 また、「ヤマトよ永遠に」の、火災が発生している有人機基地で、森雪が古代に指令書を読み上げる場面、書類を開いてからまず一瞬目を書面に落として読み上げるのですが、森雪の顔の動きや二人を照らす炎の照り返しが丁寧に描き込まれていました。

 どちらの場面も決して派手な動きがあるわけではないのですが、登場人物の、否、それを描いたアニメーターの演技が素晴らしかった。

 このCG全盛の時代にはもう、一コマ一コマ描いて動きを表現する等という事に興味を持つ人が、少なくなってきているのかもしれません。かつて私がアニメーションを観る事に感じた醍醐味の一つが、喪失されつつあるのかなと思いました。

 メカに関して、ラストシーンの移民船団とともに行動する艦艇の中に、「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」のみに登場するものがいくつか視認できました。第1作目の旧地球艦隊に似たもの、アンドロメダ(「宇宙戦艦ヤマト2」では10隻以上建造されている)やアリゾナ型の生き残りとおぼしき艦影、そしてアメリカでいえばエアフォース1のような政府機能を持ったブルーノア型の巨大な宇宙船や、ヤマトの同型艦ムサシも登場します。

 パンフレットには、ストーリーボードというのでしょうか、本格的な制作開始以前に描かれたと思われるイラストがいくつか掲載されているのですが、その中にはヤマトとその同型艦2隻が、横1列に並航しているものがありました。1隻は艦橋が大きく、波動砲が閉じられた艦で、劇中ムサシとして登場しました。もう1隻はほぼヤマトと同じなのですが、後甲板に第3主砲、第2副砲の代わりに、艦体から大きくせり出す構造物を背負った姿です。「宇宙戦艦ヤマト2」に登場した、主力戦艦の後部を飛行甲板にしたのと同じ戦闘空母かもしれません。ちなみに大東亜戦争中、伊勢、日向という後甲板を飛行甲板にした航空戦艦が実在しました。

 ラストシーン、地球を離れる事を肯んじない人々をのぞいて、最後の移民船団や残存する地球艦隊を見送った後、宇宙戦艦ヤマトはある別の任務を遂行する為に、独行を開始します。次作があるとしたら、これが伏線だと思います。

 私はかつて十三湊の勃興と衰亡で、

彼等が十三湖を後にしてどこへ行ったか定かではありません。彼等のその後の運命と、縄文中期に縄文時代で最も利便性に富んだ施設群を放棄した三内丸山の縄文人、そして小説「日本沈没」の中の、国土を海中に失い、世界へ散って行った日本人…。私にはこの3者の運命がだぶります。彼等の“The day after”が気になって仕方がありません。

と書きました。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」は、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」での牽強付会な感のある成り行きによるハッピーエンドではなく、あまりにも大きなものを失いながら、しかし、地球人類が新たな未来を築こうとする姿に、むしろ希望を感じさせられるラストでした。

 もちろん地球に残った人々(修行僧やアルプスの農夫等)、移民船が去った後の、つかの間ののびのびとした大自然を描いた場面もありました。

 アフリカの平原で、本来、互いにシビアな関係にあるはずの動物たちが、同じ方向を向いて一斉に歓喜の声を上げる場面、人類に対する痛烈な皮肉が込められていると思います。

 未曾有の災厄と自らの過ちによって、今、大きく傷ついた国土に住む我々は、それでもスクリーン上の23世紀の人類よりはるかに少ないハンディキャップで、再チャレンジの機会を与えられていると思います。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形で、第1作が放映された昭和49(1974)年頃に流行ったゲイラカイトが、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」公開中の平成22(2010)年正月、淀川河川敷で揚げられているのを見て、時々誰かが思い出したようにアメリカから来たこの凧を揚げるのと同様、「宇宙戦艦ヤマト」はこれからも作られていくのだろう、と記しました。

 私としては、一人ではなく、言葉を交わす事の無い大勢の人々と一緒にスクリーンを見つめる形で、これからの「宇宙戦艦ヤマト」を観る事ができたらと思います。

by manewyemong | 2012-02-03 13:41 | アニメーション映画 | Comments(0)