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Roland V-Synth 2.0試奏記

 implant4さんで、Roland V-Synth 2.0を試奏させていただきました。まだ商品として陳列されているものではなく、調整待ちの個体です。

 V-Synthシリーズ独特のバリフレーズや、TVFを除くCOSMは試さなかったのですが、アナログモデリング音源部を中心に、Roland V-Synth 2.0試奏記を書きたいと思います。全体をくまなく網羅するものではなく、私が関心を持った部分をかいつまんで記します。

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 V-Synthは、たしか平成15(2003)年の春頃、発売されました。

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 ローランドのバリフレーズは、平成12(2000)年の年明けに登場したVP-9000に始めて搭載されました。音声データのピッチや時間、フォルマントを各々独立して変える事ができる、少ないサンプルポイントでも原音の趣きを広い音程で再現できる、といった特徴があります。

 VP-9000が出た時、18時台の首都圏ローカルのニュースで採り上げられた事があります。ローランドはその番組のスポンサーでした。記者会見場のような所でローランドさんが説明をされているのですが、どうも一般の報道の人にはよく理解されていなかったように思いました。

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 V-Synthはそのバリフレーズが、始めてキーボードシンセサイザーに搭載されたモデルです。

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 V-Synthシリーズは、タッチビューの左側に演奏操作子、右側に音色設定操作子が配されています。

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 V-Synthの演奏性や外見上の特徴を為す操作子タイムトリップパッド。バリフレーズ使用時、威力を発揮します。

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 演奏操作子群。V-SynthシリーズのDビームコントローラーは、他のモデルとは形状が違います。使い方は同じです。

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 ベンダーレバー。そばに後継機V-Synth GTやコルグのシンセのような二つのアサイナブルボタンはありません。

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 鍵盤。裏におもりが装着されていて、おそらくFantom X6/7等と同じものだと思います。それと今回、またまたアフタータッチを試すのを忘れてしまいました。

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 タッチビュー。パラメーターの表示、そしてこれ自身が操作子にもなります。

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 音色設定操作子群全景。

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 バリューダイヤル、DEC/INCボタン、カーソルボタン。

 バリューダイヤルは筐体から突き出ていて、まわりにギザギザがあり、指を穴に入れて大きく速く回す事にも指でつまむ形でバリューを1づつ増減する事にも使い易い。

 タッチビューとこれらの操作子だけで音色設定が可能です。デジタルアクセスコントロールが好きな身には、手指をあちらこちらに移動させなければならないアナログシンセ型の操作子、つまり、

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 これらの操作子群を使う事の方が面倒くさい。

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 オシレータはアナログモデリング、バリフレーズを含むPCM、そして外部音声入力からなります。

 画像はアナログモデリングで、三角波が指定された状態です。オシレータ波形の数は、KORG OASYSやKRONOSのアナログモデリング音源AL-1よりも多く、ランプ(RAMP:傾斜)波やRoland JP-8000Roland SH-201GAIA SH-01にもあるSUPER-SAWもあります。波形の選択は直接タッチビュー上の項目に触れて指定するのではなく、右の大きな上下矢印で押し送る形でです。

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 オシレータのピッチに関するページ。

 ENVは、アンプにキーボードフォローが無い事以外は、ピッチ、パルスウィズ、COSM、アンプ等で共通仕様です。アナログシンセと同じ簡便なADSRタイプ、つまりスタートレベルとリリースレベルは0に、アタックレベルは最大値に固定されています。各タイムをベロシティでコントロールできるのですが、カーブはENV全体にしか設定できません。OASYSやM3M50、KRONOSの場合、EGの各タイム毎にカーブを設定できます。

 それと、これは現行機に至るローランドのデジタルシンセ全般にいえる事なのですが、キーボードフォローはアナログシンセのVCFにあるものと同様、変化の傾斜角を決める為だけのものです。しかしながらコルグのキーボードトラックの場合、4個所の傾斜を設定できるので、変化の山や谷を作る事までできます。

 Roland V-Synthのバリフレーズの、音色の第1印象を決める部分の可能性の広大さに圧倒される一方、私がこだわる作り込みの部分で意外に深度が浅いなと感じられたのが、このENVとキーボードフォローの部分でした。こういう部分にこそ、奏者やマニピュレータの個性を織り込める素地があると思うのですけどね。この可能性の広さと意外に深度が浅いというギャップは、昨年の花形モデルRoland JUPITER-80にも感じました。

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 パルスウィズに関するページ。

 Roland JP-8000/8080やKORG MS2000シリーズRADIASR3等でいうコントロール1、2に近いページです。V-SynthシリーズにはPWM専用のENVがあり、LFO変調と併せて設定する事ができます。

 Roland SH-101JUNO-6KORG Mono/Polyしか持っていなかった頃、よくENV変調のPWMで撥弦系の音を作りました。

 Roland JP-8000試奏記で、パルスウィズの変化の仕方がSH-101やJUPITER-6といったローランドアナログシンセのそれを継承しているとしたのですが、アナログモデリングシンセサイザーRoland SH-201の場合、V-Synthシリーズのアナログモデリング部を引き継いでいるように思います。

 例えば、喜多郎miniKORG 700Sリードをシミュレーションする場合、V-Synthのアナログモデリング部のパルスウィズを-21に設定するのですが、それはSH-201の場合も同じです。SH-201はV-Synthシリーズのアナログモデリング部のパラメーターを取捨選択する形で、設計されたのかもしれません。

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 マルチステップモジュレータ。たしかV-Synthのシステム2.0から付きました。

 システムシンセサイザーRoland SYSTEM-100Mのアナログシーケンサー182 SEQUENCER、KORG SQ-10、あるいはアナログモデリングシンセKORG MS2000シリーズやRADIAS、R3のモッドシーケンスのような、径時変化や周期変化のソースとして使う機能です。4トラックで各々16ステップあります。

 マルチステップモジュレータ再生時、現在どこのステップが実行中かはステップインジケーターが反転する形、そして各ステップの内容は、バリュー、つまみ型アイコン、ステップバーに棒グラフという形で表示されるのですが、このステップバーの部分を指で描く事もできます。発売前のV-Synth GTを試奏させていただいたおり、ローランドさんから教えていただいて驚きました。

 径時変化を作り込みたい私にとって、V-SynthシリーズのENVがADSRというのは甚だ物足りないのですが、このマルチステップモジュレータはそれを補ってくれる機能です。

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 リアパネル側。

 フラグシップクラスはマルチティンバーが当たり前の時代に、ただただ単なるシンセ、しかし音色作りの広大な可能性を秘めたシンセが突如現れた、といった感のあるRoland V-Synth。

 私のような思慮をもって作り込むタイプよりも、能動的にサンプリングや音声入力を繰り返して音色との偶発的な出会いを持ちたい向きの方が、このシンセの可能性を引き出せるのかもしれません。私にとって多くを任せる事はできないものの、しかし、手許に置いてじっくり使ってみたいシンセサイザーです。


Roland V-Synth Version 2
http://www.roland.co.jp/products/v-synth_version_2/

by manewyemong | 2012-02-10 19:12 | シンセワールド | Comments(0)